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2012年バックナンバー

個人情報の秘密の漏洩

平成24年10月24日、船橋市が管理する個人情報を漏らしたとして、同市の非常勤職員を地方公務員法違反(守秘義務違反)の疑いで逮捕しました。

 また、漏えいを依頼したとして県鎌ケ谷市の探偵業(携帯電話の顧客情報漏えい事件で起訴ずみ)を、地方公務員法違反(守秘義務違反)違反の教唆の疑いで逮捕しました。

 船橋市の非常勤職員が、探偵業者から金銭を受取っていてれば、非常勤職員は収賄罪でも罰せられます。

 非常勤職員の被疑事実は、探偵業者から依頼されて平成22年、船橋市民の住民票情報などを管理するシステムを不正操作し、50代女性の離婚歴と20代女性の名前や生年月日を調べ、探偵業者に教えたというものです。

 非常勤職員は、平成15年から、納税証明書の発行業務などを担当。住民基本台帳や納税状況などが記載された「市県民税システム」や「住民記録システム」にアクセスする権限を与えられていたということです。

 船橋市の内規では、端末操作の際は担当職員ごとに異なる職員番号とパスワードでログインすると定められていますが、出勤した職員が端末を立上げたままにして、その後は他の職員もログインし直すことなく操作できるようになっていたということです。
 どこの端末から、いつ操作されたということがわかっても、誰が操作したかわかりませんね。

 怖い話ですね。
 正規の公務員であれば、懲戒解雇されれば、退職金は支給されず解雇になり、安定的な職業を失いますが、非常勤職員は、剥奪すべき退職金もありませんし、あと少しの期間でクビになっても仕方ないという身分ですから、失うものが少ないわけです。


 今のところ「マイナンバー制度」の法案の審議さえされていません。

 すべての国民と法人にマイナンバー(社会保障と税の共通番号)を付与し、納税記録や社会保険料の納付、給付情報を一元的に管理するというシステムです。

 一定所得以下の所帯に税を還付したり現金を給付したりする「給付付き税額控除」制度を導入しようとしているとき、本来多額の収入があるのに、低く申告している人もある可能性があります。

 「正確な所得の捕捉」をしないと、本来多額の収入があるのに、低く申告したため、給付を受けると言うことでは不公平ですね。

 比較的「ガラス張り」のサラリーマンはともかく、自営業者、農業・漁業従事者などの所得を正確に捕捉し、その情報に基づいて、社会保険料や税の公正な徴収を行うとするものです。

 マイナンバー制度による名寄せは、当面は「所得の捕捉」です。
 間違いなく「資産の捕捉」を狙っています。
 税務署が、預貯金や不動産取得の所得源を追及することができるようになれば、自営業者、農業・漁業従事者などの所得の捕捉率が高まります。


 秘密が間違いなく守られるなら、正直者にとっては「いい制度」ですね。

 さあ、秘密が守られるという保証はあるでしょうか。

 遊興費や借金の返済のため、わずかな金目当てに、守秘義務に違反し、興信所・探偵業者などに個人情報を売却する公務員は結構いるようです。
 銀行など金融機関の口座も、わずかな金目当てに、興信所・探偵業者などに情報を売る銀行関係者がいます。


 裁判になれば、興信所・探偵業者から得たとしか思えない情報が相手方から証拠として提出されたることがあります。

 なお、弁護士は、職務上、事件関係者の戸籍や住民票を取得できますが(相続関係図の作成や、被告住所の特定)、目的外使用が発覚すると、懲戒を受けます。
 戒告ではなく、業務停止を伴うことから、かなり重い「非違行為」です。

 普通の弁護士さんは、依頼者が、興信所・探偵業者から得た情報をもっていたとしても、それを裁判所に提出するのではなく、裁判所への調査嘱託の申立という方法をとります。いかにも「推測にすぎない」ということを強調するため、ピンポイントの調査嘱託ではなく、わざとダミーの調査嘱託をまぜます。

 ただ、あまり「何も考えない」弁護士さんも、結構います。


 個人情報を、役所が集めるのは、本来の目的に利用される分には問題ないのですが、職員による漏えいの危険がつきまといます。
 その地位によりアクセスできる情報を、ちゃんと管理していればいいのですが、現実は違います。
個人情報を集約すればするほど、情報が漏洩したときの損害が大きくなります。
 
 守秘義務違反で執行猶予がつくなら、懲戒解雇されて退職金が0になり、安定した地位を失う常勤の公務員ならともかく、どうせ退職金もないし、いつ雇い止めになるかわからない非常勤公務員なら、誘惑に負けるということもありえます。
 また、弁護士は「失うもの」が多く、戸籍の不正取得ということは多くありませんが、他の仕業からの漏えいは多くなっていくでしょう。

 より多くの個人情報の集約化のためには、秘密漏えいの厳罰化とアクセス管理の厳格化が、前提になるべきでしょう。

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