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2011年バックナンバー

株式為替と美人投票

株式相場や為替相場が「美人コンテスト」にたとえられることがあります。

 ケインズは株式相場をイギリスで実施されていた「新聞紙上美人コンテスト」にたとえました。これは当時、ロンドンのある大衆紙が、定期的に新聞紙上に100人の美女の顔写真を掲載して、不特定多数の読者に6名連記で投票させ、上位となった美人を当てた読者に賞金をプレゼントするというものです。

 「投資は、投票者が100枚の写真の中から最も美しい6人を選び、その選択が投票全体の平均的な好みに最も近かった者に賞品が与えられるという新聞投票に似ている。」「各投票者は、自分が美しいと思う人を選ぶのではなく、他の投票者の好みに最も合う人を選択しなくてはいけない」「しかも、投票者全員が問題を同じ観点から眺めている」と述べたのです。

 この美人投票に勝つためには、読者個人の美的基準は無関係です。この場合の、最も優れた投票戦略は、むしろ他の読者たちが美人と思う顔のほうを選ばなければなりません。

 株式投資の最適な投票戦略は、自分が美人と思う人たちを選ぶのではなく、何が平均的なコンセンサスになるかということに関する、不特定多数の参加者の、平均的な見方を予測することにあるということになります。
株価形成が、ある意味で「砂上の楼閣」であるという考え方を端的に示していますね。

 客観的にここの会社の株価の上下を左右する要因としては、株価チャート、会社の資産価値、会社の成長性、会社の利益配当などがあり、また、株式相場全体を左右する要因としては、株式市場の売買の需給関係、景気や金融の動向、政治・社会情勢、世界情勢などがあります。

 本来は、上記の情報に基づいて、自分が上昇するという株式を購入し、自分が下落すると思う株式を売却すればいいわけです。
 しかし、自分やごく少数の人間が発見した要素にとらわれて投資するのは賢くありません。
 「美人投票」ですから、ある程度「無知」な投資家は、ほとんど大多数を占めるでしょうし、マスコミ報道や、無責任な経済評論家の話を鵜呑みにして購入するのは、大多数のある程度「無知」な投資家です。
 ですから、正確な株価分析に従うのではなく、大多数のある程度「無知」な投資家が購入しようとする株式を購入するのが「正解」ということになります。
 市場参加者のきわめて「主観的」な判断の集合によって相場がつくられていくことになります。

 少なくとも、たとえ客観的に正しいとしても、市場で他人と違う自分の好みを貫けば、損をすることになります。
 投資で勝ち続けるためには「付和雷同」という、およそ一般社会通念で好ましく思われていない要素が不可欠となります。

 為替についても同じです。

 通常為替の変動要因は、当該通貨の購買力平価、当該通貨の金利差、当該通貨の流通している国の国際収支(経常収支を重視)で決まるといわれています。
 為替レート決定の要因は非常に単純なものですが、各国や、世界中の大口投資家(動かす資金量・発言力が大)の思惑が絡んで理論どおりの値動きにはなりません。

 さらに、株式相場と同じように、ある程度「無知」な投資家は、ほとんど大多数を占めるでしょうし、マスコミ報道や、無責任な経済評論家の話を鵜呑みにして購入するのは、大多数のある程度「無知」な投資家です。
 ですから、正確な為替分析に従うのではなく、大多数のある程度「無知」な投資家が購入しようとする通貨を購入し、そうでない通貨を売却するのが「正解」ということになります。

そういえば、「ミス・コンテスト」「ミスター・コンテスト」なんていい加減なものですしね。
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