司法 バックナンバー 3/3
弁護士の選び方
1 専門性
「○○事件は専門ですか」「○○事件は得意ですか」と聞かれる相談者もあります。
基本的に、弁護士は医師と違って「専門」というものはありません。せいぜい「特に多く取扱う分野」程度です。
売買、賃貸(明渡し)、債権回収、交通事故など簡易な損害賠償請求、離婚・相続、個人の任意整理・個人破産程度なら、どの弁護士でも普通にできます。逆に、10年程度の経験を積んでいる弁護士なら、できない弁護士はいないでしょう。その弁護士が能力があれば上手に処理するでしょうし、そうでなければ、それなりに・・ということになります。
個人破産や個人民事再生など多数かつ定型的な事件は、すべて弁護士自身がしている時間などありません(重要なポイントは弁護士が書きます)。事務処理できる処理できる事務員がいるかどうかの問題です。弁護士だけで手に負えない、微に入り細をうがった裁判所の要求に耐えうる事務員のいる法律事務所数は多くありません。
ただ、 「特殊事件」 に記載されている事件は、多く取扱っているに依頼した方がよいと思います。
私に、公害事件や薬害事件を依頼してもお断りするだけです。
2 価格
平成13年4月に廃止された旧大阪弁護士会報酬規程(旧日本弁護士連合会とほぼ同一)を使っている弁護士が多いので(私もそうです)、それより高ければ「高め」、低ければ「安め」になります。なお、債務整理関係だけは、報酬規程より格段に安い、法律相談センター基準が適用されるのが通常です。
ただ、価格だけにとらわれて「安物買いの銭失い」にならないよう気をつけてください。
当事務所では「西野法律事務所法律規程」(旧大阪弁護士会報酬規程をダウンロードしてプリントアウトしたもの。当時、弁護士会には、そのようななサービスがありました。中には、表紙の「大阪弁護士会」の上に「○○法律事務所」と紙を貼っている弁護士さんもいます)を、会議室の机においています。私の場合、報酬金額は、基本的にいじっていません。また、報酬契約書を顧問先などの例外を除いて作成しています。
なお、法律事務所は弁護士着手金・報酬の見積書の求めがあれば、作成する努力があることになっています。
当事務所は「ホームページに書いていますから、そのとおりですよ」と言っています。もちろん、見積書をつくるとの要請があれば作成します。
なお、ホームページをもっていない弁護士さんは多いでしょうし、その場合、見積書を求められたらいかがでしょうか。
もっとも、弁護士が考えている常識的な時間で終わればの話で、「事件が長期化複雑化すれば、弁護士報酬は再協議する」という文言を入れているのが通常です。
3 経験年数
一般的にいえば、経験は無いよりもある方がいいでしょう。
極端に若い人、極端に歳をとった人は、通常敬遠されるのが普通かと思います。
まあ、弁護士10年も経験していれば普通の事件は十分ですし、裁判官の定年である65歳程度なら、まだ大丈夫でしょう。ただ、個人差がありますから、気をつけてください。
経験年数が何年たっても「それなり」な人は「それなり」ですし、意外に早く「老け込む」人もいます。
4 親しみやすさ
最近は少なくなりましたが、依頼者の話を十分聞かず、「黙って俺についこい」「私に、まかしときなさい」タイプは敬遠されるのが賢明です。
自分の話を十分聞いてくれる、親しみやすい弁護士がよいと思います。
なお、弁護士も、 「インフォームドコンセント」 の実施、 「セカンドオピニオン」 への十分な理解など、顧客=依頼者重視が必須となっています。これらを避けようとする弁護士は敬遠すべきでしょう。
4 大事務所か小事務所か
大規模倒産など、大規模事務所でなければ無理でしょう。
大事務所に事件を依頼すると、数名もの弁護士名が連記された書類が作成されますが、現実に仕事をしている人は1人、せいぜい2人です。
あと、大事務所の場合、大先生に頼もうとした「つもり」が、若い先生に「丸投げ」という事があります。
自分の依頼する事件が、勝訴すれば法律事務所に大きな利益をもたらす事件か、そうでないか考えれば、通常、「大先生が自らしてくれるか」「若い先生に丸投げになるか」どちらになるか、おおよそわかります。
依頼者が考えている「大きな事件」と、弁護士が考えている「大きな事件」は異なることにご注意下さい。えてして、依頼者には、自分の事件を過大視される方もおられます。
逆に、小さな事務所は、ときたま、処理能力がパンクして、新件受任を断られたり、自分の事件の処理順位が後回しになるという欠点があります。もちろん、パンクしない事務所もあるでしょうが、逆に、そんなヒマな事務所は、逆に避けた方が賢明かと思います。
5 事務所の場所
地方の事務所であるか都市部の事務所かによって、弁護士の能力や事件処理の内容が決まるものではありません。ただ、過疎化対策としての公益的な法律事務所は、弁護士となって間のない若い先生が多いことは間違いありません。
事務所の場所が問題となるのは、あなたの住所や勤務先との距離です。
事件処理のためには、弁護士と依頼者が何度も打合わせを行うことが必要になります。
事務所所在地が、あなたの「住所」や「勤務先」とあまり離れていると、打合わせが困難になり、事件の進行に支障となります。打合わせに支障のない範囲の近隣にある事務所を選ぶべきでしょう。
私が弁護士ではないと仮定し、弁護士に依頼するとすると、兵庫県弁護士会ではなく大阪弁護士会の弁護士に依頼すると思います。
6 学歴
弁護士は、司法試験を合格しているのですから(平成16年ころ以降に弁護士になられた方は、格段に合格しやすくなった司法試験に合格したにすぎない場合もあります)、いわゆる「一流大学」をでているのかそうでないかは、医師の場合ほど気にすることはありません。ただ、考慮しないというのも冒険ですね。
なお、弁護士の学歴は、普通の人にはわからないでしょう。
あまり、はっきりさせておられる弁護士さんの方が少ないのが実情です。
東大、京大、阪大クラスなら、聞かれれば答えない理由はありません。また、依頼して「間違い」は少ないと思います。
私が弁護士ではないと仮定し、弁護士に依頼するとすると、東大、京大、阪大卒の弁護士に依頼すると想います。
注意する点は、国立大学出身者と、私立大学出身者とでは、理系のセンスが異なることが多いです。私立大学の法学部には、受験科目に数学と理科がないことがありますから。
案外、訴訟事件には、理系センスが必要な事件は多いものです。「ベクトル」「微積分」(交通事故など)、その他「集合」「確率」などは結構必要となります。また、事件の判断について「要件事実」が重要な要素となるのですが、「数学的思考」能力に優れていた方が、かなり有利です。
7 外国語
外国との取引についての交渉などは「渉外弁護士」といわれる、外国の法曹資格を取っておられる弁護士さんに頼むべきでしょう。
そうでなくても、商社、外国との取引をしているメーカーなど、商業取引関係で英文が出てくる事件なら、少なくとも英文が読める弁護士に頼んだ方が楽です。打合わせの時、いちいち「翻訳文」の用意をしないと、弁護士が「ちんぷんかんぷん」という場合は、急な打ち合わせは「かったるい」でしょう。
一般社会と同様で、若い人ほど、英語ができます。私の経験年数では、できる弁護士の方が例外です。