身近な法律問題
意地訴訟-行政争訟
「意地訴訟」は「医事訴訟」の変換ミスではありません。
当事者が、意地になるため、訴訟が泥沼化して、お互いが損になる場合があります。
行政事件とは、まず、取消訴訟(行政庁の処分等の取消しを求める訴訟)・無効確認訴訟などの抗告訴訟があります。
抗告訴訟の類型でも、伝統的な「抗告訴訟」ではなく、処分の名あて人以外の第三者が提起する住民訴訟(例えば、原子炉設置許可処分についてその取消しを求める訴訟など)が最近のトレンドのようです。
また、このところ流行の訴訟としては、民衆訴訟の一つである住民訴訟があります。
なお、私が、大阪地方裁判所の裁判官をしていて、第7民事部(租税・行政部)在籍中は(昭和56年から昭和59年。ただ、2年間は留学中)、通常の取消訴訟・無効確認訴訟の抗告訴訟が圧倒的多数でした。
通常、「意地訴訟」と呼べるのは、「反税団体」ならぬ「闘税団体」ともいわれた、「民商」がらみの「つまらない」事件でした。すべて、当初の予測どおり、税務署長の勝訴判決で終わりでした。
あと、外国人の国外退去強制処分が多かったのですが、これも、判決となれば、ごく一部例外(途上国で反政府活動をしたため、帰国すると処罰されてしまう場合など)を除き、法務大臣の勝訴です。いかに、法務大臣の「特在許可」がでるまで引き延ばすかという、不毛の訴訟でした。
行政事件訴訟においては、法律上の争点が多いことが多いです。例えば、住民訴訟、公用負担等関係訴訟などでは、原告があるべき行政判断を求めて、政策そのものの違法性を主張することが多いが、違法か否か(行政庁に裁量権があると場合には、行政判断に裁量権の逸脱又は濫用があるか否か)は、様々な事実を総合的に考慮して判断される評価的概念であることから、原告としては、主張を絞るというよりは多角的な観点から網羅的な主張立証をすることになり、また、被告である行政庁も、これに対応して、主張立証を展開せざるを得ないことになり、必然的に争点が多岐に及ぶことになります。
また、行政庁が保有する行政処分等に関する資料について、その提出の要否・可否をめぐって当事者の意見が対立した場合、資料の提出をめぐるやりとりにはある程度時間を要し、全体としての審理期間を長くする方向に働くことは否定できません。
しかし、こうしたやりとりの過程で、このような資料は、行政庁側から任意に提出されることも多く、また、必要な事案においては、裁判所が、釈明処分の特則の規定(行政事件訴訟法23条の2)を適用して行政庁に当該資料の提出を求め、あるいは、釈明権の行使(行政事件訴訟法7条、民事訴訟法149条1項)として被告に当該資料の提出を促すことにより、行政庁側から提出されることもあります。
ということで、行政訴訟は、一般に難しいですし、世間の耳目を集めていますから、ひとたび判決がなされれば、マスコミ等による大々的な報道があり、「裁判所」の「和解勧告」なども、スコミ等による大々的な報道がなされます。
一般に、この手の訴訟は、政治的少数者・敗者が、政治では何ともならなくなったので、裁判所に助けを求めるというタイプの訴訟です。
通常の個人や会社が、紛争の解決、権利の実現を求めるという「本来の裁判」とは明らかに異なります。
やはり、政治的意図を持った「意地訴訟」でしょう。