離婚のよくあるご質問
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離婚ついてのFAQ
協議離婚は、夫婦双方の間で離婚について合意し、また、未成年の子がいる場合には親権者についての合意がある場合に、市区町村長へ離婚届を提出することによって成立する離婚です。文字どおりの「協議離婚」です。
調停離婚は、離婚そのものについて合意ができない場合、未成年の子ついての親権者をどちらにするか合意ができない場合、慰謝料、財産分与、養育費など離婚条件に合意ができない場合、家庭裁判所で、調停委員をまじえた離婚のための調停をすることになります。離婚および他の条件について合意ができたときに成立する離婚のことを「調停離婚」と言います。
裁判離婚は、調停による離婚の合意が不成立の場合、家庭裁判所に訴訟を提起して裁判手続きに入ってからの離婚です。裁判所の判決により強制的に離婚を成立させる「判決離婚」と、裁判官の勧告案を双方が受入れる「和解離婚」があります。
慰謝料は、協議離婚をしたときから3年以内に、話し合いをまとめるか、調停を申し立てるか、あるいは、訴訟を提起しなければ、時効にかかってしまいます。
財産分与は、すぐにでも話し合いをまとめるか、調停を申し立てるべきです。時間がたつと、記録が散逸しますし、2年で時効にかかります。
年金分割は、協議離婚をしたときから2年以内に、調停を申立てるか、審判の申立をします。事実上、分割割合は、2分の1に決まっていますから、年金事務所で、年金分割の情報通知書を取得して、審判の申立をするのが早道です。
養育費には時効はありませんが(子が働きに出るか、大学卒業で終わります)、調停申立ての月までの不足分(過去分)はもらえませんから、養育費が約束どおり支払われず、前夫に誠意がなければ、調停を申立てるべきでしょう。
面会交流にも時効はありませんが、思うようにあわせてもらえず、協議が整わなければ、すぐに調停を申立てるべきでしょう。
夫か妻、どちらが、すぐに離婚したがっているかによって決めるのがよいでしょう。
例えば、妻が、暴力にたえかねている場合など、さっさと離婚届けに判を押してもらい、慰謝料や財産分与や年金分割は後回しにして、子どもをつれて出ていくのが賢明です。ぐずぐずして怪我でもしたら大変です。
そうでない場合は、相手が離婚したがっているなら、先に、慰謝料や財産分与や面会交流や年金分割の話を決めてしまってから離婚しましょう。離婚してしまってから、話し合いをしようと思っても、離婚したとたんに話し合いをしなくなったり、条件を悪くしてきたりということがあります。
お互いに離婚したい場合も、後くされのないように決めてしまった方が賢明です。
なお、離婚届けをやたら急がされる場合には、相手の不貞などを疑ったほうが賢明です。
公正証書を作成することを是非お勧めします。
理由は以下のとおりです。
1 公証人は、ほとんどの場合、裁判官、検察官のOBであり法律の専門家であり、法律の知識が十分あり、法律にのっとった条項にしてもらうことができますし、また、証明力も高くなります。
2 金銭支払(慰謝料、財産分与のうち金銭支払い部分、養育費)については、強制執行認諾文言を記載しておけば、裁判所に訴訟を提起しないでも強制執行できます。年金分割も公正証書でできます。
なお、自宅マンションの所有権移転登記などについては、公正証書では強制執行できませんから、あらかじめ移転登記をしてもらうか、移転登記に必要な書類を取得しておくことが必要です。
当事務所は、離婚にあたっての合意書案の作成、公正証書の作成の依頼があればお受けいたします。
他の法律事務所も同様かと思います。
なお、司法書士、行政書士に依頼することは避けることをお勧めいたします。
理由は、司法書士、行政書士は、離婚の調停や訴訟の代理人になれませんから、実際、離婚の調停や訴訟において、どのような点がよく争点になるかどうかの事情を知らないからです。
ちなみに、弁護士は、登録手続きだけで税理士として仕事ができますが、よほど税務に強いと自信のある人しか登録しません。
税務署員とやりあってなければ、理屈だけわかっていても無理ですから。
なお、大きなお金が動くときは、税理士を紹介し、税理士にアドバイスを求めるように助言することもあります。
家庭裁判所での、離婚についての話合いです。裁判とは異なり非公開です。
2名の家事調停委員(男女各1名)が、当事者双方の言い分や事情を聞きながら、円満に解決できるように、交互に話を聞きながら話合いを進めていきます。
なお、裁判官である家事審判官は、同時に何件もの調停事件が並行して行われているため、調停には立会うことは難しいですが、適宜、家事調停委員と評議をして、調停を進めます。
調停がまとまれば、家事審判官と書記官が立会って、調停調書が作成されます。
双方に譲歩の意思がなく、合意の成立する見込みがないという場合、調停は不調となり、訴訟をしてでも離婚を望む当事者は、家庭裁判所に離婚の訴訟を提起することになります。
公平は公平です。
ただ、調停委員にもよりますが、能力には「?」のつく調停委員もいます。
また、調停をまとめることに熱心で、「誤った考えをもっている方」ではなく「うるさくない方を説得にかかる」という傾向がある調停委員もいます。調停委員の言うことだから「適正」であると考えるのは早計でしょう。調停委員は、褒章を受けることもあるのですが、調停を成立させた実績により褒章を受けたり受けなかったり、また、褒章のランクに違いがあることもあります。
また、片方だけに弁護士がついている場合、弁護士のついていない当事者に妥協を求めてくる場合もあります。
疑問に思ったら、調停委員が公平な意見を出しているかどうかについて、弁護士に相談することをお勧めします。
まず、弁護士に依頼しない場合には、自分が出頭しないと調停が始まりません。
問題は、弁護士に依頼している場合ですが、建前は「やむを得ない場合」のみ、代理人を出頭させ、本人は出頭しなくてもよいとなっています(家事審判規則5条)。
実務上は、離婚調停のときは、必ず本人の出頭が必要である、その他の場合は、できるだけ本人に出頭してほしいというものです。
離婚するかしないか決断を迫られるというときに、弁護士のみが出頭しているにすぎないというのは、期日を無駄にするということになりますから、出頭すべきでしょう。面会交流にしても、本人が出頭していないのでは「本気度」が疑われます。
調停離婚の成立期日には、本人が出頭しないと、調停を成立させてもらえないと、お考え下さい。
これに対し、婚姻費用のみの調停、例えば、婚姻費用の増額や減額の調停の場合なら、弁護士だけでも通常構いません。弁護士は、あらかじめ、本人から、最低いくら、あるいは、最高いくらと聞いて出頭します(あとで、弁護士と依頼者の紛争が起きないよう書面をもらいます)。
遺産分割も、高齢者で出頭が難しいときなども、何もいわれません。
もちろん、依頼した弁護士と相談すべきですし、できることなら、休みを取って出頭してもらう方が、弁護士としてはありがたいです。
原則として、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所です。例えば、相手方が、大阪市や豊中市にすんでいるなら大阪家庭裁判所本庁、堺市に住んでいるなら大阪家庭裁判所堺支部、泉佐野市に住んでいるなら大阪家庭裁判所岸和田支部になります。
弁護士が双方についている場合など、管轄の合意がなされれば、合意された家庭裁判所で調停が行われることがあります。
なお、東京で暮らしてきて、夫の暴力で大阪の実家に小さい子供と戻ってきて暮らしているなど、相手方住所地を管轄する家庭裁判所が遠くてそこまで行くのが経済的にも物理的にも困難な場合等は、「自庁処理の上申書」を添付して申立人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立できる場合があります。
この場合、定型用紙は裁判所に備え付けがありませんし、微妙な場合もあり、弁護士に依頼して手続きするのが賢明です。
別居中の配偶者が、任意に相当な額の生活費を渡してくれている場合には、離婚調停だけで十分です。
ただ、ろくに生活費を渡さない配偶者も多いです。
ろくに生活費を渡さない場合、婚姻費用を「えさ」に離婚を迫ったり、財産分与等で有利な条件で離婚を成立させようとする場合、婚姻費用分担の調停を申立てます。
すぐに申立ててください。婚姻費用が認められるのは調停申立時からとする例が多いようです。
「婚姻費用」は、妻と子供の生活費(衣食住に必要なお金、教育費、医療費)のことで、離婚していないことが前提です。
算定表により、それぞれの収入により、機械的に定められるのが原則です。
当事者双方の間で合意できた場合には調停が成立し、その合意内容は、家事審判官(裁判官)の指示のもと、裁判所書記官が「調停調書」という文書にまとめます。
調停調書は、確定した判決と同様の効力を有します。
たとえば、離婚調停の場合、調停調書を市区町村にもっていけば、単独で離婚届を提出できます。また、不動産等の所有権移転も単独でできます。
金銭支払(慰謝料、財産分与のうち金銭支払い部分、養育費)について、調停調書に記載された内容が約束どおりに支払われない場合には、調停調書に基づいて強制執行ができます。
不動産の所有権移転、金銭の強制執行については、弁護士に依頼することをお勧めいたします。
なお、調停調書で、面会交流の強制執行はできません。
調停は、すべての条件について合意しなければ不調になります。
離婚するしないについて争いがある場合、親権者に争いがある場合、財産分与に争いがある場合、慰謝料に争いがある場合などは、家庭裁判所に離婚訴訟を提起することになります。何もしなければ、そこで終了です。
婚姻費用に争いがある場合は、当然に家庭裁判所の審判手続きに移行します。
婚姻費用の審判は、裁判所から求められる書類を提出するだけです。書類を双方が提出してから1、2ヶ月で裁判官(家事審判官)が審判を出します。
面会交流に争いがある場合も、当然に家庭裁判所の審判手続きに移行します。
婚姻費用の審判は、家庭裁判所の調査官が事前に調査をしている事が多いです。夫と妻本人のほか、年齢にもよりますが、子どもに面会して報告書を作成されています。
それをもとに裁判官が審判を出します。
調停には当事者本人の出頭が必要ですが、本人のみで調停を進めることも可能ですし、現実には、本人のみの調停が多いでしょう。
私は、以下の場合に、弁護士に委任し、弁護士と一緒に調停にのぞむのがよいとアドバイスしています。
1 相手方に弁護士がついている場合。
2 調停が不調となった場合、離婚訴訟を提起しようと考えている場合、あるいは、離婚訴訟を提起されることが確実と考えられる場合。
3 慰謝料、財産分与の額が大きく、弁護士費用を払うだけの価値があると考える場合。
4 事案と調停委員の意見について、ありのままを弁護士に相談し、弁護士が、調停委員の意見には疑問があると判断した場合。
現在は、弁護士の着手金と報酬は、各弁護士により異なっています。
以前は「報酬規定」が各弁護士会にあり、弁護士費用は、概ね「報酬規定」によっていましたが、自由化されてからも、従前の「報酬規定」によっている弁護士が多いといわれています。
「報酬規定」によれば、調停について委任し、さらに同じ弁護士に訴訟を依頼する場合、訴訟移行時(訴訟提起時)の着手金は、調停の着手金の2分の1加えた金額になるという規定があります。
私は、容易な事件の場合、訴訟になったときの着手金から、10万円(消費税別)引いた金額を調停の着手金としていただき、調停から裁判になるときに、10万円(消費税別)追加でもらっています。
調停で弁護士に依頼せず、訴訟ではじめて弁護士に依頼する場合と、調停も訴訟も弁護士に依頼する場合と弁護士費用は、あまり変わりません。
離婚訴訟になることが確実な場合や、慰謝料、財産分与の額が大きく、弁護士費用を払うだけの価値があると考えるときは、調停段階から、弁護士に依頼することをご検討下さい。
弁護士にもよりますが、基本的には別々です。
弁護士にもよりますが、簡単な事件の場合、大体の相場は、婚姻費用分担調停の着手金について20万円くらい(消費税別)、面会交流調停の着手金についても20万円くらい(消費税別)です。
なお、婚姻費用分担調停も面会交流調停も、審判になれば、いずれも10万円(消費税別)追加で請求されます。
ちなみに、 離婚調停と婚姻費用分担調停と面会交流調停を一緒にするということは考えにくいです。子を監護しているから、自分の分と子の生活費を支払えというわけですから。
話がまとまっているのですから、調停は1回で成立します。
調停委員と家事審判官(裁判官)が調停調書を作成してくれますから、漏れのない正確なものになりますし、信用性も十分です。
何よりも、慰謝料、養育費、財産分与などについて、相手が約束を守らなければ、調停調書に基づき強制執行することができます。
費用も、公正証書より安くすみます。
もっとも、調停は時間がかかります(合意している場合でも、調停申立から第1回の期日まで1か月から2か月)。相手方配偶者の気が変わらないうちに公正証書にするというのも一方法です。
弁護士に委任すれば、30万円~50万円に消費税を加えた着手金と、請求する慰謝料や財産分与に相当する分の着手金を要する場合があります。
あと、成功報酬が30万円~50万円かかるのと、回収した慰謝料や財産分与に相当する分の成功報酬、支払いを免れた慰謝料や財産分与に相当する分の成功報酬を付加して支払うことになります。
離婚事件の場合、弁護士によって驚くほどの違いがありますから、委任しようと思う弁護士に直接おうかがい下さい。
なお、相談した弁護士に依頼すれば、見積書をもらえるのが原則です。
日本弁護士連合会「弁護士の報酬に関する規程」4条に「弁護士は、法律事務を依頼しようとする者から申出があったときは、その法律事務の内容に応じた報酬見積書の作成及び交付に努める」とされています。
もっとも、値段だけで決めると「安物買いの銭失い」になりかねません。
また、流行っていない弁護士の安い見積書を、流行っている弁護士にもっていって、同額にしてほしいと言っても相手にしてくれません。「その先生に頼んだらいかがですか」とあしらわれるのが普通です。
法テラスに連絡をしてみて下さい。
法テラスは、税金も入って運用されている公的団体で、資力にもよりますが、裁判費用を立て替えてくれる制度があります。すべての弁護士に依頼できるわけではなく、法テラスとの契約を結んでいる特定の弁護士に限られます。
なお、事件にもよりますが、若い弁護士さんにあたることが多いです。着手金や報酬が、一般の事件より極端に安いため、中堅やベテランの弁護士は割が合わないとして避けます。
ただ、今は手持ちの金はないけれど、財産分与の見込み額が大きいときなどは、中堅やベテランの弁護士もやってくれる場合があります。
私は、妻側で、財産分与の見込額が大きいときは、受任します。
民法770条には以下のとおり定めています。
「 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
1項 ① 配偶者に不貞な行為があったとき。
② 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
③ 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
④ 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
具体的に説明していきます。
① 不貞行為
浮気や不倫のことで、配偶者以外の異性との性的関係を、本人の自由意志に基づいて結ぶ行為のことです。強姦された場合や同性愛は含まれないと介されています。もっとも、同性愛は5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当するでしょう。
性交渉のみで、キス程度では不貞になりません。ただ、たとえ1度でも異性と性的関係を結べば不貞となります。これは、相手が「素人」でも「プロ(売春婦)」でも同じです。ばれるかどうかは別として、外国旅行の際に、買春をしても同じです。ややこしい写真を撮って持って帰らないでください。
② 悪意の遺棄
夫婦の同居義務、扶助義務や協力義務を、不当な理由もなく果たさない場合のことです。
一番多いのは、収入や財産があるのに、相手に生活費を渡さないというケースです。病気により働けないため収入がなく、また、財産もないのであれば、生活費を渡さなくても「悪意の遺棄」にはなりません。
なお、理由なく同居を拒否する、家を追出す、虐待を行い家に居られないようにする、生活費を送る約束で別居をしたが生活費を送らない場合も「悪意の遺棄」になります。
③ 3年以上の生死不明
最後に生存を確認できたときから生死不明の状態が3年以上続いており、現在も生死不明の状態が続いている状態のことです。
住所や所在が分からず音信不通であっても、生存していることがはっきしている場合は、単なる「行方不明」で生死不明とは異なります。
相手の所在がわからないのに、どのようにして裁判を提起するのかというと「公示送達」という方法をとります。なお、調停を申立てても呼出状が送れないので、調停手続きはいりません。
④ 回復の見込みのない強度の精神病
配偶者が強度の精神疾患に罹患し、回復する見込みがなく、夫婦生活に必要な役割分担や協力が十分に果たせない状態のことです。
離婚原因として認められる精神病は、植物人間になったような場合、認知症、強度のそううつ病などです。
「アルコール依存症」「薬物依存症」の場合、回復は可能ですから、原則として該当しません。
もっとも、再三再四、繰返す場合は、5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当するでしょう。
⑤ その他婚姻を継続しがたい重大な事由
夫婦関係が修復不可能なまでに破綻し、夫婦として生活を継続するのが困難な状況であるとき、離婚原因として認められる重大な事由のことです。
一般的には「暴力」「虐待・精神的虐待」「侮辱」「酒乱による暴行」「勤労意欲の欠如」「ギャンブル」「浪費」「犯罪による長期服役」「過度の宗教活動」「理由のない性交拒否」「長期間の別居」などが上げられます。
また、どちらが悪いというわけでもない、いわゆる「性格の不一致」の場合、協議離婚や調停離婚はできますが、「性格の不一致」自体は離婚理由になりません。しかし、別居が長期間続いている場合(目途は5年。最低でも3年)、婚姻関係が破綻しているとして「婚姻を継続しがたい重大な事由」として離婚理由となります。
「婚姻を継続しがたい『重大』な事由」に該当するかどうかは、裁判所が判断します。
なお、裁判所は、前項1号から4号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる 」となっています。
不倫はしたが、配偶者が許して結婚生活を送ってきたのに、何年、十何年もたってから、それを「蒸し返して」離婚を求めてきたときが典型ですが、その他の事由についても、裁判所が一切の事情を考慮して判断します。
自ら離婚原因を作って婚姻関係を破綻させた当事者のことです。例えば、自ら不貞行為をして婚姻関係を破綻させた当事者、暴力をふるって婚姻関係を破綻させた当事者などです。
有責配偶者からの離婚請求は、原則として認められません。
しかし、婚姻関係が破綻し、長期間の別居が続いているなどの事情があれば、別居が相当長期間におよんでいること、未成熟の子供がなく、相手方が離婚されても精神的・社会的・経済的にも困る状態にないことなどを理由に裁判での離婚を求めることができます。
未成熟子は20歳未満の子のことをいいます。民法改正で18歳が成人となる年齢と定められましたが、運用は20歳です。
なお、当然ですが、一番下の子を判断基準とします。
有責配偶者から離婚の請求は原則としてできません。
たとえば、夫が愛人をつくって家を出て愛人と暮らしている場合があります。
夫に大した収入がない場合は、ある程度まとまった慰謝料をもらって、さっさと離婚してしまえばよいことになります。
しかし、夫が高額収入者、あるいは、公務員や大企業勤務で安定した収入がある場合はどうでしょう。
婚姻費用は、離婚しない限り毎月受け取れます。離婚すれば、未成年者の子がいる場合、子の養育費だけになって金額が少なくなってしまいます。
毎月20万円から30万円の婚姻費用をもらっている妻は珍しくありません。婚姻費用には税金や社会保険料がかかりませんから、丸々手取りとなります。
昭和62年9月2日に最高裁判所判決が出る前は、有責配偶者は、絶対に離婚できないとされていました。
昭和62年9月2日の最高裁判所判決は、婚姻関係が破綻し、長期間の別居が続いているなどの事情があれば、別居が相当長期間におよんでいること、未成熟の子供がなく、相手方が離婚されても精神的・社会的・経済的にも困る状態にないことなどを条件として、有責配偶者からの離婚を認めました。
妻の地位でいることが、自分や子供の生活のための安定収入になるということですから、通常、離婚には応じませんね。
未成熟子がいない場合、7年~8年が目安とされています。
7年~8年経過しても、未成熟子(民法改正後も運用では20歳です)がいなくなるか、すべての子が働き出すまでは、裁判で離婚を求めることは難しいということになります。
某芸能人カップルの離婚により有名になりましたね。
「モラハラ」という言葉を使うかどうかはべつとして、昔から、離婚調停や離婚訴訟でよく出てきました。
ただ、「不貞」「暴力」とは異なり、客観的に明確ではありませんし、同じ言葉をいわれても「モラハラ」ととらえるかどうかは、各人各様であいまいです。また、売り言葉に買い言葉ということはよくあり、本当のところ、どちらが悪いのかわからないことがあります。
いわゆる「性格の不一致」と同様に扱うのが通常です。つまり、別居が長期間(別居から5年が目途といわれていましたが、3年くらいでも認められる場合があります)続いている場合、「婚姻関係が破綻」しているとして「婚姻を継続しがたい重大な事由」として離婚理由とするのが妥当だと考えます。同居を続けておいて、「モラハラ」ですぐ離婚ということは難しいでしょう。
ちなみに、某芸能人カップルの離婚も、別居が長期間という事情が大きかったと考えられます。
算定表は、収入のみにより算定されます。資産、負債などは考慮されません。
「権利者」は、子を育てる側の収入で、「義務者」は、子を育てない側の収入です。
「給与所得者」「自営業者」に分かれています。
会社員・パート・アルバイトなどは「給与所得者」の欄を見ます。源泉徴収表の「支払金額」の数字です。
自営業者の場合は、「自営業者」の欄を見ます。確定申告書控えの「事業収入」から「必要経費」を引いた欄の数字です。
ちなみに、自営業者は、脱税をしているのが当たり前というわけではありません。
2万円程度の幅があります。一律に決めてしまうと、話合いにならないからです。
算定表の裏には公式があります。
審判になるとわかります。数字をいれると、何千何百何十何円まで計算できますが、通常は万円単位、千円単位で審判されます。
あります。
1 住宅ローン
例えば、夫が住宅ローンの残っているマンションを出て行って一人暮らしをし、妻と子がマンションに住んでいる場合、妻の年収にみあった平均住居費が、算定表の金額からマイナスされます。
2 私学
子が公立小学校、中学校、高等学校に通っているという前提で算定表がつくられています。
両親とも、私立小学校、中学校、高等学校に通わせるということについて合意の上なら、入学金や学費などの上乗せがあります。
上乗せは、夫婦が均等に負担するという裁判所と、収入に応じて負担するという裁判所があります。同じ裁判官でも、事例に応じて、使い分けているという人がいます。
3 その他
その他の例外は弁護士におうかがいください。
まず、預金等の金融資産が十分あれば、調停で定められた婚姻費用を支払わないということはないでしょう。離婚調停や離婚訴訟にさしつかえます。
預金は、不払いの時点で、知っている金融機関の分は解約されたり、引き出されたりするかも知れません。
不動産は、かなり強制執行が難しいです。不動産の強制競売の予納金は最低90万円+登録免許税を納付させられますし、弁護士費用も安くありません。よほど、婚姻費用が高くないと難しいでしょう。
また、住宅ローンがついていれば、競売で安くなり、住宅ローンが先に引かれて、何も残らないことになる場合があります。最初からオーバーローン(時価よりも住宅ローンが高い)なら、無剰余(優先債権がある場合において,不動産の買受可能価額が手続費用及び優先債権の見込額の合計に満たないとき)ですから、競売申立はできませんし、したところで取消されます。
常識的には給与の差押さえでしょう。それ以外は、あまり見ません。なお、法人化されている場合(医療福祉法人など)の理事報酬も給与と同等差押さえは容易です。
自営の場合、強制執行はやっかいです。
相手が正社員なら、給与を差押さえれば、まず、とりはぐれはありません。
正社員が、婚姻費用ぐらいのことで、現在の職場を退職するということは考えにくいです。また、ある程度の規模の会社の正社員や正規の公務員なら、給与を差押さえられたということで解雇されるという恐れもありません。正規の会社の正社員も、法律的に解雇されることはありえないのですが、人間関係で、退職しなければならない場合もあります。
非正規雇用者の給与は不安ですね。
本人が、給与を差押さえられるのが嫌で、退職して他で働くようになるかも知れません。そうでなくても、期間満了で、雇止めされることもありえます。
医師が相手なら、診療報酬請求権を差しさえられます。
医師以外の自営業者は、はっきりいって難しいですね。自営業者といっても、いわば「一人親方」の場合(業務委託契約)、どこかの特定の会社から以外の収入がない場合には、売掛金の差押さえが可能な場合があります。
相手が任意に履行すると期待できる場合は「月1、2回程度、1回、2、3時間程度面会交流ができる」との条項で構いません。子のスケジュールもあるでしょうから、ある程度、柔軟な方がいいのです。
相手が信用できないのであれば、「月1回第1日曜日の午後1時から2時間。都合が悪いときは、メールによる別の合意をしない限り、自動的に1週間後とする。1週間後も都合が悪ければ同様とする」「場所は、別の合意をしない限り、○○ホテルのロビーとする」「1月と8月の第1日曜日から○日間父親のところで暮らす」などと、あとで争いが出ないような条項にするのが賢明です。子にとっては、好ましくありませんが、再度、調停の申立をする負担を考えれば、仕方がありません。
別居中離婚前、離婚後の面会交流をあわせて、平成25年は1万件を越えて、10年前の2倍になり、それ以降も、増加の一方だそうです。
私が扱う離婚事件では、面会交流事件は、減ったという実感です。
一般論ですが、自分より若い弁護士に離婚事件は頼まないという人が多いように思います。私も、若いころは、若い夫婦の離婚事件が多かったという実感がします。
私は、昭和30年生まれです。最近は、子どもが既に成人している、あるいは、高等学校、大学に通っているという夫婦の離婚事件が増えました。
いわゆる熟年離婚で、面会交流は問題にならない事案です。
はっきりいって、財産分与がいくらもらえるか、財産分与をいくら払うかが主たる争点ですから、割切って仕事ができます。
私自身が、面会交流とは縁遠くなったせいで、面会交流が増えているという実感はありません。
民法770条の「配偶者から悪意で遺棄されたとき」「配偶者の生死が3年以上明らかでないとき」「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」は、実質的に争われることは滅多にありません。
「配偶者の生死が3年以上明らかでないとき」は公示送達で処理されますし、「配偶者の生死が3年以上明らかでないとき」「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」は調停段階で医師の診断書でケリがついています。
「配偶者に不貞な行為があったとき」や「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」のうち家庭内暴力(DV)はよく争われます。
また、親権者は、幼少期は母親が圧倒的に有利であって、夫は「一応」争っておくという例が多く、本当に争っているかどうかが疑問なケースが結構あります。
一番多いのは、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」のうち、「性格の不一致」による「婚姻破綻」です。3年から5年の別居が必要です。
離婚の法制については「有責主義」と「破綻主義」があります。
「有責主義」とは、おおざっぱに言えば、配偶者のどちらか一方に責任がある場合のみ、相手方配偶者からの請求により離婚が可能という制度であり、「破綻主義」とは、おおざっぱに言えば、婚姻関係が破綻し、別居が長く続けば、夫婦関係が元に戻るということは考えにくいので、婚姻関係が破綻しているとして、離婚を認める制度です。
ただし、「破綻主義」をとったとしても、「有責配偶者」からの離婚請求は認めない、つまり、破綻の原因をつくった当事者からの離婚請求を認めない(例えば、不貞をしたため婚姻関係が破綻した場合、不貞をしていない当事者から不貞をした当事者に対する離婚請求は認めるが、不貞をした当事者から不貞をしていない当事者に対する離婚請求は認めない)という制度が一般です。
日本の場合は「破綻主義」をとっています。
ですから、一方当事者に全く悪い点がなくても、他方当事者が離婚したいと考え、一定期間以上別居していれば、夫婦関係が元に戻るということは考えにくいので、婚姻関係が破綻しているとして、離婚を認められます。
よって、一方当事者が離婚を望めば、他方当事者に何の落ち度がなくても、一定期間、別居の実績をつめば、相手方が「有責配偶者」でさえなければ、離婚は認められることになります。
不合理であると考えられる方も多いかと思いますが、日本の法律や判例がそうなっているのですから仕方がありません。
私は、昭和55年から平成2年まで裁判官をしていました。
私の裁判時代は、離婚裁判は、家庭裁判所ではなく、地方裁判所で審理されていました。
私が離婚裁判を担当していたとき、相場としては、5年の別居で離婚を認めるというのが多数派であったと思います。
妻の方が離婚を求める場合、婚姻費用が養育費となり減額されることを甘んじて受け入れるということですから短めの期間で離婚を認め、夫の方が離婚を求める場合、別居期間は、長めにするという判断をしていました。
最近の大阪家庭裁判所の取扱いをみていますと、3年別居していれば離婚を認めるという傾向にあるように思います。
調停にも時間がかかりますし、離婚訴訟も時間がかかり、3年くらいはあっという間に経過します。
私自身は、不合理かと考えていますが、「そんな配偶者を選んだあなたが悪い」といわれているようで、あまり愉快なものではありません。
ただ、それを前提として、訴訟活動をするしかないと考えています。
養育費については、判決主文で「長男○○が20歳になった日の属する月まで、毎月月末限り、金○○円を支払え」と示されています。大学生で収入がなければ、話合うか、話がつかなければ、養育費を受取る側で養育費の調停を申立てて下さい。
また、子どもが14歳以下か15歳以上かにより区別されていますから、子どもが15歳になった場合には理屈上では増額されます。ただ、そう大きくは変わりません。
自分が解雇されたり、相手が働き始めた場合に申立てられます。自分や相手の給与が大幅に増額、大幅に減額になった場合も申立てられます。
珍しいところでは、再婚して子が生まれた場合、結婚して配偶者の連れ子を養子にした場合にも、養育費は減額になります。
弁護士に法律相談すれば、慣れた弁護士なら、調停調書や判決書を持参すれば、遅くとも一両日中に計算してくれます。
いずれの場合にも、弁護士に依頼すると高くつきますから、話合いで解決するか、調停を申立てるのが賢明です。もっとも、平日に裁判所に行く時間がない場合は、弁護士に依頼するしかありません。
なお、再婚して子ができた、あるいは、配偶者の連れ子を養子にした場合などを理由に減額の申出をする場合は、本人同士で話し合うと感情的にもめる可能性がありますから、調停を申し立てるのが賢明です。
芸能人が、慰謝料何千万円で別れたという週刊誌の報道がありますが、厳密に、慰謝料が数千万円ではなく、財産分与、養育費一括、あるいは、解決金の合計が数千万円ということです。交通事故で命を落としても慰謝料は2000万円から3000万円どまりですから、離婚することによる慰謝料は、死亡に比べずっと安いです。
暴力にせよ、不貞にせよ500万円くらいが上限と考えれば目安になります。暴力の場合は、しょっちゅう病院に治療に行くことを余儀なくされた暴力が何年も続いた場合、不貞の場合は、例えば、医師やパイロットという高収入の夫に裁判離婚させられたという場合などです。
通常、100万円から200万円くらいが多いですね。
なお、本来、自らが不貞をした有責配偶者から離婚をお願いする場合は、解決金として数千万円支払うことは珍しくありません。
ちなみに、私が直接扱った例では、暴力500万円、不貞500万円が最高です。
あります。以下の4つです。4を抜いて説明することが多いでしょう。
1 清算的財産分与
2 扶養的財産分与
3 慰謝料的財産分与
4 離婚までの生活費の清算
通常、財産分与というのは、1の清算的財産分与で、結婚から別居までの間に、夫婦の協力で築いた共有財産を清算するものです。何もいわずに「財産分与」といえば、清算的財産分与を指します。
2の扶養的財産分与とは、離婚することにより、一方当事者は従前通りの生活が送れるのに、他方当事者は、清算的財産分与だけでは生活に困窮してしまう場合、たとえば、乳幼児をかかえているが、本人の収入は少なく、養育費も算定表の計算では多くは望めないなどのとき、本来の財産分与の比率を、例えば、夫40%、妻60%としたり、妻に300万円余分に財産分与するというものです。まれと考えていただいてさしつかえありません。
3の慰謝料的財産分与とは、離婚原因が明らかにどちらか一方にあるが、慰謝料を支払うべきということまでは認めがたい場合に、原因をつくった方に相手方当事者に財産分与を認めるものです。まれでしょう。私は、昭和55年から裁判官と弁護士をしていますが、見た例は皆無です。端的に、慰謝料を支払わせるのが普通です。
4の離婚までの生活費の清算は、現実には別居中に、婚姻費用がきちんと支払われていない場合に財産分与の時に調整する方法です。
通常、ちゃんとした弁護士が最初からついていれば発生しません。別居後は算定表に基づいた婚姻費用を受け取っているからです。
なお、これを認めない裁判官がいることも事実ですし、認められたとしても、本来の婚姻費用不足分にとうてい及ばないことが普通です。
別居日は、どちらかが荷物をまとめて出ていった日ですから、普通は、あまり争いになりません。夫婦とも、○年○月の○日ころだったとしか記憶がない場合は確かにあります。
ただ、職場が自宅から遠く、残業などが多い場合、職場のそばにマンションを借りているなどすることがあり、普通の夫婦であったころから、週末とヒマな日くらいしか自宅に帰らず、だんだん週末も帰らなくなり、結局全く帰らなくなったという場合もあります。
そのときは、裁判官が中に入って、別居日について合意します。
といいますのは、預金通帳は別居日の残高をみて「○○○万○○○○円」と記載しますから、「○日ころ」では財産分与の手続きができません。ある程度の妥協となります。
また、わざと、別居日を遅らせようとする弁護士がいます。「いったん別居したが、春休みに1週間帰ったから、春休みが別居日である」などという主張です。裁判官が「無理だ」と指導するのですが、聞き入れられないことがあります。
そのときは、財産分与のための財産目録を、原告主張分と被告主張分の2通つくることになります。
例えば自宅(一戸建て、マンション)の時価(和解時、判決時の時価)が、住宅ローン残高(別居時の残高)を返すだけの価値がある場合は、売却して2等分してもいいですし、どちらか住む方が、相手方に「時価-住宅ローン」の半分を渡してもいいのです。もっとも、住宅ローン残高は争いようがないですが、住み続ける当事者は、時価を低く見積もり、住まない当事者は時価を高く見積もるということがよくあります。
鑑定まですることは少なく、双方からの不動産業者の査定書に基づき裁判官が決めます。
住宅ローン(別居時の残高)が、自宅の時価(和解時、判決時の時価)より高いときが問題です。オーバーローンと言います。
裁判官の考えにもよるのですが、大阪家庭裁判所の扱いは、住宅ローンを返し終えれば、財産になるのだからという理由で、自宅の時価-住宅ローン残高(別居時の残高)は、マイナスしないという扱いをしない(結局、夫は離婚後稼げるから問題はないが、子をかかえた妻の将来の生活を考えると、住宅ローンのマイナスを勘定して、預貯金の増加分の2分の1から引いて、預貯金を減らして少なく渡すのは不安という、一般的な考えがあることがうかがわれます)のが普通です。
なお、夫の住宅ローンのある自宅(一戸建て、マンション)に妻と子が住むという場合は、賃料相当額程度を養育費から減らすということになると思います。それが嫌なら、ほかの賃借物件に住めばよいということですね。
それは、和解の場合の話で、判決の場合は、どちらが住むか、売却するかなど考えに入れず機械的に判断します。
まず、購入代金を計算します。本体だけではなく、仲介手数料、不動産取得税など実費を計算します。備付けのものを除き家具は計算しません。
そのうち、夫の分は「夫の結婚前の資金+夫の親や祖父母からの贈与(中途繰上返済分含む)」、妻の分は「妻の結婚前の資金+妻の親や祖父母からの贈与(中途繰上返済分含む)」、夫婦できずいた財産は返済分(中途繰上返済分含む)、あとは別居時のローン残高となります。
諸費用込み4000万円のマンションで、1000万円が夫の結婚前の資金と親族からの贈与、400万円が妻の結婚前の資金と親族からの贈与、ローン残が1000万円としますと、夫婦できずいた財産である返済分は1600万円となります。夫が住宅ローンを返済するとします。
夫固有の分(夫の特有財産)は1000万円+1000万円(住宅ローン)、妻の固有の分(妻の特有財産)は400万円、夫婦で築いた共有財産は1600万円です。
すると、夫の特有財産は50%、妻の特有財産は10%、夫婦で築いた共有財産は40%となります。
妻の取り分は30%(10%+20%)です。夫の取り分は70%(25%+25%+20%)です。
判決あるいは和解時に、自宅の時価が3000万円になっていたとした場合、夫が取得するためには、妻に3000万円×30%に該当する900万円を支払わなければなりません。
夫の単独所有、夫と妻の共有名義になっていても金額は同じです。また、共有持分権の割合は問いません。
夫は、時価1000万円の自宅を取得し1600万円のローンをかかえることになります。
あとは、裁判官の考え方次第です。
住宅のオーバーローンを考えないという立場なら、その余の夫婦で築いた共有財産は2分の1ずつ取得します。妻の負担は0です。
住宅のオーバーローンを考えるという立場なら、その余の夫婦で築いた共有財産のうち600万円を夫に分与し、その余を夫と妻各2分の1ずつ取得します。共有財産が600万円未満なら、妻は取得財産0で、夫の負債の2分の1を夫に対し負担することになります。そこまで残酷にする裁判官がいるかどうかはわかりません。
ただ、いずれにせよ、扶養的財産分与により不負担とされることがおおいでしょう。
ありえます。
例えば、夫も妻も晩婚、結婚前に実家で暮らしていたので、それぞれ500万円の預貯金があったとします。
妻は仕事を辞めて専業主婦になり、子宝にも恵まれました。
夫の給与では足りず、夫の預金を取崩しながら生活し、妻の預貯金は使わないまま暮らしてきて、夫の預貯金は0になりました。夫の預金は奈良県の銀行に、妻の預金は和歌山県の銀行でした。
夫が転勤して、広島県の銀行に口座を開設しました。
子どもも手が離れるようになり、妻が仕事を始め、新たに開設した夫名義の広島県の銀行の預貯金が増えていきました。
夫婦が離婚することになりました。
夫名義の預金は1000万円になっていました。
財産分与の話になりました。
夫の広島県の銀行の預金1000万円は、500万円ずつの分与となります。妻の和歌山県の銀行の預金500万円は、手つかずのままになっています。
妻は和歌山県の銀行の預金500万円+分与される分の500万円、夫の広島県の銀行の預金は分与の結果500万円が残りました。
公平でしょうか。
仕事を辞めた妻のハンディキャップといえなくもありません。ただ、逆に、妻の預金を全部使って、夫の預金が全部残っていたらどうでしょう。
この手の不公平は、結構あります。
幸せな結婚生活をしているときは問題ないのですが、このような例がありますから、特に妻は、自分の結婚前の預貯金を生活費として拠出するのは離婚した場合損ですから、できるだけ死守するようにするのが賢明です。最初から、夫に預金の存在を教えず、通帳を親元においておけばよいのです。
夫婦のいずれのものか明らかではない財産は、夫婦の共同財産と推定されます。
結婚前の預貯金は、そのままの金融機関に預けたままがいいです。
例えば、転勤で不便だからといって、他の銀行に預けるまではいいのですが、そのとき、自分あるいは配偶者の給与振込みの預金からの引出し分を加えて預金すると、後になって、預金すべてが夫婦の預金だといわれかねません。預金を複数の金融機関に分割したり、預金をまとめたりするのも損です。預金を株式や信託にかえるのも損です。
預貯金は、夫婦共有の財産と推定され、金融機関は過去10年分の取引履歴しか出してくれませんから(離婚調停申立が別居後5年なら、実質5年分)、結婚前の預金であるということは、結構難しいということを考えておいて極力預替えなどはしないのが賢明です。
調停や離婚訴訟になれば、どこにいくら預金があるかの探合いになります。
郵便貯金は近畿全体を調べられますが、他の金融機関(銀行、信託銀行、信用組合、農協、労金)は、支店も特定しなければなりません。
離婚を考えたときに、スマートフォンで、相手方名義の預金通帳の写真をとっておくというのも一つの手です。表紙に支店名は記載されていませんが、支店番号が記載されています。余裕があれば、全頁をコピーしておけばいいですね。
逆に、隠すつもりなら、定期預金をした際にもらえる粗品は会社においておき自宅に持って帰らないとか、送付されるカレンダーなどは送付しないように依頼するという方法もあります(最近、そんなことをしてくれる金融機関はなくなりましたが・・)。
なお、四国以外の出身で大阪在住の方なら、百十四銀行(香川県)、伊予銀行(愛媛県)、阿波銀行(徳島県)、四国銀行(高知県)の大阪支店に預けておけば、相手方が探すのは、まず不可能です。例えば、香川県出身の方が、百十四銀行にあずけるのは得策ではありません。
なお、スマートフォンで完結する銀行に預けるという手もありますが(相手方に教えてはいけません。スマートフォンをみられた場合に備え、アプリは隠しましょう)、振込をしてしまうと、どこから振り込まれたか調査すれば、ばれてしまいます。
振込をしないスマートフォンで完結する銀行に「隠す」意味はありません。
株も、投資信託金も、裁判なら判決時、和解なら和解日の時価になります。
厳密にいえば、判決の場合、判決の言渡日ではなく、口頭弁論終結日が基準になります。ですから、上場株式などの場合、どちらかの当事者が、口頭弁論終結の日の前日の大引け値(但し、前日が祝祭日なら直近の取引日)の新聞記事か、ホームページを書証として提出します。昔は、インターネットが一般ではなく、例えば、口頭弁論期日が午前10時となると、その日の朝刊のコピーし、多数の銘柄欄にラインマーカーを引いて証拠を提出する作業が大変でした。
午後1時15分に口頭弁論期日を入れてほしいと希望する場合もありましたが、今は、大引け後に、銘柄を入れて検索をすれば簡単にでるようになりましたね。
医療法人の財産については、住宅や預金や保険ではなく、出資持分(最大出資持分のある医療法人)、基金(基金制度を採用した医療法人)が、最大の財産ということがあります。
私は妻側で(夫が医師)、医療法人の時価の40%を分与するとの和解をしたことがあります。
医師側(夫が医師、妻が専業主婦の場合)なら、医療法人が特殊なものであること、医療法人の経営に対する妻の貢献がないことを主張して、財産分与の対象ではないと主張しますし、反対側なら、医療法人名義で蓄財していたという事情を主張して、財産分与の主張をすることになります。
弁護士は、立場が違えば、平気で矛盾した主張をするという典型的事例です。
もっとも、財産分与の対象とならないということは現実に難しいでしょうし、かといって、財産分与の対象となったとしても50%対50%は難しいですね。
ただ、離婚裁判になれていない弁護士は、主張を忘れることがあります。夫が医師で医療法人の理事長になっている妻の立場の場合、弁護士に、医療法人の財産分与を忘れていないか確認してください。
退職金は、就業規則に退職金規定がある会社、公務員のように法令で退職金が定められている場合、一方当事者(通常は妻)から、他方当事者に2分の1の財産分与を認められることになります。
そもそも、退職金のない会社は結構ありますし、金一封程度の会社もあります。
関係解説本をみると、定年退職まであと数年(5、6年)と記載されていますが、現実には、公務員や上場企業の場合、調停成立や判決の時点で10年未満程度(通常は50歳くらい)になれば、裁判官は分割を認めるようです。
なお、調停、訴訟(家庭裁判所・高等裁判所)と続けていけば、3年、4年くらいはあっという間に経過します。
あと、私が経験した例で、40代の夫の退職金の分与が認められた例があります。
22歳で大学卒業とともに就職し、28歳で結婚し、50歳で別居し、60歳で定年退職したとします。
就職から結婚までと、別居から定年までは算入されないとされています。
ということですから、38年働いたとして、結婚までの6年、別居からの10年は計算されず、(38-6-10)/38として計算されます(厳密には異なる判例もあります)。
その2分の1というのが普通です。
なお、退職金には所得税(分離課税)と住民税がかかります。厳密には、公租公課(税金)を控除した金額ということですが、離婚時に支払えとする判決のなかには、税金を計算に入れない判例もあります。
家庭裁判所が作成した財産目録のひな形がエクセル形式で弁護士に提供されます。
相続と同じですね。
原告、被告の各財産(原告はアルファベット大文字、被告はアルファベット小文字。A・a(不動産)からG・g(負債)まで。F・fが「その他の財産」となっています。それぞれに数字の番号がつきます)について「原告の主張額」「被告の主張額」「原告の主張」「被告の主張」「書証」という欄があり、原告は「原告の主張額」「原告の主張」欄に記入して書面を裁判所に提出するとともに、被告にメールを送付します。被告は、主張する財産を加えるとともに「被告の主張額」「被告の主張」欄に記入して書面を裁判所に提出するとともに、被告にメールを送付します。
それを繰り返していき、争点を整理します。
財産分与額が大きいとき、端的に、相談している弁護士に「先生は、財産目録をつくるような離婚事件を何件くらい手がけていますか」と聞けば、離婚事件に手慣れているか、手慣れていないかがわかります。
大阪家庭裁判所本庁に導入されはじめたのが、4人の各裁判官にもよりますが、平成24、25年ころですから、2桁扱っていれば、ある程度、手慣れた弁護士です。
まず、ただ「離婚の請求を棄却する」という認否であれば、請求で離婚が認められた場合には、財産分与の審理をしてもらえません。
相手方が不貞をしているなど有責配偶者である場合、別居期間が、それほど長くなければ、請求棄却だけを求めればいいでしょう。万一、離婚請求が認められた場合、控訴して、高等裁判所で、財産分与請求を付加すればよいだけです。
しかし、相手方が有責配偶者ではなく、いわゆる性格の不一致の場合、別居期間が3年をこえるときは、離婚請求自体が認められる可能性が大きいです。
敗訴してから、控訴して、高等裁判所で、財産分与請求を付加すればよいという弁護士もいるでしょうが、高等裁判所で、一から財産分与の請求をしたのでは、①家庭裁判所の裁判官は、財産分与の審理に慣れているが、高等裁判所の裁判官は、必ずしも慣れていない、②高等裁判所が、ケアレスミスなど明らかに間違った判決をしたときに、不服を申立てようがないという理由で、離婚の棄却を求める、しかし、万一離婚請求が認容された場合に備えて、予備的に、財産分与の請求と年金分割の請求をするとするほうが賢明でしょう。
特に、裁判官から、予備的にでも、財産分与の請求をしませんかといわれたときは、それに従った方が有利なことが多いです。
ただ、これは、裁判所が、離婚判決をしますよと言っているのと同じです。
平成19年4月1日から、年金分割制度が導入され、一方当事者(通常は妻)は、合意により、他方当事者(通常は夫)の厚生年金の報酬比例部分のうち、婚姻期間中に支払った保険料に相当する部分(標準報酬総額)の上限2分の1まで取得できるようになりました。
平成20年4月1日以降の期間に関しては、離婚時の他方当事者(通常は妻)からの請求だけで自動的に2分の1に分割できるようになりました。
分割の対象は「保険料納付記録」です。
分割対象となるのは「厚生年金」のみです(「国家公務員共済年金」「地方公務員共済年金」「私立学校教職員共済年金」は平成27年10月から統合されています)です。
国民基礎年金は分割の対象となりません。
また、国民年金基金、厚生年金基金、確定給付企業年金、確定拠出年金も分割の対象となりません。
配偶者の職業次第では、年金分割を受けられないか、逆に年金分割を受けると損という場合がありますので(婚姻期間中の妻の掛金が夫の掛金より多い場合)、注意してください。
年金事務所で、年金分割の情報通知書を取寄せればわかります。
なお、離婚していれば、一方当事者が交付請求したとき、自動的に他方当事者に通知がいきますが、婚姻中の夫婦は、一方当事者が交付請求したとき、他方当事者に通知がされません。離婚の準備をしているということは相手にわかりません。
当事務所は、税理士を紹介することは可能です。
まず、慰謝料に税金はかかりません。慰謝料にかこつけて多額の金銭を支払うと贈与税がかかることがあります。
財産分与については、不動産を財産分与した場合、分与した当事者に時価と原価(購入金額)との差額(譲渡益)につき、譲渡所得税(所得税・住民税)がかかります。また、分与財産の中に相手の特有財産があると贈与と認定され、贈与税が課せられる心配があります。
なお、弁護士に判断は無理です。税理士に相談してください。
当事務所は、税理士を紹介することは可能です。
姓を変えた当事者(通常は妻)は、子がいる場合、あるいは、結婚していた時の姓を名乗る場合は、自分1人の戸籍をつくり、子がおらず、結婚していた時の姓を使わず旧姓に戻る場合は、自分1人の戸籍をつくるか、両親の戸籍に戻ります(父母いずれかが存命の場合のみ)。
通常は、夫と子が同一戸籍に残り、妻だけが新たな戸籍をつくります。
妻が親権者となった場合、子を自分の戸籍に入れようとするときは、家庭裁判所に「子の氏の変更」の審判を求めます。
管轄は、子の住所を管轄する家庭裁判所です。
子が15歳以上であれば子自身が(成年の場合も同じです)、子が15歳未満であれば法定代理人である親権者が子どもに代わって申立をします。
当然、認められます。そうすれば、子が妻の戸籍に入ります。放っておけば、いつまでも、夫の戸籍にはいったままとなります。
「子の氏の変更」は、子の戸籍を移す手続きと考えていただいて結構です。たとえば、母が離婚により新戸籍をつくった場合、1人のみの戸籍になりますが、子の氏の変更により父の戸籍から母の戸籍に子の戸籍が移転します。
なお、結婚していない成年者については、自ら、家庭裁判所の審判を得て、母の戸籍に入ることができます。あるいは、働いていて姓は変えたくないが、父の戸籍に入っているのは嫌だという成年者は、届出だけで、自分1人の戸籍をつくれます。
鈴木姓が変わらなくても「子の氏の変更」の審判が必要です。
一般的ですが、法律用語ではありません。
民法728条には以下のとおり定められています。
「1項 姻族関係は、離婚によって終了する。
2項 夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、前項と同様とする」
戸籍法96条に基づき「姻族関係終了届」を提出するだけです。
「姻族関係終了届」を役所に提出すれば、配偶者の死後に配偶者の家族と絶縁することができます。
義理の父母の面倒をみたりする必要はなくなります。といいますか、義理の父母と同居さえしていなければ、何もする必要もありません。
姓は旧姓にもどしてもいいですし、そのまま使い続けることも可能です。
配偶者の財産についての遺産の相続権は失いません。
姻族関係終了届を出しても、手続きさえれば、遺族年金はもらえます。
なお、墓ですが、届けを出しても出さなくても、死んだ配偶者の墓に入らなければならないということはありません。子に言っておくだけで十分です。遺言書でも構いません。
ただ、「姻族関係終了届」を提出しておけば、夫の家族から、うるさくいわれることもありません。