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2012年バックナンバー

福知山脱線事故

 平成23年1月19日に、107人が死亡し、562人が負傷した平成16年4月のJR宝塚線(福知山線)脱線事故で、業務上過失致死傷罪に問われたJR西日本前社長の山崎正夫前社長に対し、神戸地方裁判所は、無罪(求刑禁錮3年)を言渡しました。

 また、平成23年1月25日までに、検察当局は控訴を断念しました。

 最大の争点は、事故現場を急カーブにする変更工事の完成時に、安全対策を統括する鉄道本部長だった前社長(つまり、社長としての犯罪で起訴されたのではなく、鉄道本部長としての犯罪で起訴されたことになります)が、危険性を認識し、事故を予測できたかどうかでしたが、山崎前社長に現場カーブの危険情報が伝わっていなかったなどと認定し、「前社長は事故を予測できなかった」と判断しましたから、当然無罪です。

 適切な判決だと思います。
 つまり「冤罪」でした。

 遺族の方が「あれだけの大事故で、誰も罰せられないのはおかしい」との趣旨の発言をされていましたが、本来は、業務上過失罪で起訴されるべきであった運転手が、事故で死亡したため、起訴できなかったということですから、問題はありません。

 事故をめぐっては、山崎前社長の上司だった井手正敬元会長ら3人の歴代社長が検察審査会の議決を受け、同罪で強制起訴されています。
 当然、無罪の言渡しということになるでしょう。
 強制起訴でなければ、起訴の取消がなされ、一刻も早く「被告人」の立場から解放されるべきであると思います。

 日本の検察官は、一般に、「有罪の確信」がないと起訴しないといわれてきました。

 素朴な感情として、107人が死亡し、562人が負傷した大事故ということで「けしからん」という理解はできます。
 ただ、民事でJR西日本が損害賠償責任を負うのは、運転手の過失によることから明らかです。
 刑事は、被疑者が死亡して起訴はできません。

 トップが、監督責任をとって、職を辞するということはあるでしょうが、刑事上の処罰を受けなければならないということにはなりません。

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