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2012年バックナンバー

自営業者と年金

平成24年2月6日の国会の委員会で、民主党の提案する年金制度についての質疑応答をしていたそうです。テレビのニュース番組で質疑応答が放映されていました。

 民主党の提案する年金制度は、公的年金制度を一元化し、全員が加入する「新しい年金」を創設することとする。平成25年の国会に法案提出される予定です。
(1)所得比例年金=社会保険方式
   職種を問わず、所得が同じなら同じ保険料(15%程度)で、同じ給付を全員が受ける
(2)最低保障年金=税財源
   満額は7万円。生涯平均年収ベースで一定の収入水準までは満額を給付し、それを超えた点より徐々に減額して、ある収入水準でゼロとする
   全受給者が(1)と(2)の合算でおおむね7万円以上を受給できる


 「最低保障年金」=「税財源」という点については、民主党が平成23年3月、最低保障年金を実施した場合、消費税の10%への引き上げとは別に、平成87年(2075年)度の時点で最大7.1%の消費増税が必要とした試算をまとめながら、「握りつぶした」として野党から追及されていることは皆さんご存知でしょう。
 さあ、どうなりますか「楽しみ」ですね。


 もう一つの「職種を問わず、所得が同じなら同じ保険料(15%程度)で同じ給付を全員が受ける」という点について、自営業者は、全額自己負担を求めるということです。

 現在は、自営業者は国民年金に加入し、毎月約1万5000円、年額約18万円を納付しています。

 野党の質問者の質問は「年収400万円の自営業者は年間60万円納付することになる」「月で割れば毎月5万円となる」「払える金額か」とのものでした。
 厚生労働大臣の答弁は「年金額が増える」「社会保険控除となり税額が下がる」とのものでした。
野党の質問者は「全く自営業者の実情がわかっていない」でした。

 野党の質問者が正しいと思われます。

 現在の制度でも、自営業者は国民年金基金に加入できます。
 私は、日本弁護士連合会の国民年金基金に加入しています。
 60歳まで掛け続けると453万円を納付することにより、65歳からの受給は年間63万7100円、75歳からの受給は年間38万2200円に減額されますが、死亡するまでもらえることになっています。
 国民年金基金のタイプは選べますが、私は、私が死亡すれば、「掛金」-「既受領年金」が全額返ってくるタイプ(年金給付はその分安くなります)を選んでいます。

 余裕のある人は、国民年金基金に加入して受給額を増加させればよいのです。
 余裕がなければ、国民年金基金に加入せず、年金は国民年金だけにすればいいでしょう。

 「年収400万円の自営業者は年間60万円の年金負担を強制する」というのは「おかしい」ですよね。
 そんな余裕は通常ありません。
 また、自営業者は、全額自己負担、つまり、勤務先や国家の補助なしですから、「掛け損」の可能性が高くなります。というか、今の若い人なら、「掛け損」間違いないと思います。

 また、自営業者には定年がありませんから、サラリーマンのように「強制的にやめさせられる」ことはなく、健康でありさえすれば、働き続けられます。


 なお、国民年金は、自営業者のみが加入しているわけではありません。
 パートやアルバイトの非正規労働者、学生(免除制度があります)、無職の若者等の割合が増えてきています。国民年金未加入者や年金未納者が多いといわれています。

 政府の「本音」は、国民年金未加入者や年金未納者で「あいた穴」を、ちゃんと国民年金を支払っている自営業者に「埋めさせよう」という意図でしょう。

 なお、医師や弁護士で、自営という形をとっている人にとっては「大変」です。

 上限は、厚生年金の保険料算定基準となる標準報酬月額の上限(62万円)程度になるのでしょうが、標準報酬月額の上限も、月額121万円まで上げようという案があるくらいです。
 所得1692万円まで15%ということにでもなれば、前年度の所得が1692万円をこえる自営業者は、国民年金の掛金が、現在の年額18万円が、年額253万円になってしまいます。

 本当に、制度改革がなされたら、医師は、たとえ医師一人でも医療法人を、弁護士は、たとえ弁護士一人でも、弁護士法人を設立して給与所得をとるようになるでしょう。
 それでも「ごつい」ですね。

 ちなみに、個人的にいえば、私(昭和30年8月生)は、あと、国民年金を納付するのは3年半(満60歳になる月の前月まで納付義務があります)、年金の掛金については「逃切り確定」ですが、年金受給額は、「損」をする世代になっています。
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