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2012年バックナンバー

ハングル

文字が、アルファベットか漢字以外の国に旅行するのは厄介です。
 アルファベットといっても、ギリシャのアルファベットは文字を読めますから、まだ問題は少ないですが、ロシアのアルファベットはお手上げです。

 韓国とタイが鬼門です。

 基本的に、日本以上に漢字が尊重されてきた国ですから、ハングルのみというのは違和感がありますね。
 「○△□」ばかりで読みにくいと日本人に言ったところ、「△はない」ということでした。「チビ太のおでん」と混同していたかも知れません。

 韓国のハングルは、作成者がわかっている文字も珍しく、李氏朝鮮の「世宗」大王が15世紀につくらせた文字で、もともと、ハングルという言葉は20世紀になってからの呼び名であり、それまでは、一般には「諺文」と呼ばれていました。「諺文」とは「俗語を表す文字」という意味です。

 訓民正音(ハングル)公布の際「國之語音、異乎中國、與文字不相流通、故愚民有所欲言、而終不得伸其情者多矣。予爲此憫然、新制二十八字、欲使人人易習、便於日用耳」

 読下し文にすると「國ノ語音、中國ト異ナリ、文字ト相ヒ流通セズ、故ニ愚民、言ハント欲スル所有レドモ、終ニ其ノ情ヲ述ブルヲ得ザル者多シ。予 此ガ爲ニ憫然タリテ、新タニ二十八字ヲ制リ、人人ヲシテ易ク習ヒ、日用ニ便タラシメント欲スルノミ」とされています。

 なお「愚民」を「憫然」と思い公布したということですから、ずいぶん、自国民を馬鹿にした言い方です。

 韓国は、中国への従属関係から公文書はすべて漢文であり、世宗王大が創製したハングルは蔑まれ、知識階級が使うことはなかったとされています。

 日本が統治していたときは、日本語り「漢字仮名交じり」と同じく、「漢字ハングル交じり」が使用されていたそうで、朝鮮戦争時代の韓国の新聞は、日本人でも読めますね。

 昭和33年の政府樹立の時に制定した「大韓民国の公文書はハングルで書く。ただ、しばらくの間、必要な時には漢字を併用できる」という法律が出でき、昭和45年9月に「文書には、分かち書きされた横書きの標準語(註。ハングル)だけを使用する」という政府公文書規制ができ、漢字がほとんど姿を消しましたそうです。

 ナショナリズム、つまり、韓国民族としての言語に対する文化運動が多分に影響している結果でしょう。

 日本より漢字文化が強い国なのに、日本で「かな」「カナ」のみを使用するということですから、同音異義語が増えます。
 ただ、韓国語の方が、母音が日本語より多いので、日本よりは「まし」になります。

 私が30年前ドイツ留学したときの語学学校の生徒に韓国人3名いましたが、当初は、日本人より発音が上手とほめられていました。
 母音が多いからですが(「B」と「V」、「L」と「R」の区別がないのは日本と同じです)、日本人に、いつの間にか、追い越されてします。

 なお、韓国語には、古来の中国からの漢字語が多く流入しています。
 「アンニョンハシムニカ」(こんにちは)は「安寧ハシムニカ」ですし、「カムサハムニダ」(ありがとう)は「感謝ハムニダ」です。

 それ以外に、韓国には日本からも大量の漢字語が流入しています。
 日本は明治時代、近代化のために急ピッチで西洋の言葉を漢字語に翻訳しました。
 韓国では、日本の植民地時代があったこともあり、日本の漢字語をほぼそのまま、行政・法律・経済・科学の分野で使用しています。
  韓国で使われている漢字熟語の7割から8割は和製漢語とも言われていて、漢字をそのまま残すと、嫌でも、和製漢語を使用しているということが明らかになります。

 ということもあり、漢字を廃止し、不便だからといっても、漢字復活はできないそうです。
 といいますか、漢字復活は今さら無理でしょう。
 韓国の方で「ザ行」を「ジャ行」に発音する以外は、流暢に日本語を話される方でも、漢字は書けないと言う方が多いです。

 韓国では、一般の人は、自国の人が第二次世界大戦前に書いた文章を読めないと言うことになっていて、日本人は、少しの註釈があれば、平安時代の日本人が書いた文章を読めるというのは大きな差です。
 日本人はハングル公布の文章も読めますし、漢詩も読めます

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