身近な法律問題
他の弁護士が取り扱っている事件
他の弁護士が取り扱っている事件について「セカンドオピニオン」の相談を受けることがあります。
まず、相談者に、現在の弁護士に対する「不満」や「疑問」があります。
記録を読ませてもらえば、たいていの場合は相談者の「杞憂」で、現在の弁護士は「ちゃんと」仕事をしていることがわかり、「現在の弁護士さんに依頼しつづけて心配ないと思います」ということが多いです。
また「この点についての主張・立証を弁護士さんにお願いされたらいかがですか」と補足することもあります。
「これは、相談者が不信になるのも無理はない」という事件については、「私なら、こういう主張し、こういう立証をします」と答えます。
どんな事件でもそうですが、「こうすれば勝てます」とは言いません。
それで、相談者に納得がいけば、「きれいに、前の弁護士さんときれいに手を切ってくれば、梯子をはずすようなまねはしません」と言うようにしています。
結構デリケートな問題があり、私は特に「君子」でもありませんが、「君子危うきに近寄らず」という基本姿勢であたるようにしています。
弁護士職務基本規程が日本弁護士連合会により定められています。
厳密には異なりますが、昔の「弁護士倫理」にかわるものです。
弁護士職務基本規程71条には以下の規定があります。
「弁護士は、信義に反して他の弁護士等を不利益に陥れてはならない」
弁護士職務基本規程72条には以下の規定があります。
「弁護士は、他の弁護士等が受任している事件に不当に介入してはならない」
他の弁護士が取扱い中の事件について、「不当に」「とやかくいうのは」「おかしい」となっています。
ですから、よほど、意見の相違がない限り、他の弁護士が取扱い中の事件の受任はしません。
弁護士弁護士職務基本規程29条には以下の規定があります。
「2 弁護士は、事件について、依頼者に有利な結果となることを請け合い、又は保証してはならない。
3 弁護士は、依頼者の期待する結果が得られる見込みがないにもかかわらず、その見込みがあるように装って事件を受任してはならない」
なお、どんな事件でもそうですが、「勝てます」とは言えないのは、当たり前のことです。
「勝てます」と言う弁護士さんがいたとしたら、疑ってかかる方がいいでしょう。
訴訟ともなれば、どんな証拠が相手方飛び出すかも知れません。
自分が委任を受けている事件について、他の弁護士さんに依頼したいという希望があれば「どうぞ」というしかありません。
弁護士弁護士職務基本規程40条には以下の規定があります。
「弁護士は、受任している事件について、依頼者が他の弁護士又は弁護士法人に依頼をしようとするときは、正当な理由なく、これを妨げてはならない」
私自身、自分が委任を受けている事件について、他の弁護士さんに依頼したいということで記録の返還を求められたり、着手金の精算を求められたと言うことは「今のところ」ありません。
もちろん、第1審で敗訴して「控訴しません」と言った依頼者が、別の弁護士に依頼して控訴している可能性はありますが、こればかりは分かりません。
こちらが辞任して「着手金の精算」したことはありますが、依頼者から解任されて「着手金の精算」したことはないという程度です。
辞任するとき、依頼者に返却すべき着手金はどれくらいになるでしょう。
通常、報酬契約書には「乙(註。弁護士)のなした仕事に応じた金額で精算をする」と記載されています。
この定めは当然のことです。
そうしないと、消費者契約法9条により無効になります。
「 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
① 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの」「当該超える部分」
具体的には、どの程度まで仕事をしていたのかということになるかの問題ですが、通常「タイムチャージで精算」ということになると思います。
ちなみに、私のタイムチャージは、1時間1万5750円ですから、受領した金額から、時間×1万5750円を控除した金額をお返しするといういたことになるでしょう。
ただ、依頼者が、その弁護士との行き違いがあり、別の弁護士に相談に行き、その弁護士から「私なら勝てる見込み」というよう説明をされてしまうと、依頼者としては、依頼中の弁護士を断わって、別の弁護士に頼もうということになるでしょう。
弁護士数の増加により、弁護士どおしでの「事件の取合い」ということも起きるでしょう。
私が知らないだけで、既に「起きている」かも知れません。
弁護士弁護士職務基本規程71条「弁護士は、信義に反して他の弁護士等を不利益に陥れてはならない」、弁護士弁護士職務基本規程72条「弁護士は、他の弁護士等が受任して
いる事件に不当に介入してはならない」、弁護士弁護士職務基本規程29条2項「 弁護士は、事件について、依頼者に有利な結果となることを請け合い、又は保証してはならない」という規定にさえ触れなければ問題ありませんが、そうでない場合は「問題」です。