2011年バックナンバー
大連立政権
第1党、第2党が、他の小政党と連立しても過半数に達せず、政権を組織できない場合、第1党、第2党が連立して悠々過半数を確保し、他の小政党を下野させた政権です。
ドイツの大連立政権が、2008年8月に、発足後1000日を迎えました。
ドイツには、保守系姉妹党の「キリスト教民主同盟(CDU)」「キリスト教社会同盟(CSU)」、リベラル系の「自由民主党(F.D.P.)」、中道左派の「社会民主党(SPD)」、環境保護を掲げる「緑の党・同盟90」、他に、旧東ドイツの流れをくむ「民主社会党(PDS)」などがあります。
私がドイツ留学した1982年に、F.D.Pが、SPDと決別し、CDU/CSUと連立を組むことになってから、CDU/CSU+F.D.P.によるCDU党首であるコール首相を首班とする連立政権が発足し、足かけ17年間続きましたが、1998総選挙で、SPD+緑の党が勝利したため、SPD党首であるシュレーダー首相を首班とするSPD+緑の党の連立政権が発足し、2005年まで続きました。
2005年の総選挙で、CDU/CSU+F.D.P.も、SPD+緑の党も過半数が取れなかったので(PDSなど左翼系の党が多くの議席を得たためです)、第1党のCDU/CSUと第2党のSPDが組み、CDUのメルケル首相を首班とする大連立政権を発足させました。
ドイツは連立政権は当たり前で、単独政権はめずらしいですし、過去にも大連立政権もあります。
なお、ドイツは2院政ですが、連邦議会(Bundstag=下院)は、小選挙区制+比例代表の直接選挙、連邦参議院(Bundesrat=上院)は、独立性の強い州政府により選出されます。
連邦参議院の権限も強いので「ねじれ現象」により、「ねじれ現象」が生じたときは、国政レベルで妥協しなければならないということが結構ありました。
ちなみに、連邦参議院の権限は、大連立政権のもと、縮小されつつあります。
大連立政権が発足すると、CDUとSPDの妥協で、すべて政策が運営されることになります。
発足後1000日の評価ですが、選挙目当てではなく、常識的な政権運用がされているという印象です。
選挙目立てに、選挙民の歓心を「ことさら」かう必要がないため、「国民の痛みをともなう政策」も「粛々と」実行されていきます。絶対多数を得ている大連立であれば、連立を組む第1党、第2党とも、増税などの結果、次の選挙で大敗するという心配が低いですから。
付加価値税(消費税率)率の16%から19%への引上げ(食料品とは比較的低廉。日本の5%より高いですが・・)や、所得税の最高限界税率の42%から45%への引上げ、年金受給開始年齢は、2010年以降、65歳から67歳に引上げられることになっています。さらに、消費税は20%を超えて引き上げられる予定です。F.D.P.、緑の党、PDSなどは反対しますが、政権担当能力がないのは誰でもっ知っています。
増税により増加した税金は、財政再建や雇用保険料引下げに充てられ、一定の成果をあげています。
日本においては、参議院の力が強すぎるため、結局争点になる政策は実施不可能、衆参両議院の「ねじれ」による大連立政権ができる可能性はあります。
大連立政権ができれば、間違いなく、「国民の痛みをてもなう政策」も「粛々と」実行されます。
さあ、それが好ましいのでしょうか。