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身近な法律問題

弁護士費用の相手方に対する請求

訴状を受取った人からの相談で結構多いのは「請求の趣旨」に記載されている「訴訟費用は被告の負担とする」という部分です。

 質問内容は、大抵決まっていて「敗訴すれば、相手方が相手方弁護士に支払った弁護士費用を負担しなければならないのか」、あるいは、逆に「勝てば、お支払いする弁護士費用は相手方から取れるのですか」というものが圧倒的です。

 結論からいえば、原則として「相手方が相手方弁護士に支払った弁護士費用」は「敗訴しても」負担する必要はありません。
 逆にいえば、勝訴したからといって、自分の依頼した弁護士に対する弁護士費用を、相手方に請求できるわけではありません。

 「訴訟費用」とは、印紙や切手、鑑定費用などの実費のことを指します。
 印紙や切手代金を請求する弁護士は「あまり」いないと思います。鑑定費用は、何十万円の単位になりますから、まず、請求されます。

 弁護士費用が請求できる例外は、「不法行為による損害賠償請求訴訟」です。
 典型的なのは、交通事故の損害賠償請求ですね。
 交通事故の場合は必ずといっていいくらい請求します。
 ただ、不貞の相手方に対する慰謝料請求などは「最初からふっかけている」ことが多いのか、請求したりされたりすることは「まれ」です。

 その根拠は、最高裁判所の判決です。
 最高裁判所・昭和44年2月27日の判決は「相手方の故意又は過失によつて自己の権利を侵害された者が損害賠償義務者たる相手方から容易にその履行を受け得ないため、自己の権利擁護上、訴を提起することを余儀なくされた場合においては一般人は弁護士に委任するにあらざれば、十分な訴訟活動をなし得ないのである。そして現在においては、このようなことが通常と認められるからには、訴訟追行を弁護士に委任した場合には、その弁護士費用は、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り、右不法行為と相当因果関係に立つ損害というべきである」としています。

 大抵は、認容額の10%程度です。消費税もつきません。
 満額請求が認められた場合、弁護士に依頼した場合、300万円以下の部分は、着手金と報酬で24%+消費税であり、300万円から3000万円以下の部分は、着手金と報酬で15%+消費税ですから、認容額の10%程度では全く足りません。

 「不法行為による損害賠償請求訴訟」の場合、「自分が負担した弁護士費用」の「一部」を「相手方に負担」してもらえるということです。
 逆に、「不法行為による損害賠償請求訴訟」を提起された場合、「相手方が負担した弁護士費用」の「一部」を「負担」しなければなりません。

 ということで、貸金請求など「債務不履行」については「相手方に弁護士費用の一部を請求することはできない」というのが「常識」でした。

 しかし 「平成24年2月24日 最高裁判所判決」がでました。
「 労働者が、就労中の事故等につき、使用者に対し、その安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償を請求する場合には、不法行為に基づく損害賠償を請求する場合と同様、その労働者において、具体的事案に応じ、損害の発生及びその額のみならず、使用者の安全配慮義務の内容を特定し、かつ、義務違反に該当する事実を主張立証する責任を負うのであって、労働者が主張立証すべき事実は、不法行為に基づく損害賠償を請求する場合とほとんど変わるところがない。そうすると、使用者の安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償請求権は、労働者がこれを訴訟上行使するためには弁護士に委任しなければ十分な訴訟活動をすることが困難な類型に属する請求権であるということができる」という内容です。

 原則として、「債務不履行」については、「相手方に弁護士費用の一部を請求することはできない」のですが、「主張立証すべき事実は、不法行為に基づく損害賠償を請求する場合とほとんど変わるところがない」事件については、「相手方に弁護士費用の一部を請求することができる」となりました。

 上記最高裁判所の事件の控訴審である大阪高等裁判所は、「債務不履行」であるから「弁護士費用は請求できない」としていますから、それが、法律家として当然の常識であったということになります。

 「例外」がふえるたびに、相談者や依頼者に説明する事項が増えて、弁護士も大変です。

西野法律事務所
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