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2012年バックナンバー

消費税増税と成長率

 消費税増税で、「国内総生産(GDP)の成長率が名目3%、実質2%になる」ことを条件に消費税増税という議員がいます。

 「条件」には、大きく分けて「停止条件」と「解除条件」があります。
 区別がわかるでしょうか。

 「停止条件」とは、ある事象が、成就した時に効力が発生する「条件」です。
 ある事象が成就するまで「停止」されているということですね。

 「解除条件」とは、ある事象が、解除された時に効力を失う「条件」です。
 ある事象が成就すると、「解除」されるということですね。

 これとは別に「不能条件」という概念があります。
 本来条件は、事象が成就するか成就しないか不確定です。「不能条件」は、事象の成就・府成就が確定している、特殊な条件です。

 民法133条に以下のとおり定められています。
「1項 不能の停止条件を付した法律行為は、無効とする
 2項 不能の解除条件を付した法律行為は、無条件とする」

 具体的に、たとえば「西から昇った太陽が東に沈めば」「○○する」という条件は、「不能」の「停止条件」を付したことになりますから「無効」です。
 逆に「西から昇った太陽が東に沈めば」「○○しない」という条件は、「不能」の「解除条件」を付したことになりますから「無条件」です。
 「これでいいのだ」ということにはなりません。

 「国内総生産(GDP)の成長率が名目3%、実質2%になる」という条件はどうでしょう。
 下記のグラフをご覧下さい。

 日本が「国内総生産(GDP)の成長率が名目3%、実質2%」を上回ったのは、平成12年から一度もないということがわかりますね。その前を見ても、バブル崩壊期から一度もありません。

 現在の経済状況からすると、「国内総生産(GDP)の成長率が名目3%、実質2%になる」という条件は「実質的」に「不能条件」です。

 「国内総生産(GDP)の成長率が名目3%、実質2%になる」というのは政府の目標です。
 しかし、ワールドカップブラジル大会で日本代表が優勝するのに近いくらい確率は低いでしょう。もちろん、日本代表は、ワールドカップブラジル大会で優勝するのが目標です。
 目標とは、しょせん、そういうものです。

 つまり、実質的に「消費税増税の定めは無効」ということになります。

 基本的に、低成長下では「消費税を上げない」というのが原則です。
 ただ、フランスは、低成長下で付加価値税(消費税)の引上げを決めています。

 「消費税を不況下に上げる」と「経済に悪影響を与える」というのは、真実です。
 理由は消費控えで、いっそう景気が悪くなり、税収が思ったほど上がらないということです。

 ただ、これだけ財政危機になって「消費税を上げない」というのも「経済に悪影響を与える」ことがあります。
 日本は、消費税率が低いことから、税額を上げる余地があるということもあり、日本国債は信任をえています。
 「日本は消費増税をあきらめた」ということになると、財政悪化を見越した国債売りが進み、金利上昇(「国債の価値が下がる」=「金利上昇」です)を通じて景気を下押ししかねないためです。

 どちらが、大きな悪影響を及ぼすかということは実験するわけにはいきません。

 私自身は、消費税を上げるという選択肢が正しいと思います。
 感情論や目先の損得ではなく、冷静に考えれば、消費税増税は不可避でしょう。

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