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2011年バックナンバー

資産効果と逆資産効果

「資産効果」「逆資産効果」という言葉をご存じでしょうか。

「 日本銀行が平成20年6月16日に発表した平成19年度の資金循環統計(速報)によると、家計で保有する金融資産残高は前年度末に比べて3.6%%減少して1489兆6147億円となった。
  1500兆円を割り込んだのは3年ぶりのこと。株価の下落で株式評価額が目減りしたことが響いた」という新聞記事がありました。

速報値ではなく、若干古いですが 「1世帯あたり種類別金融資産保有額」 が減少しています。


 「資産効果」とは、株式や土地などの資産価格の上昇によって、家計などの保有する資産の価値が上昇した結果、自らの消費を拡大させる効果のことをいいます。
 一般的には、現実に実現した直接的な売買益(キャピタルゲイン)はもちろんですが、保有資産の含み益が増加することにより、消費者心理を刺激するマインド効果も含まれます。

 「逆資産効果」とは、株式や土地などの資産価格の下落によって、家計などが保有する資産の価値が下落したとき、家計などが自分は貧しくなったと考え、消費や投資を控えることをいいます。
 一般的には、現実に実現した直接的な売買損(キャピタルロス)はもちろんですが、保有資産の含み損が増加することで消費者心理を減少するマインド効果も含まれます。

 平成2年ころ以降、わが国において株式や土地の価格が大幅に下落し、景気が長期低迷を続けた理由のひとつとして「逆資産効果」があげられています。
 なぜ逆資産効果が生じるのでしょうか。

 以下、あくまでも抽象論です。
 家計は、いまの所得の中からいまどれだけを消費し、どれだけを貯蓄に回すか、そして同時に、貯蓄を各資産にどれだけの割合で配分するかを決定します。
 家計は、現在の保有資産の総額と将来稼ぎ出すと期待される所得総額を現時点に割引いた現在価値との和(資産の総額)を上限として、現在から将来にかけての消費がいくら可能か逆算します。
 すなわち、資産の総額が大きくなるほど消費は増加し、逆に、資産総額が小さくなるほど消費は減少します。
 保有している資産の総額が値下がりによって減少すると、富の総額が減少し、消費も減退することになります。

 もうひとつ、物価の下落(デフレ)が原因で、固定された債務の価値を、相対的に上昇せ、支出を引き下げるという効果も指摘されています。
 ローンを組んで買った不動産の時価評価額は下落しているのに、多額の債務はそのまま残っており、低下した金利で評価すれば、大きな負債となります。
 この大きな評価損を埋め合わせるために生活費を切り詰めてローン返済に努力する、つれて消費は減退するという事例は多く見られます。
 これも「逆資産効果」の一種と考えられています


 とはいうものの人間というのは不思議なものですね。

 合理的に考えれば、自分の居住用の土地など、価格が上昇しようが下落しようが、売却するものではないと考えるのが普通ですから、 価格が上がったからといって売るものではないですし、下がったからといって、どうせ売らないのですから、悲観するほどのことはありません。
 固定資産税、都市計画税を考えれば、下がった方がかえっていいかも知れません。

 しかし、自用の不動産が上がれば「気が大きくなり」、その結果、消費が増加するのが現実です。
 逆に、自用の不動産が下がれば「弱気になり」、その結果、節約をして、消費が減少するのが現実です。

 株式なども、売却して利益を確定させなければ、得をしたことにはならないのですが、価格があがっただけで(抽象的な含み益をえただけで)、得をしたような気分になり、金遣いが荒くなってしまいます。

土地の価格は、一部価格が上昇していますが、ほとんどは、横ばいか減少しています。 ということは、「逆資産効果」により、消費は冷え込むでしょう。
 また、賃金もほとんど上がりません。
 「消費」が冷え込むということは、さらなる「不景気」が続くことを意味します。

当分の間、好景気は望めません。
 いつになったら、好景気になるのでしょうか。

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