2018年バックナンバー
雑記帳
韓国をISD提訴 対韓FTA初 政府介入受け損害
米国と韓国の自由貿易協定(FTA)には、投資家・国家訴訟(ISD)条項が付されています。
ある国の政府が外国企業、外国資本に対してのみ不当な差別を行った場合、当該企業がその差別によって受けた損害について、相手国政府に対し賠償を求める際の手続きが定められていて、通常、世界銀行傘下の国際投資紛争解決センター(ICSID)に訴えます。
通常、国家には免責特権があり、他国の裁判所において、被告とされることのない権利を有していますが、その例外ということになります。
なお、TTP11にもISD条項は入っています(TPP11では、ISDの投資部分を凍結することで、ISDの懸念をかなり抑制しています)。
ただ、日本とアメリカは、TPP条約を締結することを前提として、FTAは締結していませんでした。アメリカはTPP条約に参加しませんでしたから、現在のところ、日本企業がアメリカに対し損害賠償を求めたり、アメリカ企業が日本に対し損害賠償を求める規定はありません。なお、アメリカとのFTAは、絶対、のむべきではありません。
サムスングループの株主である米国大手ヘッジファンドのエリオットマネジメント(エリオット社)は、サムソングループの子会社が合併を進める中で、韓国政府の介入で損害を被ったとして、韓国政府を訴えました。
エリオットの主張は、2013年7月の第一毛織とサムスン物産の合併当時、エリオットなど外国人投資家が差別待遇を受けたとのもので、2013年にサムスン物産の株主だったエリオットが株主権を行使する過程で、朴槿恵前大統領、文亨杓元保健福祉部長官、洪完善元国民年金基金運用本部長など政府関係者がサムスンに有利な決定をするなど、米韓FTA協定文にある「内国人同一待遇条項」を違反したというものです。
賠償請求額は、6億7000万ドル(約740億円)で、早ければ平成30年7月に国際投資紛争解決センターに提訴する予定です。
通常なら、国が、財閥グループの合併手続きなどに介入するはずはありませんから「そんなことするはずはありません」と請求棄却を淡々と求めればいいわけです。
ただ、パク・クネ前大統領を弾劾する理由の1つが、パク・クネ前大統領が、サムソングループの子会社が合併を進める中で、韓国政府が介入したというものでした。
また、韓国現政府は、平成29年7月14日、サムスン電子の経営権継承問題にパク・クネ前大統領が関与した可能性を示唆する資料を発見したと発表し、朴氏の友人のチェ・スンシル受刑者による国政介入疑惑の新たな証拠になり得るとして、大統領府は資料を検察に提出すると発表し、その後、裁判資料として提供しています。
そのような条件のもと、サムスングループの株主である米国大手ヘッジファンドは、サムソングループの子会社が合併を進める中で、韓国政府の介入で損害を被ったとして、韓国政府を訴えたのです。
韓国政府としては、前政権をたたきたかったのでしょうが、前政権が不正をしているとし、また、資料も出しているわけですから、韓国政府の介入がなかったと主張することは困難となりました。
あとは、因果関係や損害の額などで争うしかありません。
ある意味、予想された事態が現実になったといえます。
投資家・国家訴訟(ISD)条項による損害賠償請求は、韓国の国民感情が許さないとでも主張するのでしょうか。