離婚
DNA鑑定
よくある事例は、婚外子が、父親を被告として提起する場合、あるいは、父親が死亡してから3年以内に検察官(父親は死亡していて被告にはなれません)を被告として訴訟を提起する場合です。
その昔、といっても、私が弁護士になった平成はじめころまでは、認知請求訴訟というのは結構ややこしい訴訟でした。
まだ、DNA鑑定というのが一般化していなかったからです。
子の懐胎可能な時期に、子の母と父とされる男性の間に性交渉があったことは有力な手がかりでした。
また、父とされる男性から、子の懐胎可能な時期に、母と他の男性との性交渉があったという主張がなされることもありました。
いずれにせよ、そう簡単に主張・立証できることではありません。
客観的な証拠としては、血液型が矛盾しないかどうかがありました。
ただ、通常のABO式の血液型による親子関係の認定ですが、親子であるかも知れないが、親子でないかもしれないという結論が出ることが少なくありません。
父母が双方A型であれば、A型、O型の子、父母が双方B型であれば、B型、O型の子が生まれます。
父母がAB型とA型であれば、AB型、A型、B型の子、父母がAB型とB型であれば、AB型、A型、B型の子が生まれます。
父母がAB型とO型であれば、A型あるいはB型の子、父母がA型とO型であれば、A型あるいはO型の子、父母がB型とO型であれば、B型あるいはO型の子が生まれます。
父母が双方O型であれば、O型の子しか生まれません。
しかし、父母がA型とB型であれば、AB型、A型、B型、O型、どの子が産まれてきても不思議ではありません。
昔は、一覧表が、法律関係の本に記載してありましたが、あまり見なくなりました。間違っていたら、すみません。
ということで、ABO式の血液型で、親子関係の有無がぴったり判断できるというのは、むしろラッキーでした。
あとは、RH+-、MN式などがありますが、これも決め手になるという事例はほぼなかったと思います。
あとは、写真を見比べて、似ている似ていないだの、子が産まれたとき、子の父とされる男性が母に金銭や子供服を贈っただの、子の父とされる男性がかわいがっただの、子の名に、父とされる男性の名の一字が入っているだのいないだの、いろいろ主張・立証がなされていた記憶があります。
DNA鑑定が、採用されるようになってからは、このような訴訟を余り見なくなりました。
親子である確率について、コンマのあとに「0」「9」が7つか8つ並び、「突然変異ならありうる」と付記される鑑定書がでるようになり、法律家は、いかにして、血液や毛髪を提出させるか、いかにして、死亡した人の血液や毛髪であることの証明をする、あるいは、証明させないということに力を傾注するようになりました。
生きたものどおしが、任意に口腔内の細胞を提供する事例では、法律家の出る幕は完全になくなりました。
法律家にとって、DNA鑑定の出現は、幸福だったのでしょうか不幸だったのでしょうか。
ビジネスチャンスという観点からは、DNA鑑定がなかった昔の方がよかったのかも知れません。
また、他の分野でも、科学の進歩の遅れのために、ビジネスチャンスが残っているのに過ぎないかも知れません。