身近な法律問題
相対的真実の探求
少し難しい話になりますが、民事訴訟の場合、裁判所に「絶対的真実の探求」は要求されていません。
客観的真実と合致する裁判が正しく、客観的真実と違えば誤った裁判かといえば、そうとも限らないのです。
客観的真実と合致する裁判が正しく、客観的真実と違えば誤った裁判かといえば、そうとも限らないのです。
例えば、ある人が、親戚でもない他人に100万円を手渡しで貸して、借用証もとっておらず、相手方が「借りていない」と主張した場合を考えてみましょう。
訴訟を提起するくらいですから、真実は貸しているのかも知れません。
しかし、裁判所は、いくら原告が本人尋問で「貸した、貸した、間違いがない」と繰返したところで、確たる証拠がない場合、借用証もとらずに100万円を手渡しで貸すということは通常ありえない、本来とるべき借用証をとらないのでは敗訴するのは「やむを得ない」として原告が敗訴になります。
本当は貸していたという場合、つまり客観的真実に反していても、原告敗訴の裁判は正しいのです。
間違った裁判というのは、客観的真実と異なった裁判ではありません。
証拠関係から本来導き出されるべき結論と異なった裁判が、間違った裁判ということになります。