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2012年バックナンバー

国債金利が上昇した場合と銀行の損失

平成24年2月23日、白川日銀総裁は、金利が全期間で一律に1%上昇した場合、金融機関が保有する国債など債券に大手銀行で3.5兆円、中小の銀行で2.8兆円の損失が生じるとの試算を明らかにしました。

 質問者が、「与党」民主党の「日銀OB」の議員ですから、「なれ合い」の質問かと思われます。

 国債といっても償還期間は様々です。現在償還期限の来ていない国債をみてみましょう。

 6カ月・1年の償還期間の国債が「短期国債」と呼ばれます。割引債です。
 2年・3年・5年・6年の償還期間の国債が「中期国債」と呼ばれます。いずれも利付債です。
 10年の償還期間の国債が「長期国債」と呼ばれます。利付債です。
 15年・20年・30年・40年の償還期間の国債が「超長期国債」と呼ばれます。いずれも利付債です。

 大手銀行で3.5兆円、中小の銀行で2.8兆円というのは、全国債の償還期限までの利息トータルです。
 単年度ということはありません。

 民間の資金需要が低迷する中で、金融機関が国債など債券保有を拡大させていることは、周知のことです。

 また、国債など債券は、金利が上昇した場合、価値が下がります。
 100万円で購入し、毎年2%の利息の債券を保有していた場合、金利が毎年4%になったとすれば、その債券を償還期日前に売却しようとしても、新しい債券が利率が倍なのですから、利率が半分の債券を、わざわざ100万円でする人はいません。
 もちろん、償還期日直前なら、売却する必要は全くなく、償還期日を待てば満額返済されますから「損」をすることはありませんが、償還期日が待てず売却を迫られる場合損失が生じるということです。

 逆に、金利下落があった場合、例えば、100万円で購入し、毎年2%の利息の債券を保有していた場合、金利が毎年1%下降したとすれば、利子が余分にもらえますから、100万円以上で売却できます。

 日本国債の場合、近い将来、デフォルトということは通常考えられません。

 もちろん、状況にもよりますが、一般的に金利が上がったとしても、短期国債や、中長期国債であっても、償還期限が1年や2年くらいに迫った国債なら、無理して売却する必要はなく、償還日を待てばいいのですが、そうでなければ、売却損、評価損を計上する必要があるでしょう。

 少し前のエントリーで「国債の急落の可能性」の新聞報道について記載しました。

 三菱東京UFJ銀行が日本国債の価格急落に備えた「危機管理計画」を初めて作ったことがわかりました。「数年後」に、国債の価格が急落して金利が数%にはね上がる可能性があり、損を少なくするために短期間に数兆円の国債を売らざるを得なくなることもあるとしています。

 大手銀行は、償還期限が遠い国債は売却して、短期国債や、中長期国債であっても、償還期限が迫った国債を多く保有し、中小銀行が、危険性が高い償還期限まで遠い国債を多く保有しているといわれています。

 日本国債で損をして経営が危うくなった銀行なら、国も救済してくれると考えているのかも知れません。

 ただ、日本国債で損をするような事態になれば、国に銀行を救済する余裕があるのでしょうか
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