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色覚異常
日本人の場合、遺伝による色覚異常の割合は男性の約20人に1人、女性の500人に1人とされています。男性の場合、とりわけ稀なことではありません
色覚異常の遺伝の形式は、「X染色体性劣性遺伝」あるいは「伴性劣性遺伝」と呼ばれるものです。
性別を決定する性染色体には、X染色体とY染色体があり、男性の場合はX染色体とY染色体を一つずつ(XY)1対持ち、女性はX染色体のみ二つ(XX)持ちます。
色覚異常の遺伝子は「X染色体上」に「のみ」存在します。「Y」染色体は関係ありません。
男性はX染色体を一つしか持たないため、このX染色体が色覚異常の場合は、必ず色覚異常が発現します。
これに対して、女性は、二つ持っているX染色体のうちどちらかが正常でさえあれば、色覚は正常となります。
これが、具体的に、遺伝による色覚異常の割合は男性の約20人に1人、女性の500人に1人との差になってあらわれる理由です。
このように、同じ遺伝子のうち、一方の染色体の方遺伝子が正常であれば影響が現れない遺伝子を劣性遺伝子と呼び、二つある遺伝子(XX)の両方共が異常遺伝子のため色覚異常になることを「劣性遺伝」と言います。
さらに、男性と女性で、性染色体上の遺伝子の伝わり方が異なるのが「伴性遺伝」です。
色覚異常は伴性遺伝であり、その遺伝子を父親が持っているか母親が持っているかによって、子どもへの遺伝子の伝わり方が異なり、子どもへの現れ方も男子と女子とで異なるとされています。
具体的にみてみましょう。Xは正常、X’は色覚以上を引きおこす遺伝子です。
父が正常、母が正常。子はすべて正常。
(父)XY
(母)XX
(男子)XY
(女子)XX
父が色覚異常、母が正常。男子はすべて正常。女子は全員保因者
(父)X’Y
(母)XX
(男子)XY
(女子)XX’
父が正常、母が保因者。男子は正常と色覚異常が半分ずつ。女子は半分正常、半分保因者
(父)XY
(母)XX’
(男子)XYとX’Yが半分ずつ
(女子)XXとXX’が半分ずつ
父が正常、母が色覚異常。男子はすべて色覚異常。女子は保因者
(父)XY
(母)X’X’
(男子)X’Y
(女子)XX’
父も母も色覚異常。男子も女子も色覚異常
(父)X’Y
(母)X’X’
(男子)X’Y
(女子)X’X’
ただ、劣性遺伝でありながら残ってきている遺伝であるのは、それでとりわけ困った先祖がいなかったことによります。
色覚以上が致命的であれば、既に「なくなって」います。
男性に多いですが、女子にもあることから、色覚検査が男子、女子ともになされます。
遺伝ですから、1回やればすむことのように思いますが、何回も試験をやらされた記憶があります。
試験は「意地悪」なものがあり、「何が書いてあるか見えない」→「色覚異常ではないか」と不安にさせておいて、「見えないのが正常なんですよ」という「おち」をつける試験もあった記憶があります。
あの試験だけは、関東人の発想ではなく、関西人の発想だと思います。
色覚異常は何か不利になるのでしょうか。
法律家は、特に、職業上不利ということはありません。
他の文科系の職業も同じでしょう。
理科系、特に、医学など、他人と色の認識に差があっては困る分野では、やはり「不利」なようです。
私と同じ年代の方は、色覚異常のため、理科系が得意なのに、文科系に進学している人が多くいるようです。特に、法律系に流れてきているという実感です。
私の大学生のころの同級生は、20人に1人などというものではありませんでした。
修習生のときも同じです。
聞きもしませんし、言いもしませんが、食事しているときなど、何かの拍子で「色覚異常」とわかることがあります。
麻雀ではわかりません。牌が紛らわしいのであれば、「カモ」にできていたのかも知れません。麻雀の牌はモノクロでも区別が付きます。
裁判官や弁護士になるとき、色覚検査はしません。
裁判官や弁護士になってみると、色覚異常は多いはずなのですが、本人が言わない限り、色覚異常かどうかわかりません。
全色盲でない限り、大きな問題ではないでしょう。
日本も、理科系でも、色覚異常かどうかを問わない、成熟した社会になることが望まれます。