身近な法律問題
相手が弁護士に相談する前に
なかには、「言われなくてもそうします」という事件もあるのですが、そうでない場合も多々あります。
といいますのは、こちらが弁護士に依頼すれば、相手も弁護士に相談する可能性が大きいということです。
相手が弁護士に相談する前なら、隠し録音などで証拠固めをできるはずのところを、相手が弁護士に相談すると、「隠し録音される可能性があるから一切しゃべるな」というアドバイスを受けるかも知れません。
相手が弁護士に相談する前なら、預金の仮差押えができるはずのところ、相手が弁護士に相談すると、「預金を最寄りの金融機関から移しておくように」というアドバイスを受けて、仮差押え失敗ということになるかも知れません。
「自宅の名義を第三者に移しておいたら」とアドバイスする弁護士さんはあまりいないかと思いますが、長年連れ添った配偶者への税金のかからない自宅の贈与なら、弁護士のアドバイスとしても許容範囲内かも知れません。
時効にかかっている可能性のある債権の場合、一部でも払ってもらう、あるいは、隠し録音などで債務を承認させる内容のテープをとるという手段をとる前に、相手が弁護士に相談して、先手を打って、「時効を援用する」という内容証明が来てしまうかも知れません。
隣地所有者が、20年以上越境して建物をたてているような場合、相手が弁護士に相談してしまうと「時効だから土地は自分のものになっている」とアドバイスするでしょうから、話はそこで終わってしまいます。
あえて、弁護士がついていることを知らせず、土地家屋調査士さんに依頼するなどして「今度建物をたてるときは、この線をこえて建物を建てない」という念書をとっておくという手もあります。
相談者や依頼者のいうことを「はいはい」と実行する弁護士さんが、「いい弁護士」とは限らないことだけを頭においておかれた方がよいでしょう。