司法 バックナンバー 3/3
司法修習生の就業活動における差別的言動
「司法修習生の就業活動における差別的言動に対する苦情相談窓口」 が、大阪弁護士会に設置されたそうです。
「大阪弁護士会に所属する法律事務所に対して就業活動をしていた司法修習生が、就業活動において、差別的言動等の人権侵害を受けた場合、苦情等を申し出ることができます」
「就業活動において、差別的言動等の人権侵害を受けた等の苦情・相談をされたい場合は、下記の連絡先に電話または電子メールにて申し出るか、大阪弁護士会司法修習委員会担任委員にご連絡ください」
「大阪弁護士会司法修習委員会」
となっています。
私は、勤務弁護士を雇用したことはありませんし、司法修習委員になったこともありませんから、実情は知りません。
勤務弁護士雇用の予定もありません。
ただ、大阪弁護士会のホームページではわかりませんが、大阪弁護士会会員に配布されたパンフレットによりますと、想定されている「差別的言動」は、端的に「女性差別」ということのようです。
「差別」といえば、他に、学歴差別、年齢差別(高年齢者を嫌悪)、司法試験などの成績による差別、司法修習の新旧による差別(新=ロースクール卒業者を嫌悪。逆の「可能性」もないとはいえません)とかいろいろあるでしょうが、これらは想定されていないようです。
修習生の少なかった時代には、採用に苦労したのは雇用者側でしたが、弁護士大増員時代で、就職に苦労するのは修習生側です。特に「女性修習生」は深刻なようです。
就職できない「即独」の修習生も、修習生全体に占める女性の割合に比べ、女性修習生が多いかのように聞いています。
有利な立場の雇用者側が、就職先をさがすのに必死な女性修習生に、セクハラをするのは問題外ですね。
このような行為が糾弾されるべきは当然のことです。
しかし、問題は、そう簡単ではないようです。
女性修習生が既婚か未婚か、未婚であれば結婚の予定、既婚であれば出産についての考えなどは、雇用する側にとって、どの程度の「戦力」を期待できるかについて重要な要素です。
「セクハラ」という趣旨ではなく、「出産前後に戦力として期待できない期間の見込み」を事前に知りたいのが普通でしょう。
男性修習生には、そんなことを聞く必要がありません。興味もないでしょう。勤務弁護士に、家族手当を支給する法律事務所はありません。
小規模事務所の経営者である弁護士が、「男性修習生」を「女性修習生」より優先させる理由は、「女性修習生」に結婚・妊娠・育児の要素が大きいからでしょう。
よほど大きい事務所を除けば、法律事務所は、しょせん零細企業です。「ぎりぎり」の数で、夜遅くまで、また、休日出勤をしながら、なんとか仕事をこなしています。
男性は、結婚・妊娠・育児で「戦力外になる」という可能性はありませんが、女性はありえます。
その場合、事務所が「存亡の危機」になる可能性があります。経営している弁護士自身が、「過労死」してしまう可能性もないとはいえません。
勤務弁護士を雇用することにより、従前受任していなかった、訴額の小さな事件や、遠方の事件を受任しているのが普通でしょう。あてにしていた「勤務弁護士」が「戦力外」となったのでは、遠方の事件に自ら行かねばならない場合が生じ、特に大変です。
雇用者側の弁護士が、「将来の生活設計」を「一切」聞いてはならないというのなら、弁護士の習性として「最悪の事態」を「想定」して「被害が最小になるよう」行動するのが普通ですから、「女性修習生」の採用は「否定」という結論になるでしょう。
女性が、裁判官や検察官になるなら全く問題はありません。全国にたくさんの数の裁判官・検察官がいるのですから、填補は簡単です。また、報酬・給与は、しょせん「税金」です。
人事権を握る裁判官・検察官らの「腹がいたむ」わけではありません。
弁護士会固有の問題は、個々の「零細企業」の「法律事務所」の「集合体」に「すぎない」ことです。
また、弁護士増員により、経営は厳しくなっていて、「潜在的」「余剰人員」をかかえる余裕などありません。
ただ、大規模事務所なら、さほど気にすることはないでしょうから、弁護士会は、大きな事務所に率先して「女性修習生」の採用を依頼するのが手っ取り早いと思います。
難しい問題ですね。
しかし、弁護士は、個々の「零細企業」が、集まっているにすぎないこと、弁護士増員により、経営は厳しくなっていることを考えれば、解決する方法はないように思います。
もともと、弁護士大増員が問題なんですね。
もっとも、その恩恵を受けて合格した修習生ですから・・
500人時代なら、こんなことにはなっていなかったように思います。
また、上位500人に入っていれば、裁判官・検察官になれず、また、就職先もないということはないように思います。