身近な法律問題
弁護士のマッチングサイト
「マッチング・サイト」とは、仕事を頼みたい個人や会社と、顧客を探している会社などとの「商談」の場を提供するサイトのことをいいます。
一見すると弁護士にも応用できそうですね。
マッチング・サイトをつくっておき、弁護士に依頼したい人と、事件を受任したい弁護士との「商談」の場を提供するのです。
通常、a 弁護士のプロフィールの閲覧→b 相談概要のフォームへの記入→c 弁護士の閲覧→d 見積り情報の交換→e 利用者による弁護士の選定→f 法律相談・委任という一連の流れでしょう。
ただ、通常のビジネスと弁護士の場合とは大きく異なる点があります。
弁護士は、弁護士の独立を要請されているため、弁護士以外の者と提携すること(金銭の授受をともなうもの)は固く禁じられているからです。
つまり、弁護士でない者が、弁護士を紹介して金をとったりすると弁護士法違反として刑罰を受けますし、弁護士が、紹介してもらったことに対する対価を弁護士以外に支払ったりすると、除名、あるいは、それに準じる重い懲戒処分を受けるということです。
詳しく説明いますと、弁護士法27条には「弁護士は、第72条ないし第74条の規定に違反する者から事件の周旋を受け、又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない」と規定され、72条には「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない」と定められています。
整理屋などの業者と組んで、多重債務者の相談にのり、実際は活動せずに、整理屋に仕事をまかせ、高額の手数料や報酬を受け取ったり、弁護士資格のない者からの業務の斡旋を受けたりすると、弁護士法違反として、刑事罰を受けます。
また、これを「非弁提携」といい、懲戒手続きにはいると、まず間違いなく、軽くて上限2年の業務停止、通常、除名されます。
また、弁護士職務基本規程12条によれば「弁護士は、その職務に関する報酬を弁護士又は弁護士法人でない者との間で分配してはならない」、同13条によれば「弁護士は、依頼者の紹介を受けたことに対する謝礼その他の対価を支払ってはならない」「弁護士は、依頼者の紹介をしたことに対する謝礼その他の対価を受け取ってはならない」と規定されています。
弁護士・弁護士法人以外が運営主体となっているWEB サイトにおいて、利用者に対し弁護士を紹介したり、法律相談に応じることを目的として、利用者からは紹介料を、弁護士からは登録料・紹介料等を徴収することになれば、明らかに弁護士法第72条、同法第27条に違反することになります。
WEB サイト事業者と弁護士又は弁護士法人との間では、周旋の対価を授受してはならなりませんし、金員の授受は、実費、および、客観的かつ定額的に定められるわずかの広告料の範囲を超えてはならず、またWEB サイト事業者との間で弁護士報酬の分配と見られるような提携関係があってはならないことになります。
つまり、弁護士のマッチングサイトに限っていえば、弁護士・弁護士法人以外(弁護士が代表者となっている、弁護士法人以外の法人も同じです)が運営主体となっているWEBサイト運営は、依頼者から金銭は一切取れませんし、運営するための実費、および、客観的かつ定額的に定められるわずかの広告料以上の金銭を弁護士から得てはならないのですから、収益ビジネスとして成り立たちえず(信託銀行などが無償で行なう顧客サービスや、IT企業などが、自社の「名前」を世の中に知ってもらうための宣伝するためだけの目的だけならかまいません)、収益ビジネスとして成り立つようにしようとすれば、弁護士法違反の懲役刑がまっているということになります。
なお、弁護士が、国民の基本的人権の擁護と社会正義の実現を職責としているのに対し、税理士、司法書士、弁理士、土地家屋調査士、行政書士は、行政機関の補助職的な性格が強いため、独立の要請は強くありません。提携も問題ありません。
それら隣接仕業との抱き合わせのサイトをつくり(税理士、司法書士などだけでは効果が低いですから、不採算の弁護士も、ショーケースに並べておく)、隣接仕業関係で利益を稼ぎだし、弁護士関係では一切利益を得ないというマッチングサイトは、ある意味「合理的」です。税理士さん、司法書士さんには気の毒ですが・・