身近な法律問題
弁護士研修制度の義務化
「弁護士職務基本規程」 7条(研鑽)には「弁護士は、教養を深め、法令及び法律事務に精通するため、研鑽に努める。」と記載されています。
ある意味当然のことです。
もっとも、基本的な法律である「会社法」の根本的改正など、弁護士がキャッチアップするのに一苦労しているというのが現実です。
このところ、いわゆる「六法」クラスの基本的な法律の改正が「目白押し」になっています。
本来の仕事をしながら、新法を「勉強」しなければならないですから、かなり「きつい」ものとなります。
日本弁護士連合会は、機関誌「自由と正義」におきまして、「新法紹介」の欄をもうけ、また、日本弁護士連合会(大がかりなテレビ会議システムによる各単位弁護士会員も聞けます)、大阪弁護士会では「法令及び法律事務に精通のための研鑽 」のために、さまざまな講演活動などをしています。
なお、講演については、ごく低額の有料ではありますが、DVDを貸与して、出席できない忙しい弁護士が講演を聴く便宜をはかっています。
「一生涯勉強」ということですね。
特に、積極的に勉強しようとする意思がない会員が多数にのぼるため、平成19年4月から、 「弁護士の研修義務化」 が実行されました。
一年間に、指定された講座を10単位以上受講しなければなりません。1時間1単位ですので、年間10時間受講することになります。早退・遅刻は受講したことになりません。
出席時間の管理も含め、図書館入館カードを利用し、本人が、いつ、何を受講したか、コンピュータ管理しています。
もっとも「長老」クラスになると、「機械の難しいことはわからん」とおっしゃる方もおられ、仕方なしに、弁護士会事務職員が手で入力しています。
受講の義務化の目的の一つはは、弁護士は、弁護士法72条に定められているとおり、法律事務の取扱を独占しています。このように弁護士が法律事務を独占している以上、弁護士は誰でも、法的需要を満たす一定の質を備える必要があるからです。
もう一つは、あるいは2つの「事情」によります。
1 基礎
最近の弁護士数の増加を考えると、研修対象者に占める新人弁護士の数は飛躍的に増えるので、新人弁護士を対象とした基礎編講座の研修を充実させる必要があります。
我々、年間500人の司法試験合格者のみという体制から、3000人と6倍にものぼっています。
本来なら、合格していない受験者に「大盤振る舞い」をしていますし、司法修習生の期間も短縮されていますから、本来「弁護士になれない」はずの人が、ずいぶん混ざっています。
2 専門
破産法、会社法など基本的な法律の改正の他、基本的ではない法律の改正があります。
「特別法」は、その分野では「基本法」に優先しますから、自分が取扱う「専門」分野(よく取り扱う仕事)について、世の中の需要に応えなければならないということになります。
なお、一定の高齢になり、リタイア、半リタイアしている人には免除規定があります。
ちなみに、通常の研修を受けていれば、半年もかかりません。
私は、比較的「マメ」に出席する方ですから、4月から始まり、8月はじめまでには、悠々クリアです。
もつとも、10単位を越えたからと行って持ち越せません。
逆に、不足の人は、翌年挽回できます。
依頼する際に、弁護士さんに、世間話として、それとなく聞いてみられればいかがでしょう。
受講していない人は「まともに仕事をするつもりがない」「経営でいっぱいで余裕が全くない」いずれかの可能性が高いと考えられますので、敬遠した方がいいのかも知れません。