2012年バックナンバー
関西電力の株主総会
最大株主である大阪市の橋下市長が質問しました。
ブレーンがいるのでしょう。感情的ではなく、冷静に「痛いところ」をついています。
「使用済み核燃料の問題について、再処理事業は今後も継続されるのか。最終処分地はいつまでに造られるのか。将来予測が立たない。リスクをどう考えているのか」という質問がありました。
原子力発電所から発生する使用済み核燃料を扱う世界の主要な商用再処理工場で、外国から使用済み核燃料を受け入れて再処理している施設はフランスとイギリスのみでしたが、契約は切れています。
なお、日本の再処理工場は、茨城県東海村の旧動燃東海事業所にありますが、いわば実験施設でまともな処理能力はなく、青森県六ヶ所村の再処理工場は、不具合のため全く稼働の見込みが立たないまま兆単位の無駄金が発生しています。
最終処分地など、日本のどこにもできるはずがありません。
モンゴルなどは、受入れてもいいと言ってくれているようですが、モンゴルには海がありません。陸地(現実には、陸路で運べないそうですが)も、中国やソ連を通らなければなりませんが、通してくれるはずもありません。
話はかわりますが、日本の発電所は、使用済み燃料について、現在、原子力発電所の一時貯蔵プールに置いています。
関西電力の場合、原子力発電所11基のプールの燃料貯蔵容量は9703体(4420トン)で、既に7割程度が埋まっています。
今後も関西電力だけで処理すると約7年でプールはいっぱいになる計算で、再稼働が実現しても使用済み燃料の処理が課題となります。
福井県知事は「原発の使用済み燃料について、今後、福井県だけでは対応するわけにはいかないものもある。電力を消費してきた地域にも、痛みを分かち合う分担をお願いしないといけないと思う」と述べています。
関西2府4県のうち「痛みを分かち合う」「福井県の電力を消費した地域」という定義から和歌山県がはずれます。和歌山県は、電力供給県で、福井県の電力は使っていません。
技術的な問題でいうと、原発の使用済み燃料は、まさに放射性物質を放出するかたまりで「陸送」するのは非常に危険です。技術的問題から、海のない滋賀県と奈良県がはずれます。
福井県知事の「痛みを分かち合う分担」は、消去法からして、京都府、大阪府、兵庫県になりますが、人口密集地には、常識からして無理ですね。
永遠に、使用済み燃料は、原子力発電所のある福井県でしょう。
「原子力発電所が何基止まれば赤字になるということを念頭において経営しているのか」という問いも鋭いですね。
関西電力は、原子力発電が全廃になれば、9000億円という燃料費、代替コストが必要という答えをしましたが、電源三法による交付金福井県では約113億円の支払いの必要はなく、固定資産税なども支払う必要がありませんし、役員の報酬と職員の給与は東京電力並にすれば、相当費用が抑えられます。
それより、原子力発電は、1基、廃炉が決まれば、資産価値がなくなる一方、廃炉コストの計上の必要があります。上下で大きな違いです。
関西電力が保有する全11基の原子力発電所の「解体費用」を総額5278億円と見積もっています。運転開始から40年で廃炉とすることを前提に費用を算定したもので、うち1459億円は将来の損失に備える引当処理をしていません。
ただ、固定資産が0となることは含まれていないようです。
もっとも、廃炉コストは、計算の仕方によっていくらでも変わってきます。
いずれにせよ、内部で計算しているでしょうが、公表はできないでしょうね。
「政権が代わり、エネルギー政策が変わって原子力発電所依存度がゼロになるような流れになったとき、関西電力はどう対応するのか」
これは、誰にも予想できません。
原子力発電がなくても、関西電力は、火力発電と水力発電で需要を賄えます。
ただ、原子力発電すべての廃炉が決まれば、原子力発電の資産価値は0、廃炉コストは無限大で、確実に、債務超過=破綻となります。
「関西電力はこのままではつぶれてしまうと危惧しています。将来リスクについての説明が不十分だと考えています」との「まとめ」がありました。
ただ、将来リスクを説明すると、いずれ関西電力がつぶれることがわかってしまいます。
現経営陣が、在任中に「つぶれ」なければいいと言うのが本音でしょう。