身近な法律問題
借家の更新料の特約の有効性
「平成23年7月15日最高裁判所判決」により、結論が出ました。
金穴全文につきましては「判文」をご覧下さい。
居住用建物の建物の賃借期間は、通常2年です。
更新期ごとに、通常、1か月分程度の「更新料」を支払う約定になっています。
私自身、大学1、2年の時は東京都目黒区、大学3、4年と司法修習生の時は東京都文京区のアパートに住んでいました。トイレ共同、風呂なしでした。
目黒区のアパートは2年で出ましたから更新料なし、文京区のアパートは1回更新料を支払った記憶があります。
あとは、裁判官時代の官舎、ドイツ留学時代のアパートが「借家」「住まい」ですが、いずれも保証金も要りませんし、更新料もありませんでした。
官舎は、当然でしょうが、ドイツのアパート一般がどうかは知りません。
ちなみに、ドイツのアパートは、私自身が、ボンの地元紙に広告を出して、好みの物件をセルフサービスで探しましたから、仲介手数料もいりませんでした。
話を戻して、更新料の支払を約する条項が、消費者契約法10条又は借地借家法30条により向こうになるかどうかが問題となります。
消費者契約法10条2項には、以下の定めがあります。
「 民法 、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項(註。信義則)に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする」
「更新料」が、消費者契約法10条2項に違反するかどうかです。
「更新料は、賃料と共に賃貸人の事業の収益の一部を構成するのが通常であり、その支払により賃借人は円満に物件の使用を継続することができることからすると、更新料は、一般に、賃料の補充ないし前払、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有するものと解するのが相当である」とされています。
「更新料条項についてみると、更新料が、一般に、賃料の補充ないし前払、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有することは、前記に説示したとおりであり、更新料の支払にはおよそ経済的合理性がないなどということはできない。また、一定の地域において、期間満了の際、賃借人が賃貸人に対し更新料の支払をする例が少なからず存することは公知であることや、従前、裁判上の和解手続等においても、更新料条項は公序良俗に反するなどとして、これを当然に無効とする取扱いがされてこなかったことは裁判所に顕著であることからすると、更新料条項が賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載され、賃借人と賃貸人との間に更新料の支払に関する明確な合意が成立している場合に、賃借人と賃貸人との間に、更新料条項に関する情報の質及び量並びに交渉力について、看過し得ないほどの格差が存するとみることもできない」
として、消費者契約法10条2項に違反しないとされています。
昔ならいざしらず、今は、賃貸物件余りで、家主は、空き家が続くことに戦々恐々としていて、空き期間をつくらないために、賃料を泣く泣く下げるということが多くなっています。
また、インターネットで、敷金、更新料の有無などが簡単に調べられるようになっています。更新料が必要でも賃料の安い部屋、更新料が必要でなくても賃料の高い部屋は、簡単に調べられます。
「更新料条項に関する情報の質及び量並びに交渉力について、看過し得ないほどの格差がない」というのは正当でしょう。