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身近な法律問題

公益通報者保護法

公益通報者保護法」 が、平成18年4月1日から施行されています。
 内部告発者に対する解雇や減給その他不利益な取り扱いを無効としたものです。

 「車のリコール隠し」「耐震設計の偽装」「粉飾決算」「産地や賞味期限等食品の偽装表示」など、内部告発により、悪事が露見するケースが増えています。
 なかには、司法書士事務所職員の、司法書士の「弁護士法違反」の内部告発もありました。

 きれい事をいえば、「社会正義のためにこうした不正を告発しようとすれば、解雇さらに次の勤め口も困難になるという不利益も覚悟しなければならないというのは理不尽である」「他方で、ただのデマや噂を、悪意をもって「通報」されたのでは大きな損害が発生する」「ます。そこで、どんな内容の通報をどういう形で行えば、通報した労働者を保護するのかという、基本的なルール」が定められることになったということになります。

 まず、通報者は、正社員、派遣社員、取引先社員も含みます。

 次に、公益通報の対象となる法律ですが、 「公益通報の対象となる法律一覧」のとおりです。

 主だったところ「刑法」の他に「食品衛生法」「証券取引法」「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)」「大気汚染防止法」「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」「個人情報の保護に関する法律」「その他政令で定める法律」などです。

 ちゃんと「弁護士法」「司法書士法」も入っています。
 司法書士事務所勤務の従業員が、司法書士が140万円以上の交渉をしていれば、弁護士法違反ですから「内部告発」しても、不利益はないことになります。

 ただ、法律の性格から、業務とは無関係な個人の私生活上の犯罪については、本法の対象外となっていることにご注意ください。もちろん、不正な目的(ゆすり目的・嫌がらせ目的等)ではなく、あくまで公益のための通報であることが大前提です。

 また、犯罪行為などが実際に行われた、または、まさに行われようとしている(誰が・いつ・どこでなど確定していれば、問題ありません)なら、公益通報の対象となります。

 ただ、「保護」の中身が問題ですね。
 「解雇無効」「不利益扱いの禁止」です。「解雇」ははっきりしてますが(派遣社員についてなされる、派遣契約の解除)、何が不利益(一応、降格・左遷・減給・嫌がらせ・退職年金の差止めなどとされていますが・・)、どこが保護してくれるのか、わかりませんよね。これでは「安心して」「内部告発」でません。

 通報先は「内部通報」「行政機関」「その他外部」とにっています。
1 企業
 各企業では、通報のための相談窓口やヘルプラインを設置したり、公正性を確保するため弁護士など外部への委託も進めています。
 もつとも、弁護士が、通報者の氏名を会社に連絡するようなことがあっては、全く問題外としかいいようがないでしょう。

2 行政機関
  当該不正な法令違反等に対して処分する権限のある行政機関です。
 「証券取引法」違反を「農水省」に連絡しても無駄です。
 行政機関への通告は、単なる伝聞などでは不十分です。
 その違反があると信ずるに足りる相当の理由(真実相当性)があることが要件となっています。客観的に誤っていても問題ないのですが、少なくとも、信じたことに合理的な理由がなければなりません。
3 その他外部への通報
 通常、消費者団体やマスコミでしょうね。
 ただしこれには、真実相当性が必要であるだけでなく、次のいずれかのケースに限って認められます。
 a 過去に解雇された者がいるなど、通報すれば不利益を受けるおそれがある。
 b 事業所ぐるみでの違反など、内部通報では証拠隠滅のおそれがある。
 c 上司から口止めされるなど、正当な理由もなく公益通報しないことを要求された。
 d 文書やメールで内部通報して、20日たっても調査開始の通知がない。あるいは、正当な理由もなく調査せずに放置する。
 e 安全性に問題のある食品が出回るなど、国民の生命・身体に危害が発生する窮迫した危険がある。


 ただ、せっかくの法律ですが、現実問題として、現職にとどまったまま、公益通報することは難しいでしょうね。
 まず、同僚上司の目がきびしくなるでしょう。
 次に、下手をすれば、業績悪化、あげくの果てには倒産ということもありえます。
 関係なければ「知ったこっちゃない」ということです。ライバル企業に転職していりばなおさらのこと。です。

 ちなみに、海上保安官による、尖閣ビデオのユーチューブへのアップの事案は、公益通報者保護法では保護されません。

西野法律事務所
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