よもやま話 バックナンバー2/2
待ちぼうけ
「待ちぼうけ 待ちぼうけ ある日せっせと 野良かせぎ
そこへ兎が 飛んで出て ころり ころげた 木のねっこ」
「待ちぼうけ 待ちぼうけ しめたこれから 寝て待とか
待てば獲ものは 駈けて来る 兎ぶつかれ 木のねっこ」
という歌詞です。
中国の戦国時代末期に韓非子が出典で「守株待兎」(しゅしゅたいと)という四字熟語になっています。
「いういたずらに古い習慣やしきたりにとらわれて、融通がきかないたとえ。あるいは、偶然の幸運をあてにする愚かさのたとえ」です。
従前の弁護士は「守株待兎」の典型でした。
なにせ、平成12年まで、弁護士の広告は「名刺、事務用せん及び封筒、看板、挨拶状、事務所案内及び事務所報、同窓会等の団体の会報及び名簿、職業別電話帳、新聞、雑誌」に限られていましたし、広告事項も、弁護士名簿などの公刊物からわかるもの以外「「取り扱う業務」「事務所における執務時間」のみ、また、「経歴、著作、外国語能力」などは「同窓会等の団体の会報及び名簿」にしかのせられませんでした。
つまり、完全に「待ち」の経営です。
ロータリークラブ、ライオンズクラブ、青年工会議所などに加入して人脈を広げるという方法もありますし、そのようにして人脈づくりをしている人もいます。
ただ、本来の勤務日である平日を含め、結構な負担を伴います。
私を含め大抵の弁護士は、顧問先の仕事、顧問先からの紹介、従前の依頼者からなどの紹介という「口コミ」や、法律相談からの直接受任、破産管財人など裁判所から委託される仕事、国選の刑事事件(私は、紹介者のない刑事事件はやりません)などで収入を得ていました。
それでも、弁護士数が少なかったこともあり、通常に仕事をしさえすれば、上記ルートだけでも、事務所経営に全く問題がないというのが通常でした。
今でも、同じような方法で、経営をしている人も多いです。
私自身も「待ちの姿勢」で法律事務所を経営していました。
従前のルートだけでも、当面は問題はなかったのですが、将来の弁護士大増員時代を見越して、平成19年6月1日、ホームページを開設しました。
コンセプトは簡明です。自分が弁護士に依頼するとしたら、どういう弁護士に頼んだらいいだろうかという立場に立って考えて、ホームページをつくりました。
弁護士を捜している人の中には、弁護士が「医師のように専門分野がある」と考えている人がいます。また、取扱経験のない弁護士に依頼したくないというのは当然の話です。私が医師にかかる場合、経験のない医師により経験のある医師の治療を受けたいと思うのと同じです。
本ホームページは、自分が、裁判官(裁判官をしていると、優秀な弁護士のノウハウがわかります)、弁護士として仕事をしてきた知識をもとに「法律コラム」を書いています。
実体験であり、本からの丸写しではありませんから、どの事件で得た知識ということは言えます。守秘義務の関係で具体的氏名などはお教えはできませんが、一般論として、およそどのような事件だったかはお教えできます。
弁護士費用も明記しました。
何も書かないと「時価」のように思われますから。本来なら事件の難易などによって上下するのですが、ホームページを見て相談から事件依頼につながった依頼者の報酬は基本的に同一(法人の破産・民事再生など例外はあります)にしました。
取扱分野もかなり詳しく書いています(取扱わない「特殊事件」を、かなり具体的に列挙しています)。
弁護士の出身大学や経歴を知りたい人もいます。
私が重い病気に罹患したとすれば、担当主治医の出身大学や経歴を調べると思います。
私の場合、客観的な「経歴」をすべて記載しています。生年月日、出身大学、裁判官経験、留学経験などを含めて。いつ大学に入学し、いつ司法試験に合格しているかもわかります。
また、仕事だけの弁護士と思われるのも嫌です。
経歴だけ書くと「勉強と仕事だけの」「親しみや、おもしろみのない」弁護士と思われて、敬遠される可能性もあります。
私の人柄を知ってもらうために「雑記帳」を書いています。
ホームページを開設してみて、弁護士の情報を求めている人が多く、どの弁護士に頼んでいいかわからず迷っている人、弁護士に依頼することをためらっている人が多いことがよくわかりました。
これから、多くの弁護士が、ホームページを開設するなどして、弁護士自身の情報をできるだけ開示することが、ユーザーである、弁護士への依頼を考えている人へのために有益だと考えています。