外国事情 バックナンバー2/2
フラクトゥーア
「フラクトゥーア」は、「ドイツ文字」「亀の子文字」「ヒゲ文字」などとも呼ばれる書体のことです。
ドイツでは、第二次世界大戦頃までこの書体を印刷に常用していました。
フラクトゥーアの語源は、古いラテン語の分詞、frangere(壊す)、fractus(壊れた)であり、他のローマ字体であるアンティカ体に比べて線が崩れているところに特徴があります。
最初のフラクトゥーアは、神聖ローマ帝国のマクシミリアンⅠ世(在位:1493年-1519年)の治世に、皇帝の出版事業に際して特別にデザインされたものです。
フラクトゥーアは人気を博し、以前の書体であるシュヴァーバッハー体(Schwabacher、グーテンベルクが使った書体)やテクストゥアリス(Textualis/Textur)などの書体に取って代わるようになり、様々なヴァリエーションのフラクトゥールの活字が作成されるようになりました。
他の西欧各国と異なり、ドイツ語圏で20世紀になってからでもフラクトゥールでの製版が常用されていました。いくつかの本はまだシュヴァーバッハー体を使用していたほどです。なかでも優勢なフラクトゥーアの書体は「Normalfraktur」と呼ばれるものであり、様々な細かい違いの活字が存在しました。
アンティカ体、ローマン体(我々が目にするアルファベットです)などの書体が18世紀以降、ローマ字の筆記用としてドイツ語圏でも広まり、やがてドイツ語文書でもフラクトゥールに置き換わろうかとした時点で、アンティカ体などによる置き換えをめぐって、ドイツ語はどちらで表記するのがよいかという「アンティカ・フラクトゥーア論争」が起こっています。
先程述べたとおり、20世紀に入ってからももちいられ、終戦直前の1941年までもちいられています。
今日のドイツでは、フラクトゥーアは装飾用の書体としてまれに使われる程度ですが、ドイツの古くからの新聞は、一面にある新聞の名前をフラクトゥールで表記しています(Frankfurter Allgemeine ZeitungやNeue Zuericher Zeitung)が、ただ、記事も見出しは、もちろんアンティカ体です。
ドイツの戦前の文章を読もうとするとき、フラクトゥーアが読めることは必須です。
といっても、難読なのは大文字のみで、小文字は簡単です。しょせん26文字ですね。