本文へ移動

2012年バックナンバー

使用済み燃料の保管

 福井県の西川知事は、平成24年4月14日、記者会見で、原子力発電の使用済み燃料について「今後、福井県だけでは対応するわけにはいかないものもある。『電力を消費してきた地域』にも、痛みを分かち合う分担をお願いしないといけないと思う」と述べ、福井県内だけでなく関西に中間貯蔵施設を造る必要性があると述べました。

 使用済み燃料は現在、原子力発電の一時貯蔵プールに置かれています。
 関西電力の場合、原子力発電11基のプールの燃料貯蔵容量は9703体(4420トン)で、既に70%割程度が使用中、今後も関西電力だけで処理すると約7年でプールはいっぱいになる計算だそうです。

 滋賀県知事、京都府知事、大阪府知事が、原子力発電所「再稼働」にあたっての「地元」として扱うように述べたことに対する「恫喝」ともとれます。
 つまり、言葉は悪いですが、「電力を消費してきた地域」は、「危険を冒して」「電力を供給してきた地域」に「何を言う」ともとりうる言葉です。

 ちなみに、福井県の西川知事は自治省の官僚出身です。
 大阪府の松井知事は大阪府議出身、京都府の山田知事は自治省の官僚出身、兵庫県の井戸知事は自治省の官僚出身、奈良県の荒井知事は運輸省の官僚出身、和歌山県の仁坂知事は通産省の官僚出身、滋賀県の嘉田知事は大学教授出身です。

 福井県、京都府、兵庫県、奈良県、和歌山県の知事は、官僚出身の、いわば「地方自治のプロ」ですから、事柄はわきまえています。ただ、選挙に勝利しなければなりませんから、自県の利益を最大限主張します。
 大阪府と滋賀県の知事は「アマ」のレベルです。ただ、「アマ」が「プロ」より優秀であることは往々にしてあります。

 福井県の西川知事の発言に、京都府の山田知事が真っ先に反応しました。
 山田知事は、今井資源エネルギー庁次長に、「消費地による使用済み核燃料の保管はあるのか?」と問いただし、今井次長は「そのような判断は一切していない」と答えたとのことで、国の考えではなく、西川知事独自の考えにすぎないと発表しました。

 和歌山県の仁坂吉事は、「中間貯蔵施設だけ別に造るのはおかしいと思う」「(使用済み燃料の)輸送コストや輸送の安全確保などの観点から言うと、原子力発電の隣に造るのが常識なのではないか」と否定的な見解を示しました。
 和歌山県は、自県の電力使用量が、自県内の火力発電所からの発電量を下回わり、さらに、徳島県から融通してもらっている電気の大阪への中継地点にもなっているので、自県は、福井県の原子力発電所の世話になどなっておらず、福井県知事のいう「電力を消費してきた地域」に該当しないということが、仁坂知事の強気の発言の裏付けとなっているのでしょう。
 また、福井県の原子力発電に「地元」として扱えなどとはいっていません。他府県と異なり、150kmは離れていますから。
 なんで、せっかく、一番安全なところに位置することとなった県が、「中間貯蔵施設」を押しつけられなければならないという「素朴な感情」もあります。

 大阪府と京都府は、結構火力発電所がありますが、自府県での消費量が多く、兵庫県は、近畿最大の火力水力発電量でしょうが、自県の消費量が多すぎます。滋賀県と奈良県には海がなく火力発電所は立地不能で、いずれも、黒部川などの水力のほか、福井県の原子力に依存しています。

 和歌山県知事以外の知事は、ある意味「弱み」がありますから、和歌山県知事のように「正論」はいいにくいですね。

 福井県の西川知事の発言は、大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、滋賀県、とりわけ、「地元」としての扱いを求める大阪府、京都府、滋賀県への牽制です。
 そこまでして、原子力発電を再稼働しなければならないというのは「哀れ」なことです。

 ただ、原子力発電の再稼働さえしなければ、福井県にある原子力発電の一時貯蔵プールに保管すれば十分ではないかという「つっこみ」が入りそうですね。
TOPへ戻る