身近な法律問題
判決のケアレスミスと更正決定
控訴をしなければ是正されないのでしょうか。
民事訴訟法257条には「判決に計算違い、誤記その他これらに類する明白な誤りがあるときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、いつでも更正決定をすることができる」と定められています。
ちなみに、判決だけではなく、決定・命令にも準用されています。
この手のケアレスミスは珍しくありません。
まず、元々裁判官の書く判決・決定の量が半端ではありません。ミスも多くなります。
また、昔は和文タイプでしたから(私が退官した平成2年ころは、原則として和文タイプ)、書記官とタイピストが読み合わせをしていました。
判決内容にケアレスミスがあれば書記官が、文字の誤記があれば和文タイピストが気付きます。なお、和文タイピストの段階で、文字の誤記は、あらかた訂正されていました。
なお、計算式は、誰もチェックしませんから、結構数字の間違いは当時からありました。
今は、裁判官が、ワープロ、表計算で判決を直接書きますから、第三者のチェックが入らず、また、自分のミスに自分は気付きにくいものですから、自然にケアレスミスが多くなってきました。
なお、昔のコラムで書いたのですが、最高裁判所は、最高裁判所調査官(裁判官)が起案しますが、高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所は、裁判官自らが書きます。書記官、事務官は書いてはくれません。助けてもくれません。
また、請求の一部の判断漏れがあることがあります。
通常は少ないのですが、訴状の段階ではなく、訴訟の途中で追加になっいてるとき見落としたりします。
この場合は、控訴をしなければ是正されないのでしょうか。
民事訴訟法258条には「裁判所が請求の一部について裁判を脱漏したときは、訴訟は、その請求の部分については、なおその裁判所に係属する」と定められています。
もともと、この手のケアレスミス、とくに誤記は珍しくも何ともなかったのですが、最近とみに増えてきています。
裁判官が忙しくなってきたのか、裁判官の質が落ちてきたのか、裁判官が忙しくなり、かつ、裁判官の質が落ちてきたのが?
また、裁判官の判決に誤記が多いのは、高等裁判所の判決を見ればわかります。
高等裁判所は、地方裁判所第一審の事件の判決について「引用」できるのですが(例えば「1項ないし3項は、原判決判示のとおりであるからこれを引用する」などと記載します)、ただ、誤字のチェックは十分しているようで、「何頁何行目の『・・』を『・・』と改める」などの記載が、ずらりと並び、一見すると「正誤表」のようです。
弁護士は、もちろん他人様(ひとさま)のことはいえません。
人名の誤記、番号の誤記、事件名の誤記なと、誤記だらけの訴状や準備書面をよくみます。
裁判官以上に時間がありません。
ただ、本当の単なるケアレスミスは訴訟上マイナスになる可能性は少ないです。
そうではない、事実の調査ミス、事情聴取ミスは致命的です。