身近な法律問題
法律家の文章
「一文が長すぎる」そのため「主語と述語の対応がわからなくなっている」という批判はありますね。
ワープロソフトに放り込むと、「文章が長い」と「ダメ出し」されてしまいます。
ただ、裁判官、検察官、弁護士の書く文章は、裁判官、検察官、弁護士、あとせいぜい学者が読むくらいで、みんな読み慣れていますから、何の問題も生じません。
弁護士の書く文章のターゲットは裁判官です。あわせて、相手方弁護士です。素人である自分の依頼者、ましてや相手の依頼者ではありません。
検察官の書くターゲットは裁判官と弁護士、裁判官の書く判決などのターゲットは弁護士と検察官、あと上訴審の裁判官です。
依頼者などの素人には、弁護士など専門家に翻訳してもらえばいいので、全く問題はありません。
別に、日本の法律家が書く文章だけが長いわけではありません。ドイツの法律家の書く文章も長いですね。連邦憲法裁判所の判決文などは、文章は長いわ、言葉が難解な言葉が使ってあるわで、真剣に読もうとすると「頭痛」がします。
あと、日本の法律家が書く文章は「くどい」と言われます。
「これ」「それ」「あれ」「この」「その」「あの」などの指示代名詞はあまり使いません。
あくまで、正確性を期するために、同じ言葉を繰返します。
別に、ワープロが普及して「コピペ」が便利になったからではありません。
私が司法修習生になった昭和53年の年末に、東芝が「JW-10」というワープロを630万円で発売したそうです。ドイツ留学から帰った昭和57年にも、一般的ではありませんでした。
ワープロ普及のずっと以前から「正確性を期するため」「くどい」文章が書かれていました。
日本の法律家が、好んで書く「二重否定」(例えば「○○でないわけでもない」など)も、一般に、好ましくないと言われています。
これがないと、判決も、訴状・答弁書・準備書面も、起訴状・冒頭陳述書・論告・弁論要旨は書きにくいでしょうね。
ここでおもしろいのは、私の依頼者は、相手方の依頼者の書いている準備書面が「難解」と言い、私の書いている準備書面は「わかりやすい」と言うのです。
私の依頼者なら、内容は十分理解していますから「わかりやすい」のですよね。
相手方依頼者も、同じよう理屈で、私の準備書面が「難解」と言っているのではないでしょうか。
通常、法律家になるためには、大学入試で文章を書き、司法試験で論文を書き、それらに合格していて、さらに実務で無難に仕事をしているわけですから、少なくとも、大学教授や法律家など専門家からみると「おかしな文章」ではないのでしょう。「おかしい文章」を書いていては、試験に合格しませんし、実務で淘汰されてしまいます。
ただ、刑事は、裁判員制度の導入があって、一般の人にもわかりやすい文章を書くようになってきているようです。
涙ぐましい努力ですね。
特に、刑事の場合「一般受け」する文章など必要なかったわけですから。
民事は、私が引退するまでに、陪審制は導入されないでしょう。
私は、涙ぐましい努力をすることなく、従前どおりの文章を書いていればよいことになります。
ここまで「無難に」やってきたのですから、「従前どおり」やっていればいいわけで、あまり「改革」は必要ありません。
もっとも、このホームページの文章は、多少なりとも、一般人受けのするように努力して書いています。
どれほど、奏功しているかどうかはわかりませんが・・