離婚
原戸籍
「改製原戸籍」(かいせい・げんこせき)のことですが、「げんこせき」というと、逆の意味の「現戸籍」と発音が同じになり紛らわしいので、一般に「はらこせき」、略称「はらこ」と呼ばれています。
明治以降、最初の戸籍である 壬申戸籍(現在は非公開。廃棄されている建前になっているはずですが、本当のところはわかりません)がつくられてから、何度か戸籍法の改正がなされてきました。
新戸籍がつくられるのは、結婚、離婚、養子縁組、離縁、転籍(本籍地の移転)などが多いです。全員死亡、全員死亡と結婚、全員転籍などで、その戸籍に入っている人が誰もいなくなれば、除籍となります。
以上のように、通常、各個人の都合で、戸籍が改められます。
ただ、役所の都合で、戸籍が変わることがあります。
戸籍法の改正が行われると、戸籍の様式が変わり、新たに戸籍が作られます。そして、新しくなる前の戸籍が「原戸籍」として保存されることになるのです。
そして、すでにその戸籍から除籍になっていた筆頭者以外の人は、その新しい戸籍には移記されません。
第二次世界大戦後、新民法が施行され、それまで「家」単位で構成されていた戸籍が、「夫婦」単位で構成された戸籍に変りました。
作業は昭和32年ころから実施されたそうです。
最近では平成6年の法務省令により、戸籍のコンピュータ化に伴う作り直しの作業が行われています。
私自身の戸籍はコンピュータ化されていますが(和歌山県日高郡みなべ町・旧南部川村)、一時期、京都市に本籍地のある人の戸籍をとると、縦書きのコンピュータ化されていない戸籍が出てきていましたから、地方公共団体により、コンピュータ化に差があるのでしょう。
なお、相続人を確定する時には、被相続人の出生よりの戸籍をが必要なのですが、原戸籍は、必ず必要になる戸籍です。
死亡した人の戸籍は、どこの誰が筆頭者(古くは「戸主」)の戸籍から入っているか記載されていますから、その前の戸籍をとっていくという作業をしていきますが、現在も生きている戸籍謄本、誰もいなくなった除籍謄本のほか、原戸籍をとる必要が出てきます。
通常郵便でやりとりするのですが、転籍(本籍地の移転)、養子縁組などのほか、原戸籍が入ったりで、延々と作業をやらされることがあります。
なお、法律事務所事務員も、戸籍・除籍・原戸籍が取れるようになれば「一人前」です。
本籍追跡は、地方公共団体により差があり、戸籍が「達筆」すぎて判読不能などの理由により、弁護士がやってもわからず、地方公共団体に問合わせ、問い合わせを受けた地方公共団体の職員が、上司に聞いたりしていることが、しばしばあります。
ただ、日本の戸籍は、昔から「完璧」に近いようで、明治生まれの人が死亡しても、ほぼ100%間違いのない相続関係図がつくれます。
私の経験で、「空襲により戸籍簿消失」と記載され、それ以上さかのぼれないこともありましたが、それはそれで「やむを得ず、さかのぼれない」ということで、相続手続きはできます。
私の裁判官時代、被告(現在生存している相続人)が260人という、時効を原因とする所有権移転登記請求事件がありました。
個人的にも、広島県山県郡加計町(当時)の山林の共用持分権の一部が母方の祖父名義であったため、時効で取得しているから、所有権の登記に必要な書類を送付してほしいとの司法書士さんからの手紙があり、大がかりな「家系図」が添付されていました。
また、父方の祖父が、ため池と林の共有持分権の一部をもっていたので、時効で取得しているから、所有権の登記に必要な書類を送付してほしいと司法書士さんからの手紙がきて、これに応じたことがあります。
相続の際、法務局や銀行などから、原戸籍(はらこせき)を要求されることがあります。戸籍謄本や除籍謄本は一般の人にもわかるのですが、原戸籍(はらこせき)は理解が難しいでしょうから、覚えておかれると便利です。
原戸籍は、国・役所の都合で、新しい戸籍がつくられた場合の改製前の戸籍です。