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身近な法律問題

スパイラル-弁護士の場合

弁護士の間では「6月と12月の事件は筋が悪い」ということがいわれることがあります。

 なぜ、6月と12月というかというと、イソ弁や事務員へのボーナス月で、経費が、他の月に比べ格段にかかる月です。
 お金に蓄えがなければ、新たな事件を受任して、着手金をもらって収入にしなければなりません。

 弁護士は「筋の悪い」事件は嫌います。
 通常「筋の悪い事件」とは、「負け筋」の事件のことです。

 「負け筋」の事件を受任すると、ろくなことはありません。
 「勝ち筋」の事件なら、準備書面を書くのは楽です。ありのまま書けばいいわけですから。これに対し「真け筋」の事件は、準備書面を書くのに一苦労します。そのまま書いたのでは、不利になりますから、何らかの工夫が必要となります。
 また「勝ち筋」の事件は、結局、成功報酬をもらえる確率が高いです。「負け筋」の事件は、成功報酬は期待薄です。もっとも、裁判所のミスがありますから、あまりに期待しすぎるのも、あまり悲観的になるのも考え物ですが・・

 ぎりぎりの事務所経営をしている弁護士は、事務所経費が多く必要なときに、「負け筋」とわかっていても、少し目をつむって、事件を受けてしまうことになります。
 「負け筋」の事件は、手数はかかるは、成功報酬も期待できないはで、いいところがありません。
 自分の労力の負担になり、忙しくなるため、他の事件にも悪影響を及ぼします。つまり、自分の首を自分で絞めてることになりますし、結局、報酬が入るのも少なくなります。最初から「やらなければよかった」ということです。
 こんなことをしていると、収入確保のため、また、「負け筋」の事件を受任し、自分が忙しくなるだけで、目先の着手金以外は入らなくなります。裁判所に対しても悪印象を与え、信用がなくなります。依頼者に、新たな依頼者を紹介してもらえるということはありません。
 悪循環です。

 余裕のある事務所経営をしている弁護士は、事務所経費が多く必要なときでも、「負け筋」の事件に手を出す必要はありません。預金をくずせばいいだけです。
 ゆっくり、「勝ち筋」の事件を選ぶことができます。
 自分の労力は、さほど増えません。収入も、それなりに期待できます。
 余裕のある事務所経営をしている弁護士は、ますます、資金的にも、時間的にも余裕がある事務所経営ができるという好循環になります。裁判所への信用もつきます。依頼者に、新たな依頼者を紹介してもらえることも期待できます。

 また、相談や事件の依頼を受けたとき「勝ち筋」の事件か「負け筋」の事件かを見分けられない人弁護士さんは、時間的、資金的に余裕のある事務所経営をするのは難しいかもしれません。
 自分の依頼者のいうことを「鵜呑み」にしすぎる弁護士さんも多いのです。
 まあ、依頼者を疑いすぎて、依頼者に「客観的証拠」「客観的証拠」と要求しすぎる弁護士も、依頼者にとって考え物で、せっかくの顧客を失う可能性もありますが、結局、「鵜呑み」にしてしまうより「まし」かもしれません。
 弁護士にとって、事件は「他人事(ひとごと)」です。他人事だからこそ、冷静な目で事件をみる余裕が生まれるのです。依頼者とともに本気で悲しみ、依頼者とともに本気で怒り、という弁護士さんは、一見頼もしそうですが、「自分がこれだけわかっているんだから裁判所もわかってくれる」と信じ込んだため、自分の思うようにいかない可能性もあります。
 
 なお、保険会社等の顧問をしていると、当然「負け筋」の事件を受けるわけですが、これは、担当者が先刻ご承知ですから、淡々と処理すればよいだけで、さほどマイナスにはなりません。必要以上に「負ける」と問題ですが・・
 顧問先も、被告となった場合は、多少目をつぶらざるを得ません。
 また、ある程度「言い分」ある被告事件は、和解ねらいで受任するということもあります。裁判所がミスするかもしれませんし・・

 もとにもどりまして、12月は、経費のかかる月なのですが、和解のできる月でもあります。
 依頼者は、一般に、紛争を越年するのをいやがり、今年中に紛争に決着をつけてしまいたいと思うものです。
 ということで、弁護士には、和解による成功報酬が見込めるということになります。
 12月になると、余裕のない事務所経営をしている弁護士から、余裕のある事務所経営をしている弁護士に「例の事件、そろそろ和解できませんか。こちらが、少し妥協しますから」という打診の電話が入るようになります。
 損をするのは、余裕のない事務所経営をしている弁護士に事件を依頼している人ということになります。


 余裕のある弁護士は、ますます余裕ができるという好循環になり、余裕のない弁護士は、ますます余裕がなくなるという悪循環になります。
 弁護士大増員以前は、それでも、弁護士には余裕がありました。
 競争者が少ないですから、多くが「勝ち組」になれていました。
 弁護士大増員以降は、「勝ち組」「負け組」の区別がはっきりとしてくるでしょうし、圧倒的に「負け組」が多くなると思います。

西野法律事務所
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