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2012年バックナンバー

船長と機長

イタリアの豪華客船コスタ・コンコルディアの座礁事件は、業務上過失致死の疑いで逮捕されたスケッティーノ船長が、乗客より先に「逃走」したという点が「スポットライト」を浴びています。

 本来は、行方不明者の捜索やオイルもれの方が問題のような気がしますが・・

 なお、常識的に考えれば「船長は、乗客すべてを脱出させてから一番最後に下船すべき」ですね。

 イタリアの法律は知りません。
 日本でしたら、船長に過失があれば、業務上過失致死傷罪で処罰されます。

 「一番最後に下船すべき」という点はどうでしょう。

 船員法第12条に以下の規定があります。
「 船長は、自己の指揮する船舶に急迫した危険があるときは、人命の救助並びに船舶及び積荷の救助に必要な手段を尽くさなければならない」

 航空機の場合は、航空法で、類似の規定があります。
 「75条  機長は、航空機の航行中、その航空機に急迫した危難が生じた場合には、旅客の救助及び地上又は水上の人又は物件に対する危難の防止に必要な手段を尽くさなければならない」

 これは、共通ですね。

 船員法第11条には、以下の規定があります。
「 船長は、やむを得ない場合を除いて、自己に代わつて船舶を指揮すべき者にその職務を委任した後でなければ、荷物の船積及び旅客の乗込の時から荷物の陸揚及び旅客の上陸の時まで、自己の指揮する船舶を去つてはならない」

 船長が、事故などにより、負傷して指揮できなくなれば、同乗している1等航海士(チーフオフィサー)など、次順位の人に職務を委任するのは当然ですし、その場合、船舶を去るのはやむを得ませんね。
 もっとも、職務を委任せずに、勝手に船を下りるわけにはいかないようです。

 船員法126条には、以下のとおり定められていて罰則もあります。30万円以下の罰金ですが・・・
「 船長が次の各号のいずれかに該当する場合には、30万円以下の罰金に処する。
1.第8条、第10条、第11条、第14条の3第1項、第16条、第17条、第36条、第50条第2項、第55条、第66条の2又は第67条第2項(第88条の2の2第3項及び第88条の3第4項において準用する場合を含む。)の規定に違反したとき。」

 ちなみに、航空法には、船員法11条類似の規定は見あたりません。

 ただ、USエアウェイズ1549便が、ハドソン川に不時着という事故が発生したとき、機長は、乗員乗客全員が脱出したのを確認してから自身も脱出していますし、それが当然でしょうね。

 なお、日航機逆噴射事件のときの機長は、真っ先に逃亡しています。
 業務上過失致死傷にとわれるべきところですが、統合失調症のため不起訴となり、以後、実名ではなくてイニシャルで呼ばれるようになっています。
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