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司法 バックナンバー 3/3

「無能な」弁護士から身を守る

 法曹人口3000人問題ですが、マスコミにも、反対論が出てきています。
 ベテランでテレビにもよく登場する論説委員の記事です。

「岩見隆夫氏のコラム」

 私なりに要約しますと「今までは、悪徳弁護士、法外な報酬を要求する弁護士がいることは聞いていたが、無能な弁護士は聞いたことがない。弁護士資格は持っているが、役に立たない、能力のない若い弁護士が毎年送り出されているということらしく、法治社会の基礎が揺らぎかねない」というものです。
 また「被害を受け、自力で解決できない場合は、専門家の弁護士に救済をお願いすればいい、とだれもが頼りにしているのに、めったにない弁護依頼に過誤の恐れがあるというのでは、たまったものではない」ということになります。


 確かに、司法試験終了者が増えてくると、あらゆる意味で弁護士の質が落ちてきます。

 1 いままで弁護士になれなかった程度の実力しかない人が弁護士になります。
   もちろん、従前のレベルが高すぎた、ある程度、レベルが低くても弁護士としてやっていけるはずだという議論はあるでしょう。確かにその点は否定できません。

 2 司法修習の期間が短くなっただけではなく質も落ちました。
   期間が短くなる(2年間→1年間)のももちろん問題ですが、司法修習の質自体も落ちます。
   たとえば、私が修習生だったころ、1クラスは45人、研修所の教官は、修習生の起案を十分見る余裕はありました。
   司法研修所で1クラス45人が70人になったのでは、目が行き届きません。ろくに添削もできません。
   また、修習生が増えますと、実務修習(裁判所・検察庁・法律事務所)での研修の質が落ちます。
   実務修習でマンツーマンで教えていたのが、1人の裁判官に3、4人の修習生がつきます。
   期間が短くなった上に、裁判官や検察官が増えないのに、修習生が4倍にもなれば、期間が短くなった上、修習の中身や質が落ちますから、ダブルで、修習で身に付くものが少なくなります。

  3 通常、新人弁護士は「イソ弁」となり修行するのですが、勤務する法律事務所は「引く手あまた」でした。
    修了者が増えると、就職先が圧倒的に少なくなり、新人弁護士のうち「イソ弁」になり、先輩方から指導してもらえる人は幸いですが、「軒弁」として机一つだけ置かせてもらったり、「即弁」として自宅で開業、あるいは、弁護士会費用が支払えないので、弁護士登録もできない人も増えています。


 岩見隆夫氏のコラムの「弁護士になりうる能力のない人」「無能」と言い切ってしまうのは問題かも知れません。
 能力もさることながら、「一人前の弁護士になるにふさわしいためのトレーニングを受けていない人」「未熟」とした方が穏当でしょう。
 常識的に考えて、イソ弁として5年間程度働いていないと、「一人前」とはいいにくいですね。
 医師と同じです。医師免許をとって研修もせずに開業するようなものですから・・・


 弁護士の見分け方を説明いたしします。
 あくまでも一般論です。あくまでも一般論で、例外はあります。
 修習時・経験年数にかかわらず、優秀な人は優秀ですし、それなりの人はそれなりです。

 1 まず、47期(平成7年=1995年登録)までは修習生500人ですし、例外なくイソ弁の経験を積んでいますから、「無能」ということはないでしょう。しかし、高齢となり能力が落ちてきている弁護士もいるでしょうが・・

 2 それ以降は、人数が増えて従前なら合格しない人が合格し、また、途中から修習期間が2年から1年半にと短くなったため、若干質は落ちる弁護士がいることになりますが、通常問題ないでしょう。
   たいてい、イソ弁経験を5年程度はつんでいます。

 3 ただ、ここ数年の間に弁護士になった人は「少し」危険かも知れません。
   人数が増えていて、昔なら、何年たっても絶対合格し得ない人が合格していますし、実務修習の期間・質も落ちています。
   もっとも、ちゃんと、イソ弁をしている弁護士さんなら「無能」「未熟」よばわりするまでもなく、通常に仕事を依頼しても問題はないか、あるいは、問題は少ないかと思います。ボス弁が雇う以上、それなりの能力を持っていると判断された人でしょうし、ボス弁などから指導を受け、相談をし、指示もあおいでいるでしょうから。
  しかし、 「軒弁」(ボス弁から教育を受けているイソ弁ではなく、机だけかりて仕事をしている弁護士、「即弁」(すぐ独立している弁護士)は、一般論として危険かも知れません。イソ弁になりたくても、誰も雇ってくれなかった、つまり、それなりの能力しか持っていないと判断されなかった人たちですから。

 弁護士は資格を持っているから、大丈夫という観念は通用しなくなっています。


 なお、弁護士を選ぶときに、年齢が上で、経験年数の多い弁護士を選びたがる依頼者が多いことは事実です。
 私は24歳で裁判官になり、34歳で弁護士になりましたが、弁護士になりたてのころは「若すぎる」「他の弁護士にかわってほしい」と言われたものです。たいていは「裁判官経験が10年ある」といったら、一応納得してくれた様子ではありました。

 大阪では、一部の例外を除いて「軒弁」「即弁」は平成19年からのことです。
 現時点では、経験年数を聞いて、少なすぎれば危ないかも知れません。
 事件にもよりますが、経験年数が5年ないし10年たっていれば問題はありません。
 ただ、今後10年たったとすれば、経験年数が10年超の中に「軒弁」「即弁」がまざってきます。

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