司法 バックナンバー 3/3
覚せい剤
今度は、札幌弁護士会副会長の覚せい剤の報道でびっくりしました。
覚せい剤の自己使用・自己使用目的の所持は、そんなに重罪でしょうか。
その昔「ヒロポン」という「薬」がありました。
塩酸メタンフェタミンが薬品名、ヒロポンは商品名です。
「覚せい剤」というくらいですから、「目を覚ましてくれる」「薬」ですね。
第二次世界大戦中、戦場に向かう特攻隊隊員に、死への恐怖心を紛らわせるため飲ませるなど、兵隊に軍が支給し、また、軍需工場では、労働者を不眠不休で働かせるため、使用させたというのがはじまりのようです。
眠らずに、4、5日は働けたそうですし、また、敵軍の襲撃があっても、恐怖といった感情が起りにくかったようです。
戦後になり、ヒロポンは大量に余り、民間に安く流れました。
製薬会社の思惑もあったのでしょう。
学生にとっては「眠らずに勉強ができる薬」、労働者にとっては「眠らずに働ける薬」、そのような広告で、薬局へ行けばで簡単に購入することができたそうです。
私が、司法修習をしたのが30年前、定年の近い指導担当の方から「昔は合法で、自分も、司法試験合格のため、ヒロポンを使って寝ずに勉強して合格した」と言っておられる方がおられました。
その方は、中毒にもならず、試験に合格するとヒロポンをやめ、任官されてから定年までご活躍をされていました。既にお亡くなりになっています。
人間の体は「うまく」できていて、これ以上の仕事が不可能という肉体状態になると、そのサインを脳に送り、「寝よう」「休もう」となります。このおかげで、健康が保たれます。
覚せい剤は、肉体から脳へのSOS信号を断切り、脳に、あたかも「勤労可能」と思わせるわけですから、仕事を続けて、健康を害することになります。
専門的には「覚せい剤は、シナプス前部でのモノアミン類(ドパミンとノルアドレナリン)の放出を促進し、再取り込みを抑制することによって、神経伝達物質であるドパミンやノルエピネフリンの脳内シナプス間隙における濃度を上昇させ、その結果脳の一部の機能を活性化する」と記載されています。
これだけなら、被害者は、本人だけです。
覚せい剤の急性中毒の場合、情緒不安定、判断力低下、衝動性、怒り、暴力行為に発展します、慢性中毒の場合には、これらの症状に加えて「空虚感」「感情鈍麻」「統合失調症に似た幻覚(幻聴や幻視など)や妄想(強い恐怖感を伴う迫害的内容)」などを引き起こします。
ちなみに、幻覚や妄想などの精神病症状は、次第に少量の覚せい剤使用で出現するようになり、ついには使用を止めても出現するようになります。使用中止後、数ヶ月から数年後にも幻覚妄想状態が短期的に突然出現(「フラッシュバック」といいます)することもあります。
被害妄想による犯罪は、殺人にまで発展することもありえます。
覚せい剤乱用者は、しばしば常軌を逸した暴力行為を引き起こします。他人を刃物で切りつけたり、自分の身体を切刻むこともあります。
薬代を手に入れるために家族や周囲の人のすべてを巻き込み、経済犯罪をおこします。
さらに乱用薬物が、暴力団や国際テロ集団や「ならずもの国家」の資金源になっています。
また、薬代を手に入れるために違法薬物の売人になるという自己増殖のパターンが見られます。
ということで、厳罰に処せられます。
問題は、累犯性の高いことですね。
麻薬と異なり「禁断症状」はでませんが、薬物依存症になるような人は、ほとぼりがさめたら(あるいは、自由になった直後)から、手を出す人は多いです。
自己使用・所持なら、1度目は執行猶予ですが、2度目は実刑、前回の分とあわせ服役することになります。