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身近な法律問題

弁護士の綱紀と懲戒

私は、大阪弁護士会で綱紀委員をしています。もうあと少しで終了です。

 これは、内容は守秘義務があるので、具体的事案は「コラムのテーマ」にはなりようがありません。

 しかし、どのような類型があるか、一般論は言えます。

 まず、圧倒的に多いのが、単なる「クレーマー」「リピーター」です。

 「クレーマー」「リピーター」の「あしらいかた」は各機関により違います。
 裁判所は、応答義務がありますから、印紙が貼っていれば、「どのような事件でも」事件として立件しなければなりません。
 行政官庁は「陳情」とみなして無視して応答しません。
 弁護士会も、どんな「ばかげた」懲戒申立書でも、番号をつけ審議します。印紙代はいりません。

 ですから、裁判所には、行政官庁から相手にされない訴訟マニアが、訴訟を提起することがあります。あまりに訴訟を起こすので、受付係の事務員が、訴訟マニアの名前の「ゴム印」をつくっていることがあるくらいです。

 弁護士会も「一応」決議をします。
 大阪の場合、綱紀委員会が明らかな「リピーター」などの「言いがかり」と判断したものについては、弁護士会嘱託(大阪弁護士会会員の若手・中堅が選任されます)に、本来綱紀委員がしている、いろいろ事務的なことをして、最終的に、綱紀委員会が「審査を求めない」という決議をなして終わりとして、綱紀委員会委員に無駄な労力をかけない仕組みにしています。

 ちなみに、上記類型の事件以外は、綱紀委員のうち主査委員(中堅・ベテラン)が、審問、調査、決議文の起案をして、綱紀委員会の決議がなされます。

 割合からすれば、圧倒的に「クレーマーの数が多い」というのが「私の実感」です。
 ちなみに「言いがかり」と判断したときは、起案するときは、定型的文言ですませて省力化を図ります。

 問題は、本当に会員が「弁護士法」「弁護士職務基本規程」(旧・弁護士倫理)違反の可能性のある事案の場合です。

 「重い刑法犯」など一般社会人としてすら「落第」のケースもあります。
 「非弁護士との提携」も許せません。
 これらは、場合によっては、除名・退会命令の対象となり、事実上、弁護士への復帰の路を閉ざすことにもなりえます。
 なお、退会命令は、法律上は、すぐにでも、どこの単位会へ入会申請できますが、除名は3年間入会申請できません。 もちろん、退会命令や除名になった元弁護士を、受け入れる単位会は事実上ありませんから(自分の単位会で、またやられたら困ります)、事実上の「法曹界追放」です。

 「除名」「退会命令」の次に重いのは、業務停止です。
 業務停止になると、弁護士としての期間中仕事ができないことはもちろん、顧問契約はすべて解約です。致命的なダメージを受けます。

 最も軽いのは「戒告」です。
 これも、いろいろあります。

 「控訴上告期間徒過」「事件放置」などは言い訳できません。

 また、よく目立つのが「ベテラン」「中堅」「新人」をとわず、「自力救済」(賃料を支払わない賃借人の家に別の鍵をかける。管理料を支払わない賃借人の家に管理組合が電気やガスを止める。勝手に塀などをつくって通行妨害をする)について、弁護士がアドバイスした場合です。

 さらに、利害相反といって「依頼者間で利害が対立するようなことは受任できない」ということの違反です。「相手方との事件の協議,及びその程度・方法,現在および過去の受任事件の依頼者を相手方とする事件、相手方からの事件の相談、双方代理」、公平が期待される「相続財産管理人」「破産管財人」「相続財産管理人」が、関係者から依頼をうけて仕事をした場合などです。

 なお、綱紀委員会は、懲戒委員会に事案の審査を求めるかどうかの判断のみで、懲戒の内容には、全くタッチしません。

 ちなみに、処分の有無、懲戒の程度を決めるのは、「懲戒委員会」の仕事です。
 懲戒委員会にも、弁護士の他、裁判官委員、検察官委員が加わり、それらの比重は大きいです。

西野法律事務所
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