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2012年バックナンバー

中小企業金融円滑化法の再々延長

平成24年1月14日、帝国データバンクが、平成23年の倒産件数を発表しました。
 倒産件数は前年比2.5%減の1万1658件で2年連続マイナスだったそうです。

 倒産件数が減少したのは、中小企業金融円滑化法をはじめとする各種金融支援策によるものでしょう。
 また、東日本大震災に関しては、被災地向けの特例措置があり、倒産が防がれています。

 資金繰りに苦しむ中小企業を「救う」ため、借入金の返済を猶予する「中小企業金融円滑化法」(いわゆる「モラトリアム法」)が、平成21年11月成立し、同年12月に施行されました。
 平成23年3月31日までの時限立法でした。

 平成22年12月に、同法の期限を1年間延長するとともに、中小企業金融円滑化法に基づく開示・報告に係る事務負担の軽減や金融機関のコンサルティング機能がこれまで以上に発揮されるよう促すため、検査・監督において対応を行う旨を決定・公表されたうえ、法案が成立しました。
 平成24年3月31日まで1年間延長されたことになります。

 平成23年12月、金融庁は、中小企業者等の事業再生等に向けた支援への移行を円滑に進めていく「ソフトランディング」を図るため、中小企業金融円滑化法を今回に限り1年間「再」延長するとともに、平成24年度を同法の最終年度として、企業の事業再生や新規融資の促進等の企業に対する支援措置を講じていく旨を決定・公表しました。
 法案は可決成立される見込みです。

 法案成立当初から、「疑問」だらけの法律でした。
 また、2度にわたる延長は「最後のお願い」「最後のお願い」と繰返しているようで見苦しいですね。


 法律制定当初からいわれていたことですが、本来なら、倒産していたはずの企業が倒産せずに生残るということは好ましいとは考えられません。
 倒産しかけている企業を生き延びさせることによって、雇用を守るという考えもわからないではありません。
 雇用調整法で救える企業は、雇用調整法で救うべきだったでしょう。

 日本は、自由主義、資本主義の国家です。

 倒産していたはずの企業が、存続したまま、採算度外視の財やサービスの供給を続けることにより、健全な企業が、財やサービスの供給により、本来得ることが出来た収益を奪うということになります。

 これより大きい問題は、金融庁が「モラトリアム法を活用する企業を当面正常債権として取り扱う」というお墨付きを与えたことも問題です。
融資先が「要注意先」や「破綻懸念先」になると、金融機関は、引当金として、貸金の50%、75%を積増す必要があります。
 これは、中小の金融機関にとっては大きな負担になります。
 しかし、「要注意先」や「破綻懸念先」ではなくなり、引当金を積まなくなったとしても、「要注意先」や「破綻懸念先」に変わりありません。
 というより、中小企業金融円滑化法の期限が切れたら、貸付先は破綻するわ、引当金は積んでいないわで、大変なこととなる中小の金融機関があるはずです。
金融機関が破綻しなくても、他の「まし」な貸付先に「貸剥し」にいくという危険があります。
 借りていた金額の元本と金利の返済が始まれば、借手企業の倒産が急増というのは、いわば当然の話で、大した問題ではありません。

 ということで、中小企業金融円滑化法が「ずるずる」延長されているというのが正しいようです。

 何か、麻薬中毒とダブって見えます。
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