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身近な法律問題

偽装請負

 「偽装」ばやりですね。

 業務請負を装いながら、実態は労働者派遣となっている、いわゆる「偽装請負」が問題となっています。
 最近問題になっているだけで、手口は昔からありました。

 請負の場合、請負会社が、注文者から「一定の仕事」を請負い、期限内に完成・納品することになります。
 仕事をする人と発注者との間に雇用関係がありません。したがって、請負業者から雇用されている者に対し指揮命令権はありますが、発注者には指揮命令権がありません。 

 本来は、請負会社が、誰を使って、いつどこで仕事をしようが全く問題ないのですが、請負った業務の性質上、発注者の指定する場所、時間に仕事をするしかないというケースもあります。典型例が、工場の製造現場です。機械設備などがないと、仕事ができないからです。

 このような場合、請負と雇用や人材派遣の区別が、曖昧になってきます。

 発注者側に指揮命令権がなく、請負会社側にのみ指揮命令権があるというのが、本来の姿であり、実質的にも法的にも請負です。
 しかし、発注者側に指揮命令権があれば、請負ではありません。実質的に、注文者と請負会社の雇用です。
 もちろん「請負会社」とされる会社が、「請負会社」ではなく「人材派遣会社」ということになれば、人材派遣として合法です。
 もっとも、人材派遣は、業種も制限されますし、その他、かなり厳しい「しばり」があります。

 そこに、「偽装請負」が生じる余地があるのです。

 労働者を派遣社員のように働かせながら、請負契約を装う違法な「偽装請負」については、請負契約会社が「人材派遣会社」の資格を有するようにして、派遣契約への切替えを指導すればよさそうなものです。
 しかし、厚労省は、大手メーカーなど受入企業に、労働者を直接雇用するよう指導するようになりました。偽装請負で働いた期間が派遣で認められる期間を超える場合は、早期の直接雇用を指導するようになりました。
 摘発対象は、キヤノン、クボタなど、そうそうたる会社です。

 それだけ、全世界的な競争が激しいのかも知れません。
 そんな文句をいわれるなら、労働賃金コストの低い外国に工場・拠点をと移すいうことになって、かえって、労働者の首を絞めかねませんが、日本のような進んだ法治国家において、「偽装請負」が認められるはずもありません。
 まずは、直接雇用ではなく、派遣に切り替えという発想をするでしょうね。
 よほど、マスコミの「えじき」となりそうな名の通った大会社でない限り・・・


 ちなみに、請負には、専門制のある業務の請負と、定型業務の請負があります。

 いずれも、アウトソーシングですが、前者は「きらり」と光る技術やノウハウがあるのでしょう。
 それなら、請負料を高額として、派遣先ではなく、自社に利益をもたらすようにすることができます。

 後者は、全くの単純作業で、「偽装請負」の温床となります。
 弊害は、みなさんよくご存じのとおりです。

 話は変わりますが、私の事務所も、過払金返還のための数値入力(計算は、事務所でやります)を外注に出すようになりました。
 全くの単純作業ですから、正確性さえ担保されれば、事務員の「有効利用」という点から「合理的」です。
 ちなみに、1行あたり、消費税込み4円20銭ですが、その会社のホームページの顧客向けでないページに、実際の作業は主婦が「内職」としてして外注している、その「内職料」が、1行あたり60銭です。
 怖い話ですが、1度でも、誤入力のある数値入力されたものを入品して、それが発覚すると、顧客から契約を解除され、「内職」しているものには依頼が来ないようになります。
 今時、外国為替市場でもない限り「銭」の単位は使いませんよね。

西野法律事務所
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