身近な法律問題
年齢と進路
私が、裁判官に任官していた当時、裁判官になれるのは、30歳以下が目途でした。
一番若い裁判官は24歳(当時)でしたから、6年遅れていることになります。
裁判官から弁護士への転職経験者として、司法修習生から、「裁判官と弁護士のどちらがよいか」と聞かれることがありました。
基本的には「裁判官の方がいいよ」と言っていました。
「裁判官から弁護士にかわるのは難しくない」が「弁護士から裁判官に変わるのは難しい」、本人の向き・不向きなどは、わかるわけはないので、いずれが向いているにせよ、最初「裁判官」からのスタートするのは悪くないという考えからです。
ただ、相談する人が、30歳に近いときは「生涯の収入も考えてください」と言っていました。
裁判官は、65歳が定年です。
たとえ、たとえ、もっと働くだけの体力・知力があっても、65歳で退官しなければなりません。
24歳で任官した人は41年、30歳で任官した人は35年働けます。
このとき、誤解している人が多いのですが、6年間の収入の差というのは、判事補の最初の6年の収入の合計ではなく、判事の最後の6年の収入の合計ということです。
24歳で裁判官になった人と、30歳で裁判官になった人との収入差は、一見、最初の6年の3000万円程度の差のように見えますが、実際は、最後の6年の1億数千万円の差が生涯賃金の差になります。
これに対し、弁護士なら、定年はありませんから、働くだけの体力・知力がある限り、働けます。
弁護士の場合、「最後の何年」という計算はしませんし、裁判官と違って、最初は所得がそれほどでもなく、所得のピーク時があり、その後、所得が下がっていって引退ですから、自分のがんばり次第で、たとえ弁護士になるのが若干遅れたとしても、取り戻せる可能性があります。
そもそも、裁判官と異なり、自分の働き次第で収入を増やすことが可能なのです。
もっとも、弁護士大増員時代になって、司法修習生からの、そのような相談は全くなくなりました。
弁護士としての収入は、これからは一部の人を除いて多くを望めませんから、裁判官になれるだけの年齢・成績の人なら、裁判官になった方がいい、裁判官になったら、途中で弁護士になるより定年まで働いた方がいい、こんなことは今の司法修習生なら誰でもわかっていることです。
ちなみに、私が任官した昭和55年には、検察官志望者が圧倒的に少なかったため、検察官になろうと思えば、希望者は、誰でも検察官になれました。検察官任官予定者が、最終の試験(2回試験)の刑事関係のに不合格(合格留保)になったという、今からすれば「笑い話」のような実話もありました。
今は、検察官になろうと思っても、一定の年齢制限があり、一定の成績を修めなければならなくなったようです。
検察官といえば、中途退職者が多いというのが、通り相場だったのですが、中途退職者も激減しているようです。