医療のバックナンバー
血液型
「血液型」検査の目的は、輸血を安全に行うことです。
性格占いのためではありません。
人(ヒト)の血液型で輸血に大切なのはABO型、Rh型です。
人の赤血球には「抗原」が、血漿中には各血液型に対する「抗体」があります。
A型の人の赤血球には「A抗原」、血漿には「抗B抗体」が、B型の人の赤血球には「B抗原」、血漿には「抗A抗体」が、AB型の人の赤血球には「坑A抗原」「坑B抗原」があり、血漿には「抗体」はありません。また、O型の人の赤血球に「抗原」はありませんが、血漿に「抗A抗体」「抗B抗体」があります。
A型の人にB型の輸血をすると重大な事態になります。A型の人の血漿が持っている抗B抗体により、輸血されたB型の赤血球がすべて破壊され、その反応で重要な臓器障害が引き起こされ死に至ることがあります。
A型の人の血漿が持つ抗B抗体は、B型血液と反応して消費されても、全てのB型赤血球を破壊するまで無限に供給されるからです。
これは、A型とB型を入替えても同じです。
では、A型の人にO型の血液を輸血した場合はどうでしょうか。
O型の人の赤血球には抗原がないので、A型の人の体内に輸血された赤血球は破壊されません。
ただ、O型の人の血漿には、抗A抗体があるため、輸血を受けた人のA型赤血球が少し破壊されますが、全身状態に影響を及ぼす程ではありません。輸血されたO型の人の血漿中の抗A抗体の量が輸血された血液の分に限られているからです。
これは、A型とB型を入替えても同じです。また、ABを入替えても同じです。
同じ血液型同士の人の輸血には、抗原抗体の問題はありません。
ですから、輸血は、同じ型の人同士でなされ、緊急時のみ、O型の人の血液を他の血液型を持つ人に輸血し、O型やA型やB型の人の血液を、AB型の血液型を持つ人に輸血することは「ありえます」。
あくまでも「緊急時」に限られます。
何の問題もなく、O型の血液が他の血液型の人に何の問題もなく輸血できるのなら、わざわざ「緊急××型の血液が不足しています」と輸血車に書く必要はありません。「O型大歓迎」と書けばいいことになります。
なお、Rh(+)(-)については、D抗原と抗D抗体が問題となります。
Rh(+)の人(99.5%の人)は、D抗原がありますが、抗D抗体はありません。 Rh(-)の人は、D抗原がなく、本来抗D抗体はありません。
Rh(+)の人からRh(+)の人への輸血、Rh(-)の人からRh(-)の人への輸血は同型輸血で問題ありません。
Rh(-)の人からRh(+)の人への輸血は可能です。
Rh(+)の人からRh(-)の人への輸血は、Rh(-)の人に抗D抗体が無ければ輸血は可能です。
自然の状態ではRh(-)のヒトには抗D抗体はほとんどありません。
しかしRh(-)の人が、過去にRh(+)の人から輸血を受けたり、妊娠などで抗D抗体がつくられることがあります。
このようにして抗D抗体ができている人へ、Rh(+)の人からの輸血はできません。
なお、血液型の判定だけでは、輸血はしません。
よほどの緊急時でない限り、交差適合試験(クロスマッチテスト 。cross-match test)を実施してから、輸血をします。
輸血を受ける人(患者)の血液と、輸血をする人(提供者)の血液を混合して、反応の有無をみるもので、ABO式血液型の不適合や、その他の血液型に対する免疫抗体 (IgG)を検出できる方法を用いる必要があるからです。
輸血をする人(提供者)の血液は、既に、血液を赤血球、血小板、血漿などの成分に分けパックに入っていることが大半です。
なお、茶飲み話を邪魔するようですが、血液型と人の性格との間には、医学的に何の関係もありません。
血液型と人の性格を関連づけて話をするのは、日本、旧日本の植民地(韓国、台湾など)に限られるといわれています。
ヨーロッパには、血液型と人の性格とを関係づけて話をする習慣はありません。
そもそも、自分の血液型を知らない人が、むしろ多いといっても過言ではないようです。