身近な法律問題
地番と住居表示
弁護士は、結構、不動産登記簿謄本をとる、あるいは依頼者にとってもらうことがあります。
不動産登記簿は「地番」で管理されています。
地番とは、土地の特定性を示すため、土地の一筆(土地登記簿上で一つの土地とされているもの)ごとにつけた番号のことです。
合筆(二筆以上の土地を一緒にして一筆の土地にすること)すると欠番ができ、や分筆(一筆の土地を数筆の土地に分割すること)が行われると枝番ができることになります。
枝番は、たとえば25番地の土地を分筆するとすると「25番地1」と「25番地2」と、分筆して生じる土地と、分筆されて一部がなくなる土地両方に枝番がつくようです。
依頼者に登記簿謄本をとってきてくださいというと(土地の争いなら、正確を期すために弁護士が自分でとることもありますが、破産事件などでは、自分でとってもらいます。)、結構、依頼者が、法務局から「とれませんでした」との連絡が入ります。依頼者には、何かあったら、法務局から電話するように言っています。
「住居表示に関する法律」 が、昭和37年に制定されています。
これは、先ほどの、合筆による欠番、分筆による枝番、さらに、一筆の土地の上に複数の建物を建てたり、逆に数筆の土地の上に一つの建物を建てることも可能であるため、地番で住所を特定することが困難となってきたため制定されました。
昭和37年までなら、住所をみれは、土地の地番がわかり、登記簿謄本などが簡単に取れたようですが、そう簡単にいかなくなっています。
住居表示は、建物を「町名」「街区符号」「住居番号」で表記することになっています。
まず、「町名」と「街区」は道路、河川や水路などの恒久的な(通常は変動しない)施設が境界になるように定められます。
次に、右まわりに約10メートル~15メートル間隔で区切り、順序よく番号(「基礎番号」といいます)を付けます。そして、各建物の住居番号は、その建物の出入り口が接したところの基礎番号が使われます。
住居表示がなされると、従来、「○○市□□町△△番地」と表記されていた住所が、たとえば「○○市□□X丁目○○番△△号」「○○市□□○○番△△号」というように表記されるようになります
もちろん、住居表示を実施していない地区の住所は、従来どおり不動産地番を使用します。
ただ、住居表示が行われるようになっても、土地を特定するための地番の重要性は変わりません。そのため、登記簿上は現在も「○○市□□町○○番地」という表記がなされているのです。
依頼者に登記簿謄本を取ってもらうことが多いのですが、大阪弁護士会の弁護士が扱うような土地は、原則、住居表示です。
しかし、登記簿をとるためには、土地の地番がわからなければなりません。
どこを見れば土地の地番はわかるのでしょう。
まず、登記簿謄本(いくら古いものでも)をみれば、分筆や合筆がなされていない限り「地番」はわかります。
権利証を見ても「地番」が書いてあります。
あと、あまり知られていいのは、固定資産税・都市計画税の納付通知には、住居表示ではなく「地番」が記載されています。
どれかがあれば、「大阪法務局北出張所」、あるいは、郵便で登記簿謄本をとることは容易です。
他人の土地の登記簿謄本などを、住居表示をもとにしてとるのは難しいですね。
所轄法務局にいけば「ブルーマップ」が備付けられています。
1冊300頁前後の地図なのですが、これをみれば「住居表示」→「地番」あるいは「地番」→「住居表示」が「換算」できます。
必ずしも法務局に行かなければならないということはありません。
大阪弁護士会資料室には、近畿地方の主要な都市の「ブルーマップ」があります。
それを見て、弁護士は登記簿謄本を請求します。
遠方はどうしようもありません。懇意にしている司法書士・土地家屋調査士さんにお願いして取寄せることになります。司法書士・土地家屋調査士さんは、全国的にネットワークがあるようです。
ただ、他人の土地の調査は、コンピュータでやりにくくなりましたね。
コンビュータ化前は、登記簿原本を500円出して閲覧すれば(誰でも閲覧できます)、不動産の履歴すべてがわかりましたが、コンピュータ化後の履歴は、分筆されているかすらわかりません。法務局で、低姿勢に「教えてください」といえば、大抵教えてくれますが・・
コンピュータ化により、とりやすくなった登記簿謄本がある一方、調べにくくなった登記簿もあります。