身近な法律問題
自明
刑法には、たとえば「人を殺してはならない」「物を盗んではならない」という条文はありません。
ただ、殺人の刑罰はこれだけ、窃盗の刑罰はこれだけと記載されています。
禁止規定がなく、処罰規定だけがあることになります。
これに対し、特別法、たとえば「覚せい剤取締法」は、「覚せい剤を使用してはならない」と禁止規定を定め、「使用したものは10年以下の懲役」と処罰規定を定めています。
覚せい剤などは、旧日本軍が、戦闘のために兵士に使用させたことがあるなど、処罰の対象となる「悪」とは考えられていなかったようです。
戦後も「ヒロポン」として市中に出回り、「司法試験合格のため、ヒロポンを使用して勉強していた」と豪語されておられた元検察官(定年退職)もおられました。
もっとも、本当に「自明」なのか、疑問がないわけではない規定もあります。
刑法92条に「外国に対して侮辱を加える目的で、その国の国旗その他の国章を損壊し、除去し、又は汚損した者は、2年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する」という規定があります。
みなさん知っておられましたか
世界的には「アメリカ国旗」が可燃性に優れているようです。
「アメリカ国旗」とならんで「日本国旗」(日の丸)も、韓国や中国では燃えやすいようです。
これだけを見ていると、他の国の国旗を燃やして何が悪いと考える人が出ても不思議ではありません。
もっとも、刑法92条は、決して日本だけに特殊な条文でありません。
韓国刑法109条には「外国を侮辱する目的でその国の公用に供する国旗又は国章を損傷、除去又は汚辱した者は、2年以下の懲役又は禁錮又は300万ウォン以下の罰金に処する」と規定されています。
外交関係悪化させるような行為は、通常「悪いことが」「自明」だからです。