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2011年バックナンバー

機会費用

経済学で、ある行動を選択したために諦めざるを得なかった別の行動から得られたはずの利益のことを「機会費用」といいます。ある経済的行為を行うことにより放棄しなければいけない利益のことで目には見えません。

 サミュエルソンの『経済学』(大学時代、原文を読みかけましたが、挫折して都留重人の翻訳の方を読みました)に弁護士とタイピストの例が出ています。

 弁護士がタイプを打つ速度・正確性が、タイピストより早く、正確であれば、タイピストを雇うのは損でしょうか。
 弁護士とタイピストでは、時間あたりに稼ぐ収入に大きな違いがあります。
 弁護士が、タイピストのする仕事を取り上げ、タイプを打った時間分だけ、弁護士の本来できたであろう仕事ができなくなったのですから、弁護士の時給とタイピストの時給の差額分損をしたことになります。
 弁護士としては、タイプを自分で打つのではなく、タイピストを雇う方が「お得」ということになります。


 その他の例としては、電車で行けば安くつきますが、タクシー利用により時間節約をすれば、有効な時間利用ができ、交通費の差など吹き飛びますし、普通車で行くより、グリーン車で余裕を持って原稿をワープロを打って有効な時間の利用をはかれば、交通費の差など吹き飛びます。
 弁護士が、タクシーに乗ったり、グリーン車に乗ることは、経済学的に考えて、それなりの合理性があることになります。


 話がかわって、コンピュータ製作、プログラム作成が好きな弁護士がいたとします。
 コンピュータは「できあい」を買い、ホームページ作成などを業者に依頼すれば、コンピュータ制作やプログラミングに要する時間を、本来の弁護士業務に回せますから、「できあい」のコンピュータを購入したり、プログラミングしてもらうのが間違いなく得です。業者に「ぼられ」なければの話です。

 しかし、この弁護士にとって、コンピュータ製作やプログラミングが趣味ならどうでしょう。
 「機会費用」などとつまらないことを言う必要は全くありません。
 それで、日頃のストレスが発散されるなら、安いものです。
 ストレス発散のため、バーやラウンジに行ったり、ゴルフに行ったり、海外旅行したりすることを思えば、なんと安上がりなのでしょう。


 ところで、弁護士大増員時代となり、なりたての弁護士の月給がベテラン事務員より安くなるということもあり得るそうですから、いっそのこと、職にあぶれた人は、独立開業より、法律事務所事務員になった方が「お得」なのかも知れません。安定した収入を得られて、弁護士会費の支払は不要、勉強にもなるでしょう。

 「何のために司法試験に合格したのか?」
  ごもっとも。身もふたもありませんね。

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