身近な法律問題
手形
景気低迷で企業同士の商取引が低調だったことに加え、電子債権(電子手形)の導入で手形離れが一段と進んだとみられるそうです。
昔は、手形が多かったですね。
企業間の取引では代金の支払いが数カ月先になることが多く、買手の企業が手形を発行すれば、売手は受け取った手形を銀行で換金したり別の企業に売ったりして、早期に現金を得られるという仕組みです。
手形訴訟という制度があります。以下の特徴があります。
1 反訴はできないません(民事訴訟法351条)。
2 証拠方法は書証に限ります(民事訴訟法352条1項)。
3 書証の中でも文書提出命令や文書の送付嘱託は認められないため、証拠として提出できるのは当事者自身が持つ書証(つまり「手形」本体)のみです。
但し、振出・裏書きなどの事実が争われたとき、事実確認のために当事者尋問をすることは認められる場合があります。
4 本案判決は手形判決と記載されます(民事訴訟規則216条)。
5 判決に対して控訴はできません(民事訴訟法356条)。
6 控訴の代わりに、判決をした裁判所に異議申立てができます(民事訴訟法357条)。
7 請求を認容した場合、判決には必ず仮執行宣言を付けなければなりません(民事訴訟法259条2項)。
8 原告はいつでも通常訴訟への移行を申し立てることができます(民事訴訟法353条民事訴訟法1項)。
手形訴訟や小切手訴訟は激減しています。
手形訴訟や小切手訴訟を提起してみると、その事件番号の小ささに「びっくり」することがあります。
やはり、流通量が減ったことも原因でしょう。
ただ、手形を「よく見る」のはある程度の規模の法人の破産申立事件の受任をしたときです。
手形不渡予定日を「Xディ」として、逆算して、資金繰りを含めた破産申立準備にかかります。
普通は、5日、15日、25日などと、規則正しく並んでいるのですが、手形交付の相手方の都合により、イレギュラーな日に大きな金額の手形の満期があったりします。
資金回収の予定と、手形満期を含む支出の予定、従業員の給料日などをにらみながら、「最善の日」を「Xディ」と定めます。
売掛金の回収(手形の割引はできません。現金受領のみです)による資金が最大になったタイミングで、弁護士費用を支払い、手形不渡りの前日くらいに債権者への受任通知を出し、手形不渡りの前日に従業員に解雇を言渡し、未払い賃金を支払います。