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雑記帳

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官報電子化法が成立 「デジタル版」が正本

 法令の公布や企業情報の公告を行う「官報」を電子化する法律が、令和5年12月6日、参院本会議で賛成多数で可決、成立しました。
 令和7年度に施行される予定です。

 法案の柱は、インターネット版(デジタル版)を「正本」と位置付けることで、官報の印刷や配送など行政事務の省力化が期待でき、将来的には紙の官報の廃止も視野に入れています。

 官報は明治16年に創刊しました。
 新たに制定した法令の公布や裁判所の公告、企業の合併情報などが掲載されています。
 平成11年からインターネットで無料で閲覧できるようになり、令和5年1月には登記申請などの行政手続きのために提出する官報が電子版も認められるようになりました。新法は、令和7年までに施行され、施行後は紙の官報は法的な効力を失います。

 内閣府によりますと、紙の官報は定期購読者向けに約5500部発行しているほか、官報を発行している東京・虎ノ門の国立印刷局の掲示板に、平日の午前8時半に貼り出されているそうです。

官報

 官報をご覧になった方があるでしょうか。
 官報は、国の機関誌で、新たに公布された法律など、国が国民に告知する必要がある事項について記載されています。
 本誌は、日曜と祝祭日を除いて毎日発刊されています。号外も、ほぼ毎日発刊されています。号外がほぼ毎日いうのも奇妙なことですが、官報の本誌には枚数制限があるため、それをこえると号外となります。また、官報政府調達公告版(随時)、官報資料版(毎週水曜日)、官報目録(月1回)が発行されます。
 官報は、定期購読することもできますし、政府刊行物センターなどで誰でも買うことが出来ます。

 なお、一般の書店で購入できる店は多くありません。
 しかし、各都道府県に、必ず一店舗は、「官報販売所」 があります。
 また、そこでは、「無料で」官報を閲覧できるスペースがあります。
 和歌山県の場合なら、和歌山県官報販売所店です。

 官報記載事項のうち主たるものは以下のとおりです。
 府令・省令 総理府令・各省の省令等
 規則 各委員会の規則
 告示 各省庁の告示「基準・規則」の改正
 国会事項 議事日程・議案関係事項等
 人事異動 各省庁の人事異動
 叙位・叙勲・褒章 叙位・春、秋の叙勲及び褒章等
 官庁報告 国家試験(司法試験・情報処理・会計士など)
 資料 閣議決定、各省庁の報告及び資料・速報など
 公告 各省庁(入札・落札)、裁判所(公示催告・除権判決・破産・免責・会社更生・再生等)、 特殊法人等(入札・ディスクロージャー等)、地方公共団体(地方債償還・行旅死亡人等)及び 会社の行う法定公告等

 法律などは、公布がなければ発効されません。
 公布とは「成立した成文の法を公表して、一般国民が知ることのできる状態に置くことをいい、法令が現実に拘束力を発生するためには、一般に公布の要件をみたすことが必要」とされています。
 ですから、各都道府県に1カ所は、官報を無料で閲覧できるところをおき、そこで、閲覧できるようになってから、はじめて、当該都道府県で法律などの効力が発生します。
 刑法などに新しい罪ができたり、ある刑の罰が重くなった場合など、各都道府県の官報を無料で閲覧できるところにおかれるまでは、当該県では罰せられたり、刑が重くなったりすることはありません。
 北海道なんかひどい話ですね。また、和歌山県の最北端にある和歌山市で官報が読める状態になったから、南端の新宮市などで「知ったものと見なす」というのも、あまり常識的ではありません。
 もっとも、いまは、インターネットで閲覧できるようになっています。

 いまはどうなっているか知りませんが、私が裁判官をしているときは、必ず官報が各裁判官に回覧されていました。裁判官の机はかなり大きく、「未済箱」「既済箱」があって、「未済箱」におかれた官報の表紙に、各裁判官の押印する紙がホチキスで留められていて、自分の名前の欄に押印して「既済箱」におくというシステムです。
 弁護士会の資料室には、最新の官報が新聞などととともに閲覧できるようになっていて、バックナンバーを保管してあります。

 一般の人になじみはないでしょう。
 破産開始決定を受けた場合には、官報に掲載されます。
 つまり、誰でも見ることができる状態になりますが、実際は、ほとんど誰も見ていません。
 破産者が、大阪だけでも毎年1万人をこえているのは、自己破産は、実質的な損害がほとんどないということを示しています。最大のデメリットは、原則として、2度と破産して免責が受けられないことでしょう。
 弁護士が破産管財人をすると、管財人が官報に公告しなければならず、掲載手続きを弁護士(実際は事務員)がすることになります。


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