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医療のバックナンバー

カルテと虫食い文字

医師と弁護士といえば「悪筆」の双璧をなす職業人ではないでしょうか。

 弁護士は、大体、私と司法修習生の同期(昭和55年修了。法曹経験30年目)くらいを境にして、手書派とワープロ派の多数少数が逆転します。

 パーソナル・ワープロの普及は昭和60年ころのことで、その前後にワープロを覚えたかどうかが問題ですね。
 ワープロを使わない人は、最初のころは、手書きの原稿を和文タイプする事務員に渡して清書していました。今は、手書きの原稿をワープロ打ちする事務員に渡して清書しています。
 この弁護士の「悪筆」を解読できるのは「あの事務員一人」というケースもあるようです。弁護士が有力弁護士なら、失職の心配はありません。

 もちろん、最近というか、20年くらいの経験以下の弁護士は、たいていワープロで起案をします。司法修習生時代からパーソナル・ワープロが普及していましたからね。

ワープロの最大の弱点は、一定の書式に「うまい具合に」打ち込むということが事実上不可能ということがあります。

 さて、一定の書式に、手書きで書かなければならない職業があります。
 医師です。
 カルテの書式にワープロ入力は難しいでしょう。

 まず、医師は圧倒的に「悪筆」です。

 そして、肉筆でカルテを書かなければなりません。
 民事訴訟規則138条によれば「外国語で作成された文書を提出して書証の申出をするときは、取調べを求める部分についてその文書の訳文を添付しなければならない」ということになっていますから、交通事故訴訟や医事紛争訴訟に提出されるカルテには、訳文(英文字のうえに訳文書きます。原本にないですよという趣旨で、ラインマーカーを引きます)が付されています。

 けっさくなのは、外国語の部分は、きれいに訳文が書いてあります。訳さないと証拠として提出できないわけですし、たいてい、英語日本語交じり文ですから、英語部分(ent=entlassen=退院、BD=Blutdruck=血圧などドイツ語もあります。)は、単語か略した単語ですから、通常翻訳は容易です。

しかし、日本語部分は何が書いてあるのかわからないことが、往々にしてあります。

 ということは、「虫食い文」ができることがあります。英語部分は読めて、日本語部分は解読に苦労し、ときに判読不明なことがあります。

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