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身近な法律問題

動機の重要性

たとえば、殺人事件があったとします。

 これはみなさんご存じのとおり、殺人の動機がある者が疑われることになります。

 怨恨による殺人であれば、被害者に強い恨みをいだいていた者が疑われます。また、殺人によって利益を得る者も疑われます。
 まず配偶者・親子などの近親者や、交際の相手方、被害者から借金をしていた人、巨額の生命保険の受取人などです。


 強盗殺人などの場合も、一般的には、犯人探しは困難です。
 ただ、死刑も十分考えられる重大事件のため、遺留品、凶器、聞込みなど捜査は念入りになされます。同種前科など、同様の手口での犯行をしている者ならともかく、全くの初犯でしたら、捜査は難しくなります。

「通り魔」的な犯行の場合は、殺人の動機のある者を探すのは困難ですから、遺留品、凶器、聞込みなどから犯人を特定するほかなく、これは一般的にいって、かなり難しいといえます。


 ということですが、民事訴訟においても、動機の有無は重要になります。

 当事者間で言い分が食い違うとします。

 ある事柄について動機がない者と、ある事柄について動機がある者が対立したとします。
 通常は、動機がない者が正直なことを述べていて、動機のある者が嘘を言っていると経験則上判断されます。

典型的なのは、全く利害関係のない証人と、利害関係のある当事者と、どちらが信用性があるかということを考えてみましょう。

 たとえば、交通事故にたまたま居合わせた証人が供述したとします。全く利害がないのですから、偽証罪の危険を冒してまで嘘をつく動機が通常ありません。
 当事者は、勝訴・敗訴に重大な利害関係を持っていますから、嘘をつく動機があります。
 一般的に、信用できるのは、全く利害関係のない証人の方です。もっとも、関心がないため、記憶が曖昧という可能性がありますが・・・

 また、訴訟になっているわけではありませんが、たとえば、回転ドア設置会社とビル会社の言い分が食違い、回転ドア設置会社は「ビル会社から回転速度を通常の速度より上げてほしいと依頼された」と主張し、ビル会社は「回転ドア設置会社が勝手にやったことで知らない」と主張したとします。
 回転ドア設置会社には、デフォルトの回転速度にしておけば一番楽、回転速度を上げるのは面倒なことなので、誰からも何も依頼されていないのに勝手に回転速度はあげることは通常考えられません。つまり、動機がないのです。
 これに対して、ビル会社には、客の回転率を高くするため、回転ドアの速度をあげるという動機があり、回転ドア設置会社に依頼するという動機があります。
 他に何も証拠がなければ、通常は、動機のない回転ドア設置会社の言い分が正しいと認定されるのが普通です。
 なお、これはフィクションであり実在の事件とは関係がありません。

西野法律事務所
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