遺言・相続問題 よくあるご質問
遺言・相続問題についてのFAQ
自筆遺言のメリットは、自分だけで作成できるため費用がかからない、誰の関与も必要でないので、隠しておけば秘密を保つことができるくらいでしょうか。
自筆遺言のデメリットは、自筆遺言は形式の定めが厳しく、法律の規定を順守しない場合には無効となる場合があり、保管に不安があり、紛失してしまう恐れや発見されない恐れ、さらには捨てられてしまう恐れがある、誰が遺言の内容を変更したかわからないように改ざんされてしまう恐れがある、その遺言書を家庭裁判所に持っていって検認手続きを受けなければならないということです。
もっとも、法務局での遺言書保管制度が新設され、遺言の形式ルールのチェックを受けられ、法務局の保管によって偽造や書き換えを防ぐことができ、死亡時に遺言の存在が通知され、検認の必要もありません。
自筆証書遺言にこだわる方は、法務局での遺言書保管制度を是非ご利用下さい。
公正証書遺言のメリットは、公証人(裁判官と検察官のOBです)の関与があるため、形式面でのミスによる遺言の無効はまずありえないこと、保管は公証人役場に保管してもらえ、銀行の貸金庫より安心なこと(電子データで分散してバックアップされているそうです)、改ざんの恐れはないこと、遺言時から100年保管され、未成年者でも15歳から遺言ができますから、遺言をした人が115歳まで預かってもらえること、裁判所の検認手続きがいらないことです。
公正証書遺言のデメリットは、公証人に支払う費用がかかること(1億円で4万3000円、3億円で9万5000円。また、弁護士に依頼すれば弁護士費用がかかります。簡易なものなら最低10万円+消費税)、公証人のほか、証人2名の立ち合いが必要になるため、遺言の内容について秘密にはならないこと(なお、弁護士に依頼すれば、弁護士+弁護士、あるいは、弁護士+事務員だけで、家族に知られることはありません)です。結局、費用の問題です。なお、公証人は出張して公正証書遺言をつくってくれますから、入院中でも問題ありません。
ちゃんと法律的に有効な遺言書を素人が記載できるかの問題があります。
自筆遺言証書は、本人が本当に記載したかどうかで争われることがあります。筆跡鑑定では簡単に決着はつきません。公正証書遺言の場合は、公証人が本人かどうか確認しますし、記念写真をとっておけばいいのです。気の利いた弁護士は、替玉といわれないように「記念写真」をとっておきます。また、意思能力についても、自筆遺言の場合は、認知症などで意思能力がなかったなどと争われることがありますが、公証人(裁判官と検察官のOBです)が意思能力の危うい遺言者の遺言作成を拒否しますから、あまり、遺言者の意思能力が争われることはありません。
改ざんの心配もあります。
遺言書を見付けてくれるかどうかの問題もあります。
また、自筆証書の場合は「検認手続き」が必要です。遺言書の保管者、あるいは、発見した相続人は、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して「検認」を請求しなければなりません。封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人等の立会いの上開封しなければなりません。
検認とは、法廷相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。
法定相続人を探すのにも手数がかかることがあります。被相続人が生まれたときまでの戸籍を追跡することはもちろん、子がいなければ、きょうだい、甥姪まで戸籍を追跡しなければなりません。弁護士がしても、郵送で3、4ヶ月かかることもあります。
ただ、法務局による遺言書の保管によって、上記の心配をなくすことができます。
どうしても公正証書が嫌ならば、最低、法務局による遺言書の保管を強くお勧めします。
あります。
遺言書に、財産すべてが記載されていて、かつ、どの法定相続人の遺留分も侵害していなければ、遺言書どおり、遺産が相続されて終わりです。
普通の人は、自分の財産のすべてを把握しているわけではなく、どうしても、遺言書からもれる遺産が出てきます。また、遺言書を記載してから増えた財産もあるでしょう。
遺産に漏れのないようにする方法としては、通常、各相続人に相続させる財産を列挙し「本件遺言書に記載のない財産は妻にすべて相続させる」「本件遺言書に記載のない財産は長男にすべて相続させる」と記載する方法、あるいは「財産は、すべて妻2分の1、長男4分の1、長女4分の1の割合で相続させる」とする方法があります。
公正証書なら、遺言者が特にこだわらない限り、上記のいずれかの方法により、財産すべてが記載されているように遺言書を作成してくれます。
自筆遺言の場合は、遺言書以外の財産が存在し、そのための遺産分割をする必要が出てきます。額が小さいなど、問題なければいいのですが、新しい土地を買ったものの遺言書はそのままにしていたというときなどは大問題になります。
ですから、公正証書にすることを強くお勧めします。
遺言書より多くほしいといううるさい相続人がいて、他の相続人が、渋々承諾することもあるでしょう。
また、遺言書により相続することになっているが、お母さんに相続させてという相続人もいるでしょう。
また、相続人間で、こちらの財産より、こちらの財産がほしいという意見が一致することもあるでしょう。
相続人官で合意ができれば、必ずしも、遺言に従う必要はありません。
自分の財産が把握できていれば、遺言書を書いて、遺言書に、財産すべてが記載されていて、かつ、どの法定相続人の遺留分も侵害していなければ、遺言書どおり、遺産が相続されて終わりです。
遺言書からもれる遺産を考えて、遺留分ぎりぎりの財産を取得する相続人に、少し多い目に相続させる、あるいは、遺留分ぎりぎりの財産を取得する相続人が1人ならば、その余の財産を当該相続人に相続させるという遺言を書けばいいでしょう。
なお、土地は基本的に路線価によって計算され、整形地か不整形地か、接道の幅の違いなどにより補正され、建物は固定資産税評価額です。
また、土地にせよ株式にせよ、時価が変動するものは、定期的に見直す方が良いでしょう。遺言の書換えは、何回しても自由です。
「消極財産」と「積極財産」と、どちらが多いかわからない場合は、自分が遺産を得られなくても普通の生活ができるかどうか考えてください。
住宅ローンが残っているかも知れないが自宅がある、正社員としての給料を得て普通の生活ができるなら、リスクをとる必要はありません。さっさと相続放棄してしまいましょう。他の相続人が「もうけ」ということになるかも知れませんが、自分で働いたお金で自分が暮らすというのが日本人の美徳かと思います。
住宅は賃借、非正規社員の場合なら、あるいは、住宅は賃借、年金暮らしという場合なら、調査してプラスかマイナスかわからなければ、単純承認をするというのも一つの手段です。 い人で非正規なら、失うものは大きくありませんから、借金を背負うことになっても、自己破産で0にすることは可能ですし、住宅は賃借、年金暮らしなら、年金は差し押さえ禁止財産ですから、破産をするまでもなく、借金を墓場にもっていくというのも選択肢です。
家族が一致団結できるのなら、失うものが多い法定相続人は相続放棄をし、失うものがない相続人のみが単純承認することにして、幸いにして財産が残れば、単純承認をした相続人が多めに山分けし、不幸にして負債が残れば、自己破産で借金を0にする、手続き費用と当座の生活費は、相続放棄したものが援助するというのが賢いですね。
相続放棄や限定承認手続をしないまま、自分が相続人となったことを知ってから3か月を経過すると相続を承認したことになるのが原則です。
しかし、3か月以内に限定承認又は相続放棄をしなかったのが、被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためで、かつ、被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態その他諸般の状況からみて当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があって、相続人において右のように信じて相当な理由があると認められるときには、熟慮期間は相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうるべき時から起算すべきものと解するのが相当であると解されています。
なお、その場合の相続放棄は、事情を詳しく記載する必要がありますから、弁護士に相談されるのが賢明です。
被相続人が死亡退職によって支給される場合の死亡退職金は、遺族の生活保障を目的としていると考えられているため、受取人固有の権利として考えることが一般的です。
公務員は法令で、一般企業の場合は、就業規則に定められているのが普通です。就業規則に退職金規定がありながら、受取人の定めがない場合は、相続財産となりますが、通常、その程度の会社では、死亡退職金は最初から出ないことが多いでしょう。
よって、死亡退職金は、原則として、遺産分割の対象とはなりませんので遺産分割協議書に記載することも不要です。そして、死亡退職金は、法令、あるいは就業規則で定められた受取人が受取ることとなります。
生命保険の受取人が妻や子などの被相続人以外になっていれば、相続財産ではありませんし、死亡退職金を妻が受取ることとなっていれば相続財産ではありません。ですから、生命保険や死亡退職金は受取れます。
生命保険や死亡退職金を受取ったのだから、その中から借金を返せという債権者がいるときは、借金を返してあげてもいいと思われる方は返済していただいても結構です。返済するのは嫌という方は、弁護士に交渉の委任をしてください。
債権者は手が出せなくなります。弁護士がついても電話や来訪があれば、面接禁止の仮処分をとることができます。それでも、しつこく返済を迫る場合は刑事事件です。
業者ではなく、一般の債権者に、こだわりのある人が多いです。
相続人になります。
相続税の節税を目的にした養子縁組が有効かどうかについては、有効であるという最高裁判所の判例があります。
弁護士がよくみかけるのは、ある法定相続人の遺留分を減らすために、子の数を増やすというのがあります。
ある親がいて、相続人として長男と二男がいる場合、二男に一切相続させたくないと思って、長男にすべて相続させると遺言をしても、二男の法定相続分は2分の1、その半分の4分の1は、二男に遺留分がありますから、遺産の4分の1は二男にいってしまいます。
長男に子が2人いるとして、長男の子2人を養子にすれば、子は4人に増えます。
二男の法定相続分は4分の1となり、その半分の8分の1しか二男に遺留分はなくなります。
ここまでいくと「親がそこまでするか」ということになりますが、たいていは、親ではなくて、長男が親を操っていることもあります。
認知しなくていいということでしたら、相続人にはなりません。
検察官を相手に(通常は、被相続人死亡時の住所を管轄する検察庁の検事正)認知の訴えを提起することができ、勝訴すれば相続人となります。
死亡の日から3年内にしなければなりません。
なお、調停前置は不要で、ただちに訴訟を提起することになります。
利害関係人(被相続人の妻や子など)は、検察官に補助参加して、子か子でないかの判決をもらいます。
なお、DNA検査によれば親子ははっきりしますが、利害関係人(被相続人の妻や子など)がDNAの検体を提出するかどうかが問題となります。
通常は、検体を任意に提出してもらうことになります。
相続人としては、相続人を減らせば、自分の相続分が増えますから、他の相続人が被相続人の子ではないという訴訟を、検察官を被告として提起することがあります。DNA鑑定をしてみれば、確かに親子関係はないということになる場合もありますが、生物学的な血縁関係がなくても、子として育ってきた場合には、他の相続人が提起した、親子関係不存在の請求は棄却されるというのが確立した判例です。
なお、被相続人の子とはなっているが、本当はきょうだいである場合(結婚前の女性が子を産んだとき、産んだ女性の母の子として戸籍に入れることが時々あります)、そして、実質的に、被相続人の子として育っていない場合は、他の相続人が提起した、親子関係不存在の請求は認容されます。
違いは、本当に、被相続人の子として育てられたかどうかということです。
連絡を全く取っていない相続人がいるが、連絡を取っていないだけという場合は行方不明ということはできません。
連絡がつかない法定相続人があれば、弁護士に依頼して住所を探してみてください。日本の戸籍や住民票の制度はよくできています。まず、生きていれば、住民票がどこにあるかまでわかります。死んでいれば、子がいれば代襲相続で相続人になりますし、子がいなければ相続人ではありません。
生きているはずなのに、住所に住んでおらず行方不明の場合は、家庭裁判所に財産管理人の選任を家庭裁判所に申立て、遺産分割協議をすることになります。通常、財産管理人は弁護士がなります。
外国に住所を移転している場合などやっかいになります。ドイツなど先進国なら問題はないのですが(といっても、日本ほど完璧な制度はとっていません)、発展途上国なら大変なことになります。見つからなければ、財産管理人の選任となります。
現金、預金、株券、国債、高級外車などです。
なお、生命保険金を原則として特別受益に該当しないと扱われています。もっとも、相続人間の不公平が到底是認できないほどに著しいと評価すべき特段の事情がある場合には、特別受益に準じて扱うとされています(最高裁判所・平成16年10月29日判決)。
「被相続人を保険契約者及び被保険者とし,共同相続人の1人又は一部の者を保険金受取人とする養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権は,民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないが,保険金の額,この額の遺産の総額に対する比率,保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係,各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して,保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には,同条の類推適用により,特別受益に準じて持戻しの対象となる。
例えば、相続人がAとBの2人の子で、遺産総額が約1億円のところ、Aだけが総額約1億円の生命保険金を受け取ったケースなどが該当します。
普通の生命保険(働き盛りの夫が、妻子のため生命保険をかけるときなど)はあまり問題になりませんが、健康かどうかを問わない、一時払い養老保険などは、実質的に考えて贈与でしょう。
特別受益の持戻しは被相続人の意思を推測し、相続人間の公平をはかるものといえます。
被相続人が自らの意思で持戻しを免除する場合には、遺留分の規定に反しない限り、持戻しはなされないことになります。
贈与に関する持戻免除の意思表示は、特別の方式を必要とせず、贈与と同時になされる場合、生前の意思表示、遺言によることもあります。
ただ、裁判所は、書面(遺言書、贈与契約書の中の文言など)がない場合、持ち戻しの免除を認めないですね。
被相続人は死亡しているわけですから、何とでもいえますから。
具体的には弁護士に相談してください。
なお、相続法改正により、20年以上の夫婦の場合、生前贈与、遺言を問わず、居住用不動産については、持ち戻しの免除の意思が推定されます。
寄与分が主張できるのは相続人に限られるので、子の妻(嫁)は原則として財産を取得できませんでした。
相続財産の維持または増加についても公平の原理を基本とする不当利得の原則の適用があってしかるべきであるから、相続財産の維持または増加に寄与した程度が、配偶者について通常の協力扶助の程度を超え、直系卑属については通常の相互扶助の程度を超えるものであり、かつ、その評価額が当該事業の費用として相応である限り、遺産の分割に際し、法定相続分とは別に、かかる寄与分なる観念を認めても、法定相続分を定める民法の精神に反しないという説や下級審判例はありました。
相続法の改正で、長男の嫁(一親等の姻族)、孫(二親等の血族)など、法定相続人ではない親族(六親等内の血族あるいは三親等以内の姻族)にも、被相続人の看護に尽くしたものに対し、特別寄与料が認められることになりました。
しかし、相続人の寄与分と同じ基準とすると、要件は厳しく、金額は安いということになります。
息子の嫁などに遺言書で財産を遺贈することを強くお勧めします。
公平は公平です。
ただ、調停委員にもよりますが、能力には「?」のつく調停委員もいます。
また、調停をまとめることに熱心で、「誤った考えをもっている方」ではなく「うるさくない方を説得にかかる」という傾向がある調停委員もいます。調停委員の言うことだから「適正」であると考えるのは早計でしょう。調停委員は、褒章を受けることもあるのですが、調停を成立させた実績により褒章を受けたり受けなかったり、また、褒章のランクに違いがあることもあります。
また、片方だけに弁護士がついている場合、弁護士のついていない当事者に妥協を求めてくる場合もあります。
基本的には、公正なのですが、そうでは無い場合もあります。
疑問に思ったら、調停委員が公平な意見を出しているかどうかについて、弁護士に相談することをお勧めします。ただし、ありのままに弁護士に相談しなければならず、自分に不利なことを隠したのでは、的確なアドバイスは得られません。
調停には当事者本人の出頭が必要ですが、本人のみで調停を進めることも可能ですし、現実には、本人のみの調停が多いでしょう。
私は、以下の場合に、弁護士に委任し、弁護士と一緒に調停にのぞむのがよいとアドバイスしています。
1 相手方に弁護士がついている場合。
2 調停が不調となった場合、審判手続きに移行させようと考えている場合、あるいは、審判手続きに移行することが確実と考えられる場合。
3 遺産の額が大きく、弁護士費用を払うだけの価値があると考えるとき。
4 遺産の範囲に争いがある場合、同居している相続人が、遺産を隠したり、遺産である預金を勝手に引下ろしていると考えられる場合
5 事案と調停委員の意見について、ありのままを弁護士に相談し、弁護士が、調停委員の意見には疑問があると判断したとき。
弁護士に委任すれば、取得できる金額について、その金額を3分の1したものを経済的利益として、300万円以下の分は8%、300万円から3000万円以下の分は5%、3000万円から3億円以下の分は3%に消費税を加えたものが着手金となります。
成功報酬は、現実に取得した遺産について、その金額を3分の1したものを経済的利益として、300万円以下の分は16%、300万円から3000万円以下の分は10%、3000万円から3億円以下の分は6%に消費税を加えたものが着手金となります。
なお、相手方の生前贈与、こちらの寄与分などにより、自分の取分が多くなった分、寄与分で自分の取分が多くなった分は3分の1を乗じません。
また、審判にならず、調停で終わった場合は、3分の2ですむという弁護士もいます。多かれ少なかれ、調停で終わるか、審判まで行くかによって金額が異なることが多いです。
相続事件の場合、弁護士によって違いがあまりありません。ただ、委任しようと思う弁護士に直接おうかがい下さい。
案外3分の1を乗じることを忘れているか、知らないふりをしている弁護士がいないわけではありません。ご注意ください。
大きく分けて3つあります。
1 遺言の有効無効が争われている場合
まず、地方裁判所、控訴して高等裁判所などの判決により、遺言の有効無効を確定します。
遺言の有効無効を確定してから、調停・審判の申立をします。
2 遺産かどうかについて争いがある場合
預貯金について、相続人の名義になっているが、実質的に被相続人のものだとか、逆に、被相続人の名義になっているが、実質的に相続人のものだとかの争いがあることがあります。
土地や家屋など不動産も同様です。
小さな金額なら、誰かが折れて、調停で終了することもありますが、遺産の大きな部分に争いがある場合には、まず、地方裁判所、控訴して高等裁判所などの判決により、遺言の有効無効を確定します。
被相続人か相続人かの争いに決着をつけてから、調停・審判の申立をします。
3 被相続人の預貯金を、相続人の1人が勝手に引下ろしているのではないかという争いがあるときは、法律的にみますと、相続人が被相続人の財産を不法に領得した、あるいは、不当に利得したということで被相続人が損害賠償権を有していたが、それが相続分に応じて当然分割されたという法律構成になります。
不法行為による損害賠償請求、あるいは、不当利得返還請求ですから、家庭裁判所ではなく、地方裁判所、控訴して高等裁判所などの判決により決着をつけていました。
相続法の改正により、被相続人の遺産を勝手に処分した相続人あるいは第三者がいる場合、当該処分をした相続人を除き、共同相続人全員が、当該処分された財産を遺産分割の対象に含めることに同意している場合は、遺産の分割時に遺産として存在するものとみなして、遺産分割ができるようになりました。
自筆遺言なら、遺言書が他人の筆跡であり偽造であるという主張がなされることがあります。
公正証書遺言なら、公証人役場に出頭した人物が、替え玉であったという主張がなされることがあります。印鑑証明書があれば公正証書遺言は作成してもらえ、運転免許証とか顔写真のついた証明書は不要です。弁護士が遺言執行者や証人になる場合には「記念写真」をとっておくのはそのためです。
自筆遺言と公正証書遺言と共通なのは、老人性認知症などにより遺言するだけの意思能力があったかなかったかという争いです。公正証書の場合でも争われることがあります。
医師の作成したカルテ等が決め手となることが多いです。
なお、「遺産はすべて○○に相続させる」という簡単な内容のものほど、意思能力が低下していても有効で、「遺産の○○は○○に相続させる。遺産の△△は△△に相続させる。遺産の□□は□□に相続させる」と内容が複雑になると無効という判断に傾きがちです。
「まだら認知症」も問題となります。アルツハイマー型認知症などでは、認知機能全般に徐々に出来ない事が多くなっていきますが、それに比べ脳血管性認知症では、物忘れが目立っていても、判断力や理解力などは低下していなかったり、同じ事をしても出来る時と出来ない時が繰返し起きたりします。判断能力があったときに書かれた遺言書か、なかったときの遺言書かが問題となります。
あります。
貸金や損害賠償等の地方裁判所の一般事件では、一方だけが控訴した場合、控訴した方に不利に判決が変更されることはありません。「不利益変更禁止の原則」といわれます。ただ、相手が附帯控訴をすれば、不利益になることはあります。
これに対し、家事審判に対する即時抗告は「不利益変更禁止の原則」の適用がありません。
遺産分割で、たとえ計算上多額の遺産をもらったところで、使い物にならない不動産を遺産とされたのではかないません。何が利益で、何が不利益かは、相続事件ではわかりません。ということで、いっそのこと、家事事件には「不利益変更禁止の原則」の適用がないことにしようということです。
なお、婚姻費用など、有利不利がはっきりしている事件でも、家事事件というだけで、「不利益変更禁止の原則」の適用がない扱いになっています。
弁護士によって異なります。
ただ、概ね、取得できる金額を経済的利益として、300万円以下の分は8%、300万円から3000万円以下の分は5%、3000万円から3億円以下の分は3%に消費税を加えたものが着手金となります。
成功報酬は、現実に取得した遺産について、その金額を経済的利益として、300万円以下の分は16%、300万円から3000万円以下の分は10%、3000万円から3億円以下の分は6%に消費税を加えたものが着手金となります。
また、訴訟にならず、調停で終わった場合は、3分の2ですむという弁護士は多いかと思います。多かれ少なかれ、調停で終わるか、訴訟になるかによって金額が異なることが多いです。
遺留分減殺請求事件の場合、弁護士によって報酬に違いがあまりありません。ただ、委任しようと思う弁護士に直接おうかがい下さい。
まず、生前贈与です。
現金、預貯金、株等の有価証券、高価な動産の贈与は生前贈与に該当します。特別受益の中で、不動産と並んで多いケースです。
生前贈与は、10年前までしか、さかのぼれないように相続法改正で改められました。
ずいぶん、楽になります。
次に、被相続人が相続人に対し、不動産や不動産の代金を贈与した場合があります。
不動産がある場合、遺留分減殺請求をされた相続人は、不動産の価格を低めに評価し、逆に、遺留分減殺請求をした相続人は、不動産の価格を高めに評価するということで、不動産の時価が争いになります。
被相続人の土地上に相続人が建物を建築する際に借地権を設定した場合、借地権相当額の贈与があったと解されます。借地権を設定せず、建物を建築させ、無償で土地の使用をさせた場合にも、使用借地権相当額の贈与があったとされることが多いです。
被相続人所有の建物に無償で住んでいた場合は、ケースバイケースです。逆に、親の面倒をみさせられてきたと考えることもできる場合があります。
さらに保険金が争いになる場合があります。
よく争いになるのが、一時払い養老保険です。
はい。
生命保険金を原則として特別受益に該当しないと扱われています。もっとも、相続人間の不公平が到底是認できないほどに著しいと評価すべき特段の事情がある場合には、特別受益に準じて扱うとされています(最高裁判所・平成16年10月29日判決)。
例えば、夫婦が生活費の中から、こつこつとかけてきた生命保険の保険金を妻が受け取り、また、妻が遺言でも遺留分を侵害する相続財産をもらっている場合、生命保険を特別利益として計算する必要はないでしょう。どうせ、妻が亡くなれば、子が相続します。
しかし、一時払い養老保険(年齢や健康に関係なく入れます)に1000万円を払わせ、遺言でも遺留分を侵害する相続財産をもらっている相続人が受取人になっている場合は、遺留分の潜脱にあたりますから、生命保険を特別利益として計算すべきですね。
配偶者に対する税額軽減、小規模宅地についての課税価格の低減、農地等の相続税の納税猶予、事業承継による納税猶予の特例、物納の可否などがあげられます。
配偶者に対する税額軽減、小規模宅地についての課税価格の低減は、申告期限後3年以内に遺産分割協議ができれば、修正申告や更正請求により、その優遇を受けることができますが、その他は優遇を受けられません。
ですから、相続税が多い場合は、調停や審判ではなく、さっさと遺産分割協議をしてしまう傾向にあります。
逆にいえば、そもそも相続税などかからないという事例は、調停や審判で徹底的に争われるということになります。