2012年バックナンバー
自営業者と年金
民主党の提案する年金制度は、公的年金制度を一元化し、全員が加入する「新しい年金」を創設することとする。平成25年の国会に法案提出される予定です。
(1)所得比例年金=社会保険方式
職種を問わず、所得が同じなら同じ保険料(15%程度)で、同じ給付を全員が受ける
(2)最低保障年金=税財源
満額は7万円。生涯平均年収ベースで一定の収入水準までは満額を給付し、それを超えた点より徐々に減額して、ある収入水準でゼロとする
全受給者が(1)と(2)の合算でおおむね7万円以上を受給できる
「最低保障年金」=「税財源」という点については、民主党が平成23年3月、最低保障年金を実施した場合、消費税の10%への引き上げとは別に、平成87年(2075年)度の時点で最大7.1%の消費増税が必要とした試算をまとめながら、「握りつぶした」として野党から追及されていることは皆さんご存知でしょう。
さあ、どうなりますか「楽しみ」ですね。
もう一つの「職種を問わず、所得が同じなら同じ保険料(15%程度)で同じ給付を全員が受ける」という点について、自営業者は、全額自己負担を求めるということです。
現在は、自営業者は国民年金に加入し、毎月約1万5000円、年額約18万円を納付しています。
野党の質問者の質問は「年収400万円の自営業者は年間60万円納付することになる」「月で割れば毎月5万円となる」「払える金額か」とのものでした。
厚生労働大臣の答弁は「年金額が増える」「社会保険控除となり税額が下がる」とのものでした。
野党の質問者は「全く自営業者の実情がわかっていない」でした。
野党の質問者が正しいと思われます。
現在の制度でも、自営業者は国民年金基金に加入できます。
私は、日本弁護士連合会の国民年金基金に加入しています。
60歳まで掛け続けると453万円を納付することにより、65歳からの受給は年間63万7100円、75歳からの受給は年間38万2200円に減額されますが、死亡するまでもらえることになっています。
国民年金基金のタイプは選べますが、私は、私が死亡すれば、「掛金」-「既受領年金」が全額返ってくるタイプ(年金給付はその分安くなります)を選んでいます。
余裕のある人は、国民年金基金に加入して受給額を増加させればよいのです。
余裕がなければ、国民年金基金に加入せず、年金は国民年金だけにすればいいでしょう。
「年収400万円の自営業者は年間60万円の年金負担を強制する」というのは「おかしい」ですよね。
そんな余裕は通常ありません。
また、自営業者は、全額自己負担、つまり、勤務先や国家の補助なしですから、「掛け損」の可能性が高くなります。というか、今の若い人なら、「掛け損」間違いないと思います。
また、自営業者には定年がありませんから、サラリーマンのように「強制的にやめさせられる」ことはなく、健康でありさえすれば、働き続けられます。
なお、国民年金は、自営業者のみが加入しているわけではありません。
パートやアルバイトの非正規労働者、学生(免除制度があります)、無職の若者等の割合が増えてきています。国民年金未加入者や年金未納者が多いといわれています。
政府の「本音」は、国民年金未加入者や年金未納者で「あいた穴」を、ちゃんと国民年金を支払っている自営業者に「埋めさせよう」という意図でしょう。
なお、医師や弁護士で、自営という形をとっている人にとっては「大変」です。
上限は、厚生年金の保険料算定基準となる標準報酬月額の上限(62万円)程度になるのでしょうが、標準報酬月額の上限も、月額121万円まで上げようという案があるくらいです。
所得1692万円まで15%ということにでもなれば、前年度の所得が1692万円をこえる自営業者は、国民年金の掛金が、現在の年額18万円が、年額253万円になってしまいます。
本当に、制度改革がなされたら、医師は、たとえ医師一人でも医療法人を、弁護士は、たとえ弁護士一人でも、弁護士法人を設立して給与所得をとるようになるでしょう。
それでも「ごつい」ですね。