身近な法律問題
一応確からしい
「一応確からしい」は、法律家が、用いる「立派な」法律用語です。
広い意味の「証明」には、以下のものがあるとされています。
① 最高度の真実蓋然性
合理的疑いを入れない 90%~99%
② 高度の真実蓋然性
証拠の優越による証明 70%~90%
③ 軽度の真実蓋然性
疎明 55%~70%
「何%」というのは、あくまで目安です。
なお、訴訟では、100%はありえません。現実に見た人は、裁判官になれません(法廷等の秩序維持に関する法律は例外です)。
また、50%以下では、完全に負けです。
①は、被告人を有罪とするために必要な証明です。
②は、民事訴訟の事実認定がすることのできる証明の程度です。
③は、疎明と呼ばれ、保全手続き(仮差押え、仮処分)や破産手続きで、よく用いられる、低くてよい「証明」の程度です。
保全決定などでは「○○と一応認められる」と書かれています。
「消えた年金」の場合、「証明」まで要求することは酷であるから、「疎明」でいいということになったんでしょうが、「疎明があった場合、年金を支給する」では、難しすぎると考えられたのか、「一応確からしい」という用語を用いたのでしょうが「一応」があいまいだという批判を受けることになったのでしょう。
領収証などによる証明(70%~90%)はいらないから、それ以外の疎明(55%~70%)でいいよということでしょう。
もっとも、人間のする計測不可能なことについて、もっともらしく「%」をつけるということは、個人的には好きではありませんが、何もないと話にならないので、「一応」書いておきます。
なお、刑事事件で無罪になりながら、民事事件で損害賠償が認められることがあります。
刑事事件では「合理的疑いを入れない 90%~99%」の証明が必要なため無罪になったが、民事事件では「証拠の優越による証明 70%~90%」の証明があったため、損害賠償が認められたということになります。
これも、ある意味で、よくあることです。