身近な法律問題
消費者契約と弁護士の着手金
「着手金
事件の依頼を受けたときにいただく費用です。
事件の結果にかかわらず、お返しできません。」
これは、例えば「訴訟の場合、第一審の裁判所で、完全に敗訴すれば、成功報酬はもちろん「0」ですが、完全に敗訴したからといって、第一審の最初から最後まで仕事をしる以上、依頼者からの「着手金を返せ」という要求には応じられませんませんとの趣旨です。
理由は、弁護士との契約は「委任契約」であり、弁護士がちゃんと仕事をしている以上、よい結果が得られた、得られないにかかわらず、着手金については、返還要求ができないということです。
また、着手金の返還を認めてしまうと、実質「完全報酬制」と同じとなり、「弁護士が、真実をねじ曲げてでも勝訴しようとする弊害」を生じます。
なお、現在は、一部事件を除いて、着手金と成功報酬の割合が1:2になっていますが、平成8年までは、着手金と成功報酬の割合は1:1でした。
昔は、勝っても負けても、弁護士の報酬は、現在ほどの差がなかったのです。
ところで、仕事の途中で委任契約が解除になった場合はどうでしょう。
依頼者と弁護士への委任契約は「いつでも」「どちらからでも」解除できます。
通常、私も含め、報酬契約書には「乙(註。弁護士)のなした仕事に応じた金額で精算をする」と記載されています。
この定めは当然のことです。
そうしないと、消費者契約法9条により無効になります。
「 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
① 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの」「当該超える部分」
具体的には、どの程度まで仕事をしていたのかということになるかの問題ですが、通常「タイムチャージで精算」ということになると思います。
ちなみに、私のタイムチャージは、1時間1万5750円ですから、受領した金額から、時間×1万5750円を控除した金額をお返しするといういたことになります。
もっとも、それでは、返戻金「0」になるケースがでると思います(訴額がわずかな事件などの場合)、そのときは、お話合いで決めるということになります。もちろん、追加は請求しません。
依頼者が、訴訟・調停の途中で、弁護士を解任するということは考えにくいですが、中途解任した場合は「成功したと仮定した金額」の「みなし報酬」をいただくという条項が、報酬契約書に入っています。
訴訟・調停・示談交渉で、「もう一息で勝てる」という時点で、依頼者が、弁護士を解任して、報酬支払いを免れようとするのを防ぐのが主たる趣旨です。
もちろん、弁護士が、弁護士過誤になるような明らかなミスをして、解任された場合などは例外です。